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(12)「邪悪な男」「娘の死ネタに金稼ぎ」…父の迫力に腰を抜かして退廷

平成19年3月に英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=が殺害された事件で、殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第4回公判で、リンゼイさんの父親のウィリアムさんに対する検察側の証人尋問が続き、ウィリアムさんの言葉を女性通訳が通訳していく。

証人「これまで裁判を見てきたが、まるで市橋被告のショーだと感じました。検察官の質問には短く答え、『もう1度』と聞き直す。弁護人が尋ねたことはたちどころに理解して、長々と答えていました。彼はショーを演じるために(言動を)練り上げています」

ウィリアムさんが座る証言台のすぐ左後ろで、刑務官に挟まれるようにして長イスに座る市橋被告。傍聴席から見ても分かるほど、体と顔をガタガタと震わせている。

証人「裁判長、裁判員の方々にはぜひ、証拠に基づいて判断してもらいたいです。法廷では娘を解剖した鑑定医の証言が出ました。証言によると、3分から5分程度、娘の首に圧迫が加えられた可能性が高いということでした。みなさん3分について、自分の息をとめて試してみてください。30秒程度で首の圧迫をやめたら回復するとのことでしたが、彼(市橋被告)が手を離した証拠はありません」

ウィリアムさんは市橋被告の心臓マッサージを試みたという主張にも疑問を呈した。

証人「もしも心臓マッサージをしたら、された側の肋骨(ろっこつ)が折れるほどの力が加えられるということでしたが、娘の体に心臓マッサージを施した痕跡はどこにもありませんでした」

ここで堀田真哉裁判長が割って入り、検察側の質問に端的に答えるように求めた。ウィリアムさんは「OK」と応じた。男性検察官が質問をする。

検察官「法廷での市橋被告の態度を見てどう感じましたか」

ウィリアムさんは首を左右に振りながら、しゃべり始めた。

証人「彼は悔いていません。証言は計算されつくし、リハーサルされたものです。彼が逃走中、私たちは何度も強く自首を求めました。しかし彼は耳を貸さず、われわれが日本に来るための費用を工面している中でも、あざ笑うように逃げ続けていました。法廷でもまったく悔いていないことは明らかです」

検察官「市橋被告にどんな刑を望みますか」

証人「この国の最も重い最高刑を望みます。慈悲なく娘を殺害した行為に相当するような、寛容でない最高刑を希望します」

検察官「家族もみんな同じ思いですか」

証人「当然そうです。市橋被告の振る舞い、態度、私たちへの仕打ち、リンゼイにしたことから、最高刑を望みます」

市橋被告は手記を出版しているが、その印税を遺族に支払うとしている。検察官はこの点についても質問する。

検察官「市橋被告は印税を支払うと言っていますが、どう思いますか?」

証人「イチハシからは何ももらいたくない。一銭もイチハシからもらわない。娘を殺しておいて、それをネタに金を稼いでいる。一銭もほしくない」

女性通訳は感情移入したかのように強い口調となっていき、市橋被告の呼称を外した。市橋被告の震えはずっと止まらない。

検察官「事件から4年以上が経過しましたが、日本や日本人にどんな気持ちを持っていますか」

証人「法廷では答えにくい質問ですね。リンズー(リンゼイさんの愛称)は日本を大事にしていました。日本が好きで、私たちが休暇に日本を訪れると、色々なところを案内してくれました。この日本の秩序、高潔さを尊敬していました。たとえイチハシという人間が娘にあのようなことをしたからといって、私は日本に対するネガティブ(否定的)な気持ちは持っていません。彼がしたことと、日本はまったく関係していません」

検察官「被害者参加制度にのっとり裁判に参加した理由を教えてください」

証人「家族として、犯人が何をしたのかを見届けたいと思ったからです」

検察官「裁判官や裁判員に伝えたいメッセージはありますか」

証人「私はこの国の裁判制度を信頼しています。皆さんが正義を貫かれることを固く信じています。証拠に基づき有罪と判断されたときには一切の寛容も、慈悲も不要です。それを切に希望します」

検察官「最後に何か言いたいことはありますか」

証人「彼がしたことで家族は惨憺(さんたん)たる思いをしました。私たち家族は二度と、平凡ながら幸せだったころに戻れません。今はある意志で一つになっています。この邪悪な男は娘に邪悪の限りのことをしました。彼に最高刑を与えたいということだけで気持ちを一つにして頑張っています」

向かって右から3番目の男性裁判員は目を細め、同情するようなまなざしをウィリアムさんに向けた。検察側の尋問が終わり、ウィリアムさんは席を立つと、市橋被告の隣に座っていた刑務官がウィリアムさんの接近を防ぐように、2人の間に立った。顔を紅潮させたウィリアムさんが検察側の後方にある自席に戻ると、母親のジュリアさんがいたわるように背中をさすっていた。

堀田裁判長は閉廷を宣言した。傍聴人たちが次々と退廷する中、市橋被告は震えたまま動かない。刑務官たちが両脇を支えるようにして立たせたが、腰が抜けたように前屈みになった。刑務官たちに引きずられるようにしながら退廷する市橋被告の背中を、ウィリアムさんとジュリアさんはにらみつけていた。

第5回公判は11日午前10時から始まり、引き続きウィリアムさんや、ジュリアさんらの証人尋問が行われる。

⇒第5回公判