(4)「防犯カメラに死角」報道見て「助かるかも」…損壊作業は継続
約15分の休憩を挟んで再開された公判。うつむいて、1歩ずつ、ゆっくりと被告人席に向かう星島貴徳被告の顔には全く生気が感じられない。
犯行日の4月18日は金曜日だった。検察官は土日を挟んで、事件後、初めて星島被告が出勤した21日の行動について、取り調べの際に本人が説明した供述調書の朗読を始めた。
星島被告は20日も夜通し、殺害した東城瑠理香さんの遺体の切断作業をしていたという。
検察官「21日朝は相当疲れていましたし、(遺体の解体で)気持ち悪かったので、仕事を休もうと思っていました。しかし、仕事を休むと怪しまれるので、出勤することにしました」
星島被告は、冷蔵庫に東城さんの腕や足を折りたたんで入れていた。検察官の供述調書の読み上げは続く。
検察官「冷蔵庫の腕や足を出勤時に緑色のバッグに入れて外に持ち出して捨てようと思いました。しかしマンションのエントランスには、警察官が大勢いて住民を監視していました。もし持ち出して、バッグの中身を見られたら、東城さんを殺害したのがバレると思いました」
検察官「そこで、この日は空のバッグを持って、出勤し、警察官がどのようにチェックしているのかを確かめることにしました」
星島被告はコンピューターのプログラマーをしており、午前10時から仕事が始まるという。何も入っていないバッグを持って、午前9時半にマンションを出ようとした星島被告に対し、エントランスにいた警察官はどうしたのか。
検察官「警察官はバッグの中身を尋ねることもありませんでしたし、見ようともしませんでした。『荷物チェックがないなら、明日からバッグに入れて(切断した遺体を)持ち運べる』と思いました」
夜通し、遺体の切断など証拠隠滅工作を続けた星島被告は、この日は出勤しても仕事が手につかず、気づけば机で眠っていたという。『同僚に怪しまれる』と何度も必死に眠気に耐えていたが、結局は午後5時半の退社時間まで、仕事が手につくことはなかった。仕事を終えた星島被告は帰宅途中の豊洲駅近くで大型雑貨店に寄った。
検察官「19日か、20日に警察官に室内を見られた際、警察官は台所に3本の包丁があることを確認していました。包丁は私が持っていた大小2本と、東城さんの家から持ち出して、殺害に使った1本です」
検察官「血はきれいに洗い流していますが、もしかしたら東城さんのお姉さんが特徴を覚えているかもしれませんし、拉致して殺害した証拠になると思いました」
検察官「しかし、捨てると警察官が来た際に1本なくなっていることに気づくかもしれませんので、(大型雑貨店で代わりの包丁1本を)買おうとしました。ついでに、ほとんど食べ物がのどを通らない状況でしたので、イチゴを食べようと思い、青果店にも寄りました」
包丁を購入した星島被告は、同じ雑貨店で、肉をミンチにする機械をたまたま見かけたという。
検察官「これを使えば、遺体の処理が楽になるのではないかと考え、これも購入しました」
検察官「しかし、マンション前にはマスコミが張り付いていて、もしミンチにする機械の箱を見られると、きっと怪しまれると考え、そのままごみ箱に(ミンチにする機械を)箱ごと捨てました」
イチゴを買って、いつものように帰宅した星島被告は午後9時までテレビやインターネットで事件の報道をチェックした。
マンションの防犯カメラに東城さんが連れ出された様子が映っていないと報じたものや、防犯カメラには死角もあり、外部犯の可能性を疑わせる報道もあった。星島被告は『これは助かるかもしれない』と思ったという。
星島被告は、21日は午後9時から頭部の解体を始めた。頭部はごみ袋に入れて、押し入れのパソコンの箱の中に隠していた。星島被告はそれを取り出し、大小2本の包丁とのこぎりを持って浴室に向かった。検察官の供述調書の読み上げは続く。
検察官「(頭を入れていた)ごみ袋も捨てれば証拠になると考え、もう一度、使おうと血を洗い流しました」「ごみ袋を開けると、ものすごいにおいがして『だいぶ腐ってきたな』と思いました。取り出した頭は血で髪の毛がベタベタしていました」「(剃った)髪の毛は10センチほどの大きさにハサミで切って、トイレに流しました」
ここで、星島被告が取り調べの際に描いた、東城さんの頭の図が大型モニターに映し出される。
検察官「切りとった皮は切り刻んでトイレに流しました。顔は見ないようにしていましたが、顔がついていると作業がしにくいので向こうをむかせた状態で耳があっても構わず、皮をはいでいきました」
生々しい供述調書の読み上げが続き、傍聴していた東城さんの遺族らが、度々顔をゆがめる場面もみられた。
星島被告は骨だけになった頭部をさらに細かくのこぎりで切ったという。
検察官「頭頂部の骨をのこぎりで横に切って、左手を入れると脳が出てきました。それ(脳)を3回か4回、すくってトイレに持っていきました」
星島被告は、さらに頭部分の骨を小さく切っていく。その処理の際は、どんな心境だったのか。
検察官「これは私が殺した人ではない、自分とは全く関係のない別のものだとして、切っていることを考えないようにしていました」
星島被告の証拠隠滅工作は続く。