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(1)殺害後12時間も意識失い「夢であってほしい…」

千葉県市川市のマンションで平成19年、英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=が殺害された事件で、殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第4回公判が8日、千葉地裁(堀田真哉裁判長)で始まった。7日の第3回公判では弁護側が市橋被告本人への被告人質問を行ったが、今回は検察側による質問が予定されている。

市橋被告は第3回公判で、リンゼイさんとの出会いから、暴行、死に至らしめた経緯などを詳細に語った。だが、公判の最大の争点となっている殺意については「(死んでもいいとは)思っていませんでした」と明確に否定。左腕を巻き付け、リンゼイさんに覆いかぶさったとされる時間も「短かった」などと証言した。

検察側は「強姦後に犯行を防ぐ目的があり、3分以上、相当な力で首を圧迫し続けた」と主張しており、市橋被告の証言と対立している。また、英語のレッスン料を忘れたため、リンゼイさんと一緒に自宅に取りに行ったとする市橋被告に対し、検察側は「強姦目的の口実」としており、この点でも大きな隔たりがある。

午後からはリンゼイさんの父、ウィリアムさんに対する証人尋問も予定される。被害者参加人として参加してきた公判では、指を立てるしぐさを見せたり、にらみつけたりと、市橋被告への怒りを隠さなかったウィリアムさんは、何を訴えるのか。

午前9時58分、ウィリアムさんと、リンゼイさんの母、ジュリアさんが入廷し、傍聴席右側の検察官席の後ろに着席した。2人は時折、笑顔も見せながら通訳と打ち合わせをしている。

9時59分、市橋被告が左側の扉から入廷した。白い長袖のワイシャツに黒のジーンズ姿。顔は青白く、うつむいたままで、ウィリアムさんらに軽く一礼した。ウィリアムさんらの笑顔は消え、市橋被告に厳しい視線を向けた。

市橋被告は初公判で、ウィリアムさんらに土下座し、改悛(かいしゅん)の意を示した。しかし、犯行後に約2年7月に及ぶ逃亡生活を送った点について、市橋被告の口からは語られていない。

続いて裁判長、裁判官、裁判員6人も入廷。全員が起立、一礼した後の午前10時、堀田裁判長が開廷を告げた。まずは7日に続き、弁護側による被告人質問だ。市橋被告がゆっくりと証言台に向かい、裁判長にうながされて椅子に腰を下ろした。

弁護人「あなたはリンゼイさんに人工呼吸をしたり、心臓マッサージをしたと言いましたね」

市橋被告「はい」

弁護人「それでも被害者の意識は戻らなかった?」

市橋被告「はい」

弁護人「そのあと、どういう行動を取りましたか」

市橋被告「リンゼイさんは動きませんでした。それを見たら、私は全身の力がなくなって、意識がなくなっていました」

弁護人「事件は(19年)3月26日午前2時から3時ころと言われましたね。あなたの意識が回復したのは、どれくらいたってからですか」

市橋被告「26日の午後2時か3時の間でした」

弁護人「約12時間くらい、意識がなかったと」

市橋被告「はい」

弁護人「目覚めた事情は」

市橋被告「事情はありません。リンゼイさんに人工マッサージを繰り返したけど、全く動かなかった。そこから全く覚えてなくて、目が覚めたら外が明るかった」

弁護人「その時の精神状態はどうでしたか」

市橋被告「これが現実なのか、夢なのか分かっていなかった。分かっていませんでした」

弁護人「なぜそんな心理になったのですか」

市橋被告「最悪な状態になりました。これが夢であってほしいと思いました。現実が分からなくなっていました」

市橋被告は涙声になった。弁護側は続いて、リンゼイさんが大声を出さないよう口などに貼ったとされる粘着テープについて質問した。

弁護人「いつの時点で、被害者にテープを使ったかは覚えていますか」

市橋被告「覚えています」

弁護人「それはいつ?」

市橋被告「私は3月25日の昼にリンゼイさんを殴っています。そのあと、リンゼイさんが大声を出さないよう、口や、口から頭のまわりにかけて粘着テープを貼っています」

弁護人「それで、どうなりましたか」

市橋被告「口に貼ると声が出ないと思いましたが、リンゼイさんが口をもごもごさせると、唾液がついて、すぐテープが口からはずれました。何回かやってもはずれるので、諦めてはずしました」

弁護人「粘着テープは、なぜ家にあったのですか」

市橋被告「私は以前から、床の掃除に粘着テープを使っていました」

第3回公判で、市橋被告はリンゼイさんの拘束に使った結束バンドについて、配線コードをまとめて壁にかけるため平成18年に購入したと証言していた。弁護側はこの粘着テープを含め、市橋被告の犯行に計画性がなかったことを主張したいようだ。

続いてリンゼイさんを入れていた浴槽の図面が、法廷の大型モニターに映し出された。頭を置く傾斜部分がA面、足を置く部分がC面と記されている。

弁護人「リンゼイさんの入れ方は、A面の部分に背中がつく形でいれたのですか」

市橋被告「そうです」

弁護人「足はC面ですか」

市橋被告「そうです」

弁護人「リンゼイさんは同じ姿勢で座っていたのですか」

市橋被告「リンゼイさんはじっとしていませんでした。時々、動きました」

父親のウィリアムさんは市橋被告をにらみつける。母親のジュリアさんは隣に座る通訳の方に顔を向けたままだ。

弁護人「あなたはリンゼイさんを2回殴ったと言っていましたが、どこを殴ったのですか」

市橋被告「私も浴槽に入るようにして、顔を殴りました」

弁護人「入るようにしてとは、被害者と相対する形ですか」

市橋被告「そうです」

弁護人「あなたはリンゼイさんに電話番号や似顔絵を書いて渡していますよね。被害者と連絡が取れないことを不審に思われ、すぐ、あなたに結びつくとは思いませんでしたか」

市橋被告「思いました」

弁護人「あなたはリンゼイさんと人間関係を作って、早く帰そうと思っていたとも話していましたが、どのくらいで帰そうと思ったのですか」

市橋被告「彼女に悪いことをした気がしたので、許してもらえたら、彼女を帰したかった。でも、私は、彼女を殴ってしまったのです」

市橋被告の声は、徐々に小さくなっていった。

⇒(2)「警察に言わないから私を帰して!」リンゼイさんの悲痛な願いに被告は…