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第2回公判(2010.11.26)

 

(7)ホームセンターのバイトでかごの置き方にこだわり続けた被告…解雇通告に「音が気になり集中できない」

山本被告

 中央大理工学部教授の高窪統(はじめ)さん=当時(45)=を刺殺したとして、殺人罪に問われた卒業生で元家庭用品販売店従業員、山本竜太被告(29)の裁判員裁判は、山本被告の勤務先だった電子機器会社の社員の供述調書の男性弁護人による朗読が続いている。

 調書によると、グアムでの社員旅行で、山本被告がバスの車内で突然大声を上げ始めたという。

弁護人「『どうして私だけ…』と叫び、一呼吸置いて『何で…するんだ』と続けました。さらに一呼吸置いて、『わ…じゃないか』と言っていました。大声でしたが、突然のことだったので、聞こえないところもありました。3回くらい、体を震わせながら叫んでいました」

「思い当たることといえば、旅行2日目の昼食後、山本が謝ってきた際、『いい、いい』とろくに返事しなかったことくらいです。この一件で早く解雇しなければ、との思いを強くしました。心の病を抱えていると思ったからです」

「研究員としてだけでなく、他の部署でも役に立たないだろうと考えました。上司(法廷では実名)に進言したところ、上司もグアム旅行の顛末(てんまつ)を知っていたため、今度は解雇が決まりました」

試用期間での解雇が決まった後も、勤務中の奇妙な行動は目立ったようだ。

弁護人「就業時間中、突然いなくなったことがありました。解雇の方針はすでに決まっており、仕事には影響がありませんでしたが、会社に損害を与えるような行動に出られたら困ると思い、研究員全員で社内を捜しました」

「山本は屋上に通じる階段で、携帯電話で電話をしていました。内容は聞き取れませんでしたが、母親と話し込んでいるようでした」

 その後、正式に解雇を言い渡された山本被告。物静かな印象を一変させ、契約の継続を求め声を荒らげたという。

弁護人「私と上司が山本を会議室に呼び出し、『仕事はできないし、グアムでも問題行動があった』と解雇理由を伝えたところ、『仕事を頑張りたい。ここで解雇されれば、もう再就職ができない』といい、『仕事ができないのは、周りの音が気になって集中できないから。理解してください』と話しました」

「私が『あなたは仕事以外で問題を抱えている。解決してからでないと仕事はできない』と話すと、『一日中、真剣に考え、仕事もしている』と反論してきました」

「実態とかけ離れた自己弁護にばからしくなり私が失笑すると、『上司がそんなだからダメなんだ』と、私の顔の一点を見据え、声を震わせた。やはり心の病なんだ、と思いました。これが山本の本性なのか、と」

 続いて、殺人容疑で逮捕されるまで勤務を続けていたホームセンターの同僚の供述調書が朗読される。

 山本被告は約2年間、週4日のペースで商品を売り場に陳列する「早朝品出し」の仕事を行っていた。まじめな勤務態度で問題を起こすようなこともなかったが、一点だけ強いこだわりをみせたという。

弁護人「買い物かごを置く位置には、妙なこだわりがありました。決まった場所に決まった向きで置くのですが、場合によっては邪魔になることもありました。はじめのうちは何度か注意しましたが、山本君は注意を聞かず、しばらくするとかごを元に戻していました。気が済まないんだな、とあきらめ、それからは何も言いませんでした」

「かごの位置をめぐり、お客さんとトラブルになったこともあったそうです。山本君に話を聞いたところ、『客にかごをどかせ、と怒られてしまった。でも、僕は悪くない』と話していました。実際のところは分かりませんが、そうしたこだわりが影響したのかもしれません」

 次に、事件の半年ほど前まで勤務していた製パン工場の工場長の供述調書が読み上げられる。

 平成19年9月から20年6月まで、午前のホームセンター勤務終了後、午後にパン工場で働いていた山本被告は、まじめな勤務態度で高く評価された。工場長から正社員登用の打診を受けたが、「やりたいことが見つかっていない」と応じなかったという。

弁護人「山本君を呼び出し、『いつか君も家庭を持つ。いつまでもアルバイトを続けているわけにはいかないだろう』と話したところ、『少し考えさせてください』と言われました。返事は1カ月から1カ月半たった20年4月か5月ごろで、『自分のやりたいことが見つかっていない。もう少しこのままでもいいですか』と断られました」

「その直後、20年5月下旬ごろ、『パソコン関係の仕事に就くことになったので、退職したい』と申し出がありました。辞めるまでの約1カ月間、ほかの従業員に『お世話になりました』と律義にあいさつして回っていました。変なことを口走るようなこともまったくなかったし、とても事件を起こしたことが信じられません」

 続いて、山本被告の幼いころからの知人である、中央大とは別の大学の准教授の供述調書朗読に移る。

 准教授は山本被告が高校生のとき、山本被告の自宅を訪問した際の記憶を調書で述べている。

弁護人「久しぶりに訪れた山本君の家の壁に、以前にはないこぶし大の穴が3、4カ所空いていました。山本君のお母さんに尋ねると、『竜太がやった。(子供のころから習っていた)バイオリンも壊してしまった。包丁を持ち出したこともある』と話していました」

 准教授は15年ごろ、山本被告の母親から「息子が大学のゼミ担当教授からパワハラ被害に遭っている」と相談を受けたという。

弁護人「その教授はゼミのパソコンがウイルス感染したときに『お前がウイルスを作った』などとほかのゼミ生に言うなど、人格攻撃をしたという話で、『竜太は理工学部に進んだことを悩んでいる』と話していました。私は大学の事務方に相談したほうがいいと、アドバイスしましたが、その後の話は聞いていません」

「平成16年の2月か3月ごろ、山本君本人から自宅に『卒業が決まった。お会いしたい』と連絡があり、2人で会いました。食品会社(法廷では実名)の埼玉の工場に入ると、うれしそうに話していました。本人の口からパワハラの話は出なかったので、『一からスタートしなさい』とだけ励ましました。訪問のことは中央大の関係者を含め、誰にも話をしていません」

 ここで女性弁護人に交代し、幼いころから続けてきたピアノの女性講師の供述調書が読み上げられる。講師は山本被告に対する母親の干渉に懸念を抱いていたという。

弁護人「大学を卒業し、就職したがすぐに辞めた、という話は竜太君の母親から聞いていました。具体的な時期は覚えていませんが、竜太君から今後の進路について相談したい、と電話かメールで連絡があり、家に来ました」

「具体的な内容は覚えていませんが、私は『母親の言いなりにならず、自分のやりたいことをやりなさい』『母親から離れて一人で生活したらどうか』とアドバイスしました。母親は厳しい人で、いつも竜ちゃん、竜ちゃんと溺愛(できあい)している様子だった。小中高で竜太君は友だちのいない様子だったが、母親が家に友だちを呼ばないようにして、シャットアウトしている様子でした」

 さらにピアノ講師の供述調書の朗読が続く。山本被告はまばたきをしながら、無表情で耳を傾けている。

⇒(8)母親は「同級生と遊ばせないようにした」…友だちもなく家庭は「張りつめた空気」