(6)「お金やマンション眼中にない」母が証言
歌織被告の母親への質問が続く。祐輔さんとの離婚の話し合いについて、時折涙ぐみながら小さな声で答えた。
弁護人「祐輔さんは知人たちに歌織さんのことを何と?」
証人「『何を言い出すか分からない。とにかく信じないでくれ』と」
弁護人「シェルターのことについては?」
証人「(歌織被告の)友人や知人に電話して調べていた」
弁護人「どういった話をしていたか?」
証人「『精神的な病を患っている』と」
弁護人「シェルターに入った経緯については?」
証人「(聞き取れず)」
弁護人「話の内容は?」
証人「男性関係がひどくて信用できない」
弁護人「祐輔さんから歌織さんの知人に話したことを歌織さんは何と言っていた?」
証人「『全くウソです』」
裁判長「『と言っていた』ということでいいか? 最後の方が聞き取りづらかった」
証人「言っていました」
弁護人「『事実と違う』と」
証人「そうだ」
弁護人「歌織さんから『お金を貸してほしい』と頼まれたことは?」
証人「ある。『離婚カウンセラーの講座を受けるためだ』と」
弁護人「何のために?」
証人「『シェルターでは水一滴飲めず、起きあがることもできなかった。遠くから子供の話し声が聞こえ、子連れで入っている人がいるのか、助けたい』と」
歌織被告から話を聞いた当時を思い出したのか、母親は涙ぐみながら答えた。弁護側は離婚カウンセラー養成講座についての質問を続ける。
弁護人「自立するため?」
証人「はい」
弁護人「振り込んだ?」
証人「はい」
弁護人「いくら?」
証人「四十●万円(細かい額は聞き取れず)」
弁護人「受講は?」
証人「できなかった。家捜しでスクールの紙を破られ、暴行を受けた」
弁護人「いつ?」
証人「夏ごろ」
裁判長「夏とは? それは何年のことだ?」
証人「平成18年」
弁護人「先ほど言っていた『家捜し』とは具体的には?」
証人「娘の身辺を疑っていた」
母親のいう『家捜し』とは、『自宅の中をあれこれ探し回ること』という意味と思われる。
弁護人「そのように歌織さんから聞いているということか?」
証人「はい」
弁護人「18年11月5日にマンションに行った。そこで『離婚してほしい』『申し訳ない』というやり取りが?」
証人「歌織から頼まれて…(聞き取れず)。最終的には『今日からマンションに泊まってほしい』と」
弁護人「泊まった?」
証人「…(聞き取れず)」
弁護人「11月5日はお父さんにとってどんな日?」
証人「主人にとって記念すべき日。就任式」
弁護人「かかわっている団体の?」
証人「はい」
弁護人「けれど電話があったから行った?」
証人「はい」
弁護人「検察側から質問があった11月22日の上京だが、(あらかじめ行く)用意はしていた?」
証人「なかった」
弁護人「歌織さんから頼まれた?」
証人「はい」
弁護人「祐輔さんの女性関係については?」
証人「前からよく聞いていた。『激しい』と」
弁護人「ずっと(前から)聞いていた?」
証人「はい」
弁護人「(祐輔さんの)会社にも電話をかけたが会ってもらえなかった?」
証人「聞いてもらいたかったが、会ってもらえなかった」
弁護人「歌織さんから何か頼まれたか?」
証人「写真や公正証書など…(以下聞き取れず)」
弁護人「何のために?」
証人「『預かってほしい』と」
弁護人「理由は?」
証人「『自宅に置いておくと破られるから』と」
弁護人「中身は?」
証人「恐ろしくて見ていない」
弁護人「写真のことか?」
証人「はい」
弁護人「他に頼まれたか?」
証人「『主人(被告の父)に電話して弁護士に必要なものを教えてほしい』と」
弁護人「『弁護士を頼みたい』と」
証人「その場で主人に電話した。『こういう状況なので連絡してほしい』と」
弁護人「お母さんと歌織さんと別れたあと、祐輔さんは?」
証人「『話をしたいから早く帰ってきてほしい』と(歌織被告に連絡があった)」
弁護人「その後お母さんに電話は?」
証人「『まだ帰ってこない』と(あった)」
弁護人「『話をしたいのに帰ってこない』と?」
証人「はい」
弁護人「給料やボーナスを折半するという話はどちらから?」
証人「祐輔さんから」
弁護人「離婚に応じるということなのか?」
証人「話が行き詰まると『絶対しない』」
弁護人「と聞いている?」
証人「はい」
弁護人「歌織さんと18年11月にホテルで会ったときのことだが、お金やマンションについては?」
証人「(歌織被告は)『お金やマンションは眼中にない。そういうことを希望しているわけではない』と」
弁護人「他には?」
証人「(聞き取れず)」
歌織被告は顔を少し紅潮させながらも、落ち着いた様子で母親の方を見つめていた。