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(7)「結構です」「もういいです」 遺族の代理人弁護士が登場

英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第4回公判は、検察側による被告人質問が続いている。

検察官「(供述)調書の中には、あなたがリンゼイさんの首付近に腕をまわしたという記載はないですね?」

市橋被告「はい、ありません」

検察官「あなたは検察官に対して、『リンゼイさんの首付近に腕をまわした』と言ったのですか」

市橋被告はしばらく沈黙した。

市橋被告「私はお話ししていました」

検察官「重要なのでもう一度聞きますね。あなたはなぜ、(事実と)違うと思ったのに、供述調書に署名したのですか」

市橋被告は、主語と述語の使い方に気を使っているのか、ところどころつっかえながら話しはじめた。

市橋被告「納得は、納得はいっていませんでした。リンゼイさんが動かなくなる前までの部分について、私は納得していません。事件の、私は事件の概要を説明したかった。私が、私がその時点でははっきり、覚えていないもので、重要でないものは(供述)調書から削ってもらっています」

「でも、リンゼイさんが動かなくなる前の部分は、(供述調書に)どうしても必要で、(検察官に)『(リンゼイさんが)逃げないように覆いかぶさった』と説明したとき、検事さんが『手で首を絞めたということか』と言いました」

「あの日は、最後の取り調べの日で、私は事件の概要と、私の謝罪の気持ちだけは、形に残しておきたかった」

「だから、(供述)調書では、概要は正しい…。リンゼイさんが動かなくなる前の様子には、納得がいかないけれど、私にとって、概要と、謝罪だけ載せてもらえば満足でした。だから署名しました」

市橋被告の長い説明のあいだ、通訳を聞いていたリンゼイさんの父、ウィリアムさんが「ふざけるな」というような口の動きをする。

検察官「あなたは強姦致死で起訴されているのですよ。だから、首を圧迫したという、そこが一番重要だとは思わなかったのですか?」

市橋被告「接見した弁護士の先生は、『話さないなら、接見の期間中、話さなくていい。裁判で話せばいい』と仰った。でも、私はどうしても謝罪の気持ちと、何があったかの概要はリンゼイさんの家族に伝えてほしかった。だから、そう思わなかった」

検察側の席の後ろに座った、リンゼイさんの両親の男性代理人弁護士から、前列に座った検察官らに紙が渡される。男性検察官は、堀田真哉裁判長に、男性代理人弁護士からの質問の要請をした。

弁護側、裁判官側で、しばらくやりとりがあった後、堀田裁判長が男性代理人弁護士の被告人質問を15分だけ許可した。男性代理人弁護士は、堀田裁判長に礼を言った後、市橋被告に質問をした。

代理人弁護士「結束バンドについて話します。弁護人の主尋問では、1年前にホームセンターで購入したということだったよね?」

弁護人「異議あり。1年前とは言っていません。(事件の)前の年です」

男性代理人弁護士は、男性弁護人の異議にやや鼻白んだ様子だったが、気を取り直して質問を続ける。

代理人弁護士「前の年?」

市橋被告「はい」

代理人弁護士「前の年に…」

男性代理人弁護士の質問を、今度は通訳がさえぎった。男性代理人弁護士は「やりにくいなぁ」というように苦笑いした。

代理人弁護士「前の年に買ったものを収納棚に保管していたということで、間違いないですか」

市橋被告「玄関の物置の上にある、壁際の収納棚に入れて、まとめて置いてありました」

男性代理人弁護士は、大型モニターに、事件当時の市橋被告の部屋の見取り図を映し出し、市橋被告に収納棚の位置を指で示させた。

代理人弁護士「リンゼイさんを家に連れてくる前に、あなたが結束バンドを最後に見たのはいつですか」

市橋被告「もう一度」

男性代理人弁護士は質問を繰り返した。

市橋被告「私は前の年に、結束バンドをホームセンターで買いました。部屋の電気コード類をまとめられないか、と思ったからです。ホームセンターから家に戻って、45センチの結束バンドを束ねて、壁に掛けられないか確かめました。でも、束ねられても、壁に掛ける方法が分からなかった。だから収納棚にしまいました。最後に見たのが、いつかと聞かれると、買ってからすぐに使用しようとしたときです」

市橋被告の長い説明のあいだ、男性代理人弁護士は、うなずきながら、裁判員の前を行ったり来たりしている。

代理人弁護士「あなたがリンゼイさんを押し倒して強姦した場所を図面で示してください」

市橋被告「もう一度」

男性代理人弁護士は、ため息をついてもう一度質問を繰り返した。

市橋被告「ここです」

男性代理人弁護士が質問を続けようとすると、堀田裁判長がさえぎり、後で見直せるように印をつけるよう要請した。男性代理人弁護士は了承した後、話を続け、強姦時の状況を確認した。

代理人弁護士「あなたがリンゼイさんを強姦するとき、リンゼイさんは裸で横たわっていた。あなたはリンゼイさんの上に馬乗りになっていた?」

市橋被告「もう一度」

代理人弁護士「質問を撤回する」

市橋被告のあまりにも多い聞き返しや、長い説明に、男性代理人弁護士は、市橋被告がすぐに答えられないなら、答えを切っていくことにしたようだ。

代理人弁護士「あなたはどうやってリンゼイさんの手首に結束バンドをつけたのですか」

市橋被告「げた箱の上の収納棚をあけて、結束バンドを取り出し、リンゼイさんの手首にはめました」

代理人弁護士「手首にはめた結束バンドは1つ?2つ?」

市橋被告「1つです」

ウィリアムさんは、男性代理人弁護士に目配せした。

代理人弁護士「現場にあった、あなたの家には、2つに繋がった結束バンドがたくさん残っていましたが、それはどうしてですか」

市橋被告「なぜ2つ使わなかったという理由ですか」

代理人弁護士「なぜ2つ繋がった結束バンドが残っているかということです」

市橋被告「最初、リンゼイさんを強姦するときに最初、45センチの結束バンドを…」

代理人弁護士「もういいです。時間がないので次にいかせてください」

市橋被告の説明が長くなりそうだとみるや、男性代理人弁護士は、市橋被告をさえぎって、質問を撤回した。

代理人弁護士「リンゼイさんの足首には、小さな輪になった結束バンドが2つありました。それはなぜですか」

市橋被告「リンゼイさんのご遺体の足には、45センチの結束バンドが、私はリンゼイさんがご遺体になったとき、そうなっていたのは、私が最後、結束バンドをはめたとき、45センチの結束バンドをまず、リンゼイさんの足首にはめ、そのあと、30センチの結束バンドを輪になるようにして、長くしたものをその上にまいたから。最後に、結束バンドを…」

代理人弁護士「もう結構です。時間がないので」

市橋被告の主語と述語がたびたび入れ替わる説明を、小さくほほえんでうなずきながら聞いていた男性代理人弁護士だったが、途中でさえぎった。

代理人弁護士「もう1つ現場に残されていたものについて聞いていいかな? 結束バンドの大きいものが現場には残されていましたけれど、それはどうしてですか?」

市橋被告「今から考えたことでいいですか」

代理人弁護士「結構です。撤回します」

市橋被告「私は…」

代理人弁護士「もういいです」

答えをさえぎられることが多くなり、市橋被告は戸惑っているようだ。

質問を変えて、男性代理人弁護士は、当時市橋被告と付き合っていた女性との関係について尋ねた。

代理人弁護士「最後に(付き合っていた女性と)肉体関係を持ったのはいつですか」

市橋被告「覚えていません」

25日の深夜まで、その女性と焼き肉デートをしていたという市橋被告だが、男性代理人弁護士は、その後、リンゼイさんと会うまでの空白の6時間について質問した。

市橋被告「私が部屋に戻ったのは午前4時ごろです。私は家計簿をつけていたので、(家に)戻った後は、その日使ったお金をつけていました。そのあと、リンゼイさんと会う約束があったので、寝たと思います」

代理人弁護士「その間、あなたは粘着テープを切ったり、結束バンドをわっかにしたりして、(犯行の)準備をしていたのではないですか」

市橋被告「準備…」

市橋被告の答えをさえぎって、男性代理人弁護士は質問を変えた。

代理人弁護士「あなたが(強姦の時)結束バンドを取りに行こうとしたら、リンゼイさんは逃げようとしましたか」

市橋被告「…私は」

代理人弁護士「結構です」

弁護人「異議あり。被告は答えようとしています」

市橋被告の答えをさえぎろうとした男性代理人弁護士に、弁護人は異議を申し立て、認められた。

かみ合わないやりとりのあと、市橋被告は「(逃げようと)していません」と答えた。

その後、男性代理人弁護士の「息ができなくなったら死ぬと分かっているのか」との質問に、市橋被告がまわりくどい答えを返した後、男性代理人弁護士は質問を終えた。

代理人弁護士「結構です。終わります」

堀田裁判長は、見取り図をもとに市橋被告の説明を確認した後、約20分間の休廷を宣言した。

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