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(8)逮捕5日前にデリヘル…逮捕の瞬間は「しらばっくれよう」

東城瑠理香さんのバラバラにした遺体をトイレに流すなどして完全に捨て去った平成20年5月1日以降の星島貴徳被告の行動について検察官の詳細な質問が続いた。精気のない星島被告の声は、まるでささやいているかのようだ。

検察官「(遺体を捨てた後)証拠を残さないこと以外に部屋を掃除した理由は」

星島被告「きれいにしたかったからです」

検察官「きれいにするとどうなるのですか」

星島被告「元に戻せると…」

検察官「あなた自身の生活を元に戻せると思ったのですね」

星島被告「はい」

検察官は星島被告が犯行後に購入したトイレの配水管をきれいにする洗浄剤について質問を戻した。

検察官「あなたはその洗剤をどのように扱ったのですか。素手で扱いましたか」

星島被告「素手で中の薬を触り、排水溝にまいたので、手がただれました」

検察官「キッチンの周辺は汚れていましたか」

星島被告「はい」

検察官「どうしましたか」

星島被告「洗剤できれいに洗いました」

検察官「ゴールデンウイーク中に警察官は来ましたか」

星島被告「覚えていません…。来たと思います」

検察官「918号室(星島被告の自室)には入りましたか」

星島被告「分かりません」

遺体遺棄後については、放心して記憶があいまいになっているのか、「覚えていません」という答えが増えてきたようだ。

検察官「(警察官は)冷蔵庫の中は見ましたか」

星島被告「見てると思います」

検察官「その時、指紋は採取しましたか」

星島被告「してると思います…」

検察官「うまく採取できたかどうかは分かりましたか」

星島被告「その後、採りに来たので、採れなかったのだと思います」

検察官「洗浄剤で手が荒れていたので、採れなかったのだと後で思ったのですか」

星島被告「はい」

包丁やまな板など遺体の損壊に使った道具に関する質問に移る。

検察官「大小2丁の包丁とカミソリ、まな板は処分したのですか」

星島被告「いいえ」

検察官「どうしてですか」

星島被告「忘れていました」

検察官「4月19、20日に警察に見られていると思ったからではないですか」

星島被告「もっと早く…。捨てなきゃいけなかったのに、忘れていました…」

検察官「ゴールデンウイーク後、あなたは普段通り、出勤しましたね」

星島被告「はい」

検察官「捜査は進展しているように見えましたか」

星島被告「いいえ」

検察官「バリケードは解除されていましたか」

星島被告「はい」

検察官「捜査は進展していない、バリケードはなくなり、あなたはどう思いましたか」

星島被告「逃げられると思いました」

検察官「(東城さんの)携帯電話を隠したのはこのころですね」

星島被告「と思います…」

検察官「配水管の中ではなく、配水管が収容されているスペースの中に隠したのですか」

星島被告「はい」

検察官「血を吸わせたバスタオルなどはどうしました」

星島被告「ゴミとして処分しました」

検察官「ゴールデンウイークが終わった後、捨てたんですね」

星島被告「はい」

検察官「どこに捨てたのですか」

星島被告「自宅マンションのゴミ置き場です」

ここで、検察官は星島被告の給与について、質問を変える。

検察官「給料は50万円ぐらいですね」

星島被告「はい」

検察官「それは額面ですか、手取りですか」

星島被告「手取りです…」

検察官「あなたは手取りと額面が同じですね」

星島被告「…。はい」

検察官「毎月44万9000円ぐらいが振り込まれていますね。税金の源泉徴収がされていないから額面と手取りが同じなのですね。あなたは、所得税も住民税も払っていませんでしたね」

星島被告「はい」

検察官「ここ7、8年申告していないので、払っていませんね」

星島被告「払う気はありませんでした。将来もないんですから」

女性を「性奴隷」にしたいという東城さん殺害の動機と同様に、支払い義務のある税金についても身勝手な論理をふりかざす星島被告。検察官は思わず語気を強めた。

検察官「払うものは払わなければだめでしょう」

星島被告「何とも思ってなかった…」

ここで検察官は質問を変える。

検察官「あなたは5月19日ごろ、性欲を処理するために何かしましたね」

星島被告「5月19日に鶯谷のデリヘルを利用したと思います」

検察官「デリヘルは何人呼んだのですか」

星島被告「2人です」

検察官「1人いくらですか」

星島被告「3万円だったと思います」

犯行を忘れ去ろうと、性欲に溺れようとしたのだろうか。

検察官「5月中旬ごろ、事件の記憶をどうしようと思っていましたか」

星島被告「事件のことを忘れて、元に戻ろうと…。謝ろうとか、自首しようとか思っていませんでした…」

検察官「遺族に謝るとか、自首は考えたことがないのですか」

星島被告「はい」

検察官「東城瑠理香の名前を覚えていましたか」

星島被告「いいえ。覚えていてはまずい名前だったので、忘れようとしました」

検察官「なぜ?」

星島被告「報道されていない、誰も知らない名前だったからです」

検察官「5月21日、918号室に誰かきましたね」

星島被告「日付は覚えていません」

検察官「逮捕の数日前に来ましたね」

星島被告「はい、指紋を採りにきたと思います」

ここで検察官の質問はいよいよ、星島被告逮捕の瞬間に入る。

検察官「5月24日の朝、誰が来ましたか」

星島被告「警察です」

検察官「捜索に来ましたね」

星島被告「はい…」

検察官「現場検証が始まって、あなたは深川署に行きました」

星島被告「はい」

検察官「その時、どう思っていましたか」

星島被告「指紋が証拠になったと…。殺したことは…。罪が怖くて、いやで、しらばっくれようと心に決めていたと思います」

検察官「なぜしらを切ろうと思ったのですか」

星島被告「人に非難されるのが、怖かったからです」

検察官「警察で取り調べが始まりましたね。あなたは警察の質問にどう対応したのですか」

星島被告「ぜんぶ知らないと…」

検察官「警察から『こういう証拠があるんだぞ』と言われましたね」

星島被告「はい」

検察官「それは何でしたか」

星島被告「血液反応だったと思います」

検察官「警察から『血液反応が出ているぞ』と言われたんですね」

星島被告「『知らない証拠は関係ない』と思っていました」

検察官「内心ではどう思っていましたか」

星島被告「きれいにしても残っていたんだな…と思ったかもしれません」

検察官「あなたはその日1日、誰かにはめられたとか、他の人が殺したとか言い続けましたね」

星島被告「はい」

検察官「次の朝、殺したことを打ち明けたのはどうしてですか」

星島被告「前の日の夜に、刑事さんから、『本当に東城さんの家族に悪いとは思わないのか』と質問されて…」

検察官「取り調べの最後に言われたんですね。何と言ったのですか」

星島被告「『いいえ』と言いました」

検察官「あなたは事件とは関係ないと言っていた訳ですから、本当はどういうべきだったと思いますか」

星島被告「『はい』と答えるべきだったと…」

検察官「しかし、『いいえ』と答えてしまったのはなぜですか」

星島被告「よく分かりません…。罪悪感があったのかもしれません。お父さんやお姉さんの姿が頭にこびりついていたのかもしれません」

検察官「罪悪感があった?」

星島被告「自分の中では家族とか他人とか全然、信頼できませんでした。だから刑事さんがそういった時…。少し…。お父さんやお姉さんの気持ちを考えたのかもしれません」

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