(5)「祐輔さんが土下座して謝った」
平成17年12月24日、東京都内のホテルのロビーで行われた三橋祐輔さんとの話し合いの内容を詳細に証言する母親。歌織被告は机上のメモを見やりながら、母の証言を聞き入った。
弁護人「お母さんに対して祐輔さんはなんと?」
証人「土下座して、『許してください、歌織とやり直します』と」
弁護人「ホテルのロビーで土下座して、離婚したくないといったのか?」
証人「そうだ」
弁護人「その話は祐輔さんの福岡の実家にも連絡した?」
証人「はい」
弁護人「でも、つながらなかった?」
証人「はい」
弁護人「土下座は要求したのか?」
証人「とんでもない。祐輔さんが頭を下げたから、それはやめなさいといって座らせた」
歌織被告の視線に力がこもる。
弁護人「お父さんはその様子を見てなんといった?」
証人「とにかく、離婚してほしいといった」
弁護人「でも、応じないといわれたのか?」
証人「はい」
弁護人「それで、お父さんは祐輔さんになんといった?」
証人「『歌織の何が悪いのか、なぜ暴力をふるうかいわないのなら、これ以上時間がたつのは我慢できない。帰ってくれ』といった」
弁護人「祐輔さんは帰った?」
証人「いえ。歌織の手を引いて、すいませんでした、と」
弁護人「でも最後は祐輔さんは帰って、お父さんお母さん歌織さんの3人になったのか?」
証人「はい」
歌織被告が視線を下げて、髪をかき上げた。
弁護人「歌織さんには両親はなんていった?」
証人「とにかく離婚しなさいといった」
弁護人「歌織さんは両親には?」
証人「本人はどうしても東京がいいと、新潟は嫌だといった」
弁護人「祐輔さんの対応をみて、その後両親はどうしたのか?」
証人「(18年)1月に主人と私と、いとこと祐輔さんの4人で会った」
弁護人「いとこは男女どっち?」
証人「男性だ」
弁護人「両親からは祐輔さんになんといった?」
証人「離婚してほしいと伝えた」
弁護人「祐輔さんは?」
証人「とにかく絶対離婚は嫌だといった」
弁護人「決着ついたのか?」
証人「つかなかった」
弁護人「いとこから2人の生活についてなんか聞いたか?」
証人「関係は悪かったと聞いた」
弁護人「祐輔さんについては?」
証人「融資の話を持ちかけられたと」
弁護人「いつ?」
証人「(17年)12月25日だ」
弁護人「その後、お父さんは祐輔さんに何かしたことはあるか?」
証人「離婚の申立書を歌織あてに封書で送った」
弁護人「それはどうなった?」
証人「封書から取り出してビリビリに破いて、歌織に暴力をふるったと」
歌織被告が視線を下げた。記憶を振り払うかのように、小首をかしげた。
弁護人「いつごろそれを聞いた?」
証人「(18年)4月ごろだ。歌織から書類についての連絡がないから確認の電話をしたらといわれた」
弁護人「その後、お母さんは上京したことはあった?」
証人「5月の連休にあった。主人と一緒だ」
弁護人「1人でも1度あったでしょう?」
証人「3月16日に行った。歌織と確か…青山近辺を散歩した」
弁護人「どんな話を?」
証人「最近、マンションを見てるんだと」
弁護人「なぜ?」
証人「休日に家にいると暴力ふるわれる。人前だとふるわれない。少しでも外にでたいと」
弁護人「実際に買うのかどうかは?」
証人「歌織は、買えるわけないといった」
弁護人「祐輔さんからマンションを買うと聞いたのはいつ?」
証人「17年の12月25日だ」
弁護人「ロビーで別れたくないといった翌日にマンションを買うといわれたのか?」
証人「はい」
弁護人「その後、祐輔さんと会うことはあった?」
証人「5月の連休にあった」
弁護人「会えた?」
証人「祐輔さんから電話で会いたくないといわれた」
弁護人「どのように?」
証人「『お父さんの会話をテープに録音します』といわれた。私たちは電話を切ってマンションに向かった」
弁護人「マンションで会えた?」
証人「いえ、電話で『お父さんとは話したくない。警察に行った。お父さんを逮捕しにくるから待っててください』といわれた」
弁護人「直接会えず、新潟に帰ったのか?」
証人「はい」
弁護人「それまで祐輔さんはそういう態度をとっていた?」
証人「4月くらいに豹変した。それまでは、すいません、ばかりだった」
弁護人「その後、祐輔さんから連絡は?」
証人「ない、まったく」
弁護人「歌織さんはお父さんにその後なんと?」
証人「『お前の田舎の親父のちっぽけな会社なんかいつでもつぶしてやる。お前らの親類は頭が悪くて、だましやすいタイプだ』と(祐輔さんからいわれたと言った)」
歌織被告が髪をゆすった。
弁護人「その『親類』に心当たりは?」
証人「いとこだ」