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(2)「お役に立てずにすみません」東城さんの父親に白々しい芝居

星島貴徳被告に対する被告人質問を続行するかどうかについての弁護側と検察官、裁判官のやり取りが終了した後、東城瑠理香さんの腕の損壊の様子について質問が再開された。質問にボソボソと答える星島被告の様子は自暴自棄になっているように見える。

検察官「腕の付け根から解体すると手だけになりますが、手はどのように解体しましたか」

星島被告「のこぎりで指先を外して、指はトイレに流しました…」

検察官「東城さんは何かアクセサリーはつけていましたか」

星島被告「どの指か分かりませんが、平たい指輪をしていました」

検察官「指輪はどうしたのですか」

星島被告「一緒に(トイレに)流しました」

検察官「指についたまま、一緒にトイレに流したということでいいですね」

星島被告「はい」

検察官「手の甲はどうしましたか」

星島被告「のこぎりで細かくしました」

検察官「ある程度、細かくした後はどうしましたか」

星島被告「袋に入れました…」

13、14日の両日に行われた公判のときに比べ、さらに声が小さくなっている。検察官は何度も星島被告を前方に移動させ、証言台のマイクに近づける。背中もさらに丸まっている。

検察官「解体が終わると、腕はどうなりましたか」

星島被告「とても小さくなりました」

検察官「両手の手のひらにのるくらいですか」

星島被告「そのくらいだと思います」

検察官「その後、どうしたのですか」

星島被告「洗って乾かしたゴミ袋に入れました」

検察官「ゴミ袋はどうしたのですか」

星島被告「冷蔵庫に戻しました」

検察官「次の腕を取り出すときに邪魔なので、冷凍庫に入れたのではなかったですか」

星島被告「…」

検察官「2本目の腕も同じ方法で解体したのですね」

星島被告「はい」

検察官「足は左右どちらから解体したのですか」

星島被告「覚えていません」

法廷の左右の壁面に設置された大型モニターに、警察の実況見分で星島被告が足を損壊している様子を再現した写真が映し出される。浴室は人1人が入れるぐらいの広さ。星島被告は逮捕されたくないがために、この狭い空間で短時間に東城さんの遺体をバラバラにしていたとされる。

検察官「写真に映っているような姿勢で、あなたは足の解体をしたのですね」

星島被告「はい」

足の解体の様子が大型モニターに(1)〜(6)まで6つイラストで示される。星島被告が描いたものと思われ、細い線から被告の無機質な感情が伝わってくるようだ。

検察官「切断面から足に切れ込みを入れ、1周する方法で解体したのですね」

星島被告「はい」

検察官「腕と同じように切り刻んで、トイレに流したのですね」

星島被告「はい」

検察官「板のような肉は腕より厚かったのではないですか」

星島被告「はい」

検察官「どのようにトイレに流したのですか」

星島被告「いろいろ角度を変えて切り刻みました」

検察官「角度を変えるために斜めにつぶしたりしたのですね」

星島被告「はい」

検察官「足の関節は2つにちぎれましたか」

星島被告「ちぎれませんでした」

検察官「分離できないままポリ袋に入れたのですね」

星島被告「はい」

検察官「最終的にはどうしましたか」

星島被告「ゆでて…。はずれて…。ゴミ捨て場に捨てました…」

検察官「ひざのお皿の骨はどうしましたか」

星島被告「トイレに流しました」

検察官「足の甲は」

星島被告「のこぎりで切って、袋に戻しました」

検察官「甲はいくつくらいに分かれましたか」

星島被告「4つぐらい…」

検察官「足を解体した1本分は、腕1本に比べてどうでしたか」

星島被告「腕よりも多い…」

検察官「(腕の)2本目も同じ方法で解体したのですか」

星島被告「はい」

検察官「解体を終えると、その日はその次に何をしましたか」

星島被告「隠していた服をハサミで切り刻んで、トイレに流しました」

星島被告は東城さんを包丁で殺害後、ハサミで衣服をはぎ取っていた。

検察官「東城さんの服やカード類をトイレに流したということでいいですか」

星島被告「はい」

星島被告が浴室で衣類を切り刻んでいる様子を再現した写真が、大型モニターに映し出された。

検察官「トイレに流す作業は1日で終わりましたか」

星島被告「いいえ」

検察官「同じような作業を何日か続けたのですね」

星島被告「はい」

検察官「日付が変わって(平成20年)4月20日の何時頃までこういった作業をしていたのですか」

星島被告「5時ぐらいまでです」

検察官「午後5時ぐらいまで、こうした作業をしていたということでいいですね」

検察官「はい」

検察官の質問は、犯行2日後の星島被告の行動に移る。

検察官「4月20日のことについて聞きます。この日、勤めは休みでしたね」

星島被告「はい」

検察官「何時に起きたのですか」

星島被告「4時ぐらい…」

検察官「近くのコンビニかスーパーに買い物に行きましたか」

星島被告「はい」

検察官「食べ物を買いにいったのですか」

星島被告「だと思います…」

検察官「そのとき、エレベーターで誰かに会いましたか」

星島被告「瑠理香さんのお父さんです」

検察官「その時点で瑠理香さんのお父さんと分かっていましたか」

星島被告「いいえ」

検察官「その男の人はどこから来たのですか」

星島被告「1階の入り口…」

検察官「あなたは彼に自分から何か話しかけましたか」

星島被告「はい」

検察官「何と話しかけたのですか」

星島被告「『大変なことになりましたね、どちらの部屋の方ですか』と、しらじらしく芝居をして話しかけたと思います…」

検察官「東城さんのお父さんは何といいましたか」

星島被告「『当事者の父親です』とおっしゃいました」

星島被告はなぜか東城さんの父親に対して、敬語を使った。

検察官「男の人の言葉を聞いて、どう思いましたか」

星島被告「何も考えつかず、真っ白になりました。会話が続かないと疑われると思い、『918号室に住んでいます。お役に立てずにすみません』と、取り繕ったと思います」

検察官「お父さんは何と言いましたか」

星島被告「『そういうマンションだと思って契約したので気にしないで下さい』と言いました」

検察官「そういうマンションとは」

星島被告「一人暮らしが多くて、周りに関心がなく、誰がどうしているかも分からないマンション…。そういう意味だと思います」

検察官「お父さんをどういう人だと思いましたか」

星島被告「やさしい人だと思いました」

検察官「あなたはその時、どう思ったのですか」

星島被告「少し申し訳ないと思いました。殺してしまって、絶対に捕まりたくなくて、早く逃げ出したくて仕方ありませんでした…」

検察官「少し謝りたいと思ったんですか」

星島被告「少しだけだと思います! 逃げたかっただけだと思います。自首もしませんでしたし、逮捕されてからもずっとごまかしていたし…」

これまでのボソボソとした声から一転。急に大きな声を出した星島被告。検察官の質問は再び、遺体の損壊作業に移る。

⇒(3)「生きていれば子供も…」一度だけ硬直した瞬間