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第2回公判(2010.11.26)

 

(3)「神風特攻隊の心境」「ついにきた」…犯行直前に高揚する被告

山本被告

 中央大理工学部教授の高窪統(はじめ)さん=当時(45)=を刺殺したとして殺人罪に問われている卒業生で家庭用品販売店従業員、山本竜太被告(29)の供述調書の読み上げを男性検察官が続けている。恩師の殺害を決意した山本被告が、徐々に殺害の準備に取り掛かっているときの心境が生々しい言葉で再現されていく。

 裁判員らは厳しい表情を崩さないまま、手元のモニターに映し出される資料を見つめている。山本被告もうつむきながら、じっと検察官の読み上げる内容に耳を傾けている。

検察官「犯行を平成20年5月ぐらいに決意してから、計画を練る時間がほしいと考えるようになったため、掛け持ちしていた2つのアルバイトのうち、パン屋のバイトを6月末でやめたいと申し出ました」

「計画を練り始めた当初から、殺す場所は大学の校内と決めていました。だって、高窪教授の自宅は知らないし、確実に会えるのは大学だと考えていたからです」

 犯行を決意して約1カ月後の20年6月10日、山本被告は犯行の下見のために大学を訪れる。このときに校内の掲示板で高窪教授が火曜日と水曜日に授業のため出勤してくることや、試験期間の開始日を確認した。

検察官「試験期間が(半年後の)1月15日に始まると知り、それまでに実行しようと決めました。試験期間が始まると、高窪教授がいつ出勤してくるか分からなくなるからです」

 この日、山本被告は、卒業生が校内でうろついていることを不審に思われないように、卒業証明書などを受け取って行動のカムフラージュをしていたという。

検察官「この日は、高窪教授のところには行こうとは考えませんでした。殺すと決めた人に会いに行く気にはならなかったからです」

 具体的な殺害方法や、場所についてどのように考えていたかに話が移る。

 山本被告は事件当時、妄想性障害があったとされる。山本被告は高窪教授が自分のことを盗聴していて、襲撃に対する準備をしている−と考えていたようだ。

検察官「殺す方法は刺し殺そうと決めていました。刺すというのは一番やりやすいからです。高窪教授の個人的なことは全然知らないけど、もしかしたら、武道をやっているかもしれない。一発で殺すためには刺すのが一番です。これについては迷いませんでした」

「最初は包丁で刺すことも考えましたが、奪い取られたら逆にこっちが危ない。次に、オノのようなものを考えましたが、オノは重く、体力に自信がないのでやめました」

「その結果、ヤリなんかがいいなと考えるようになりました。ですが、売っているところを知りませんでした。でも、ホームセンターで枝きりばさみをみて、分解したらヤリみたいになると思いつきました」

 そう考えた山本被告は9月下旬、自分がアルバイトで働いているホームセンターとは別のホームセンターで刈り込みばさみを購入した。これを分解してヤリのような形にし、先端部分をヤスリでとがらせるなど、殺害に使用しやすいように加工していった。

 さらに、高窪教授が武道をしているかもしれないと思いこんだ山本被告は、予備の凶器も準備した。

検察官「高窪教授は、自分が殺そうとしていることを知っているはずだと考えていました。取り上げられたときにもう1本いると考え、用意しました」

 殺す場所についても、当初からトイレでの殺害を計画していたようだ。

検察官「用を足しているときは無防備で殺せるのではないかと考えました。あるいは、トイレの時間は分からないので歩いているときに襲うことも考えました」

 11月下旬から、山本被告は下見を繰り返し、校内の写真を撮影するなどして殺害のイメージトレーニングを重ねた。高窪教授の行動も監視し、待ち伏せする場所などの計画を練り始める。

 下見の結果、出勤のときは毎回、東門から入ってきていることに気付いた。また、トイレで待機して高窪教授がいつ利用するのかを確認した。

検察官「トイレのドアのすき間に顔を近づけ、じっと外の様子をうかがっていました。ですが、12月中には高窪教授はやってきませんでした」

「1月6日の下見のときに、4階のトイレに隠れて10〜20分たったころ、高窪教授が入ってきました。格好や背丈から高窪教授だと思いました。本当に来てくれた。待ったかいがあったとうれしくなりました」

「トイレでの犯行はあきらめていたので、一気に期待感が高まりました」

 高窪教授の姿をトイレで確認したことで、山本被告は殺害の場所をトイレに絞った。日程も、15日には試験期間に入るため、高窪教授が出勤してくるのは13、14日しかなくなっていた。山本被告は、撮影した写真をもとに殺害のイメージトレーニングを重ねたという。

 そして、山本被告は殺害前日の13日に最後の下見を行う。

検察官「この日、凶器をもって実行しようと考えていたが、なんとなく本番前の最後の予行演習になると考えていました」

 下見でしていた通り、午前10時ごろに高窪教授が出勤してくるのを確認し、トイレに身を隠した。そこで、トイレに入ってくる高窪教授を確認した。

検察官「サンダルの音がして気持ちを集中させました。高窪教授が入ってきましたが、この日は決心がつきませんでした」

「中途半端なことをやっては私がやられてしまう。絶対に殺さなくてはならない。まさに神風特攻隊の気持ちでした」

 13日の犯行は断念し、試験期間の最後の“機会”だった14日の実行を決意した山本被告。この日も自宅に帰って約3時間のシミュレーションを重ねたという。

検察官「14日はついにこの日が来たと思いました。前日の夜は時々目が覚めました」

「何としても今日中に殺さなくてはいけない。命懸けで刃向かってくるだろう。逆に殺されるかも−などと考えていました」

 山本被告は下見の通り、午前6時半ごろに校内に入り、4階の空き教室で凶器の準備に入る。そして午前10時ごろに高窪教授の姿を確認した。

検察官「ついにきたと思いました。緊張で顔がこわばっているのが自分でも分かり、神風特攻隊が敵を見つけて飛び立つ心境でした」

 山本被告は変わらず、うつむいたままじっと検察官の朗読に聞き入っていた。

⇒(4)殺害の瞬間「心臓がバッグンバッグンものすごい音」…教授は振り向き「あーっ」と叫んだ