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(11)女性を「飼育」する映画がきっかけ?

午後3時10分、法廷が再開した。刑務官に付き添われて入廷した星島貴徳被告は青白い顔色で、疲れた様子だ。証言台へ向かう足取りもおぼつかない。

裁判長が「裁判所からの補充質問でいくつかうかがいます」と前置きした。まず質問をしたのは、傍聴席から向かって右に座る左陪審の女性裁判官だ。

裁判官「東城瑠理香さんの携帯電話に、東城さんの名前を書いた紙と顔写真を貼っていたのはなぜですか」

携帯電話の裏からは、東城さんの住民票の紙片と、証明写真が見つかっている。

星島被告「分かりません。何かに使えるかと思ったからかもしれません。覚えていません」

今度は向かって左の右陪審の男性裁判官が質問を続ける。

裁判官「当初の計画では、月曜日になったら被害者をどうするつもりでしたか」

星島被告「女性が言うことを聞く状態になっているから、元に戻します」

裁判官「もし性奴隷にならなかったら、どうするつもりでしたか」

星島被告「分かりませんが…。女性が(言うことを聞くようになったと)芝居を打つ可能性もあったかもしれません」

裁判官「深く考えていなかったということですか」

星島被告「はい」

裁判官「裏返せば、性奴隷にできるという確信があったということですか」

星島被告「…勝手な思いこみです。裏付けもありません」

裁判官「被害者が声を出したり、抵抗されるとは思っていなかったのですか」

星島被告「はい」

裁判官「あなたはソフトウエアのプログラマーをされていますね。プログラマーというのは、いろんな事態を想定する仕事だと思いますが」

星島被告「頭がおかしくなって、そこまで気が回っていないのです。そもそも、理性的なことを考える頭では、こんな犯行は考えません」

事件当時、自分は「頭がおかしかった」と言い切った。

裁判官「2つ隣の部屋の人を連れ込めば、あなたが疑われるとは思いませんでしたか」

星島被告「思いませんでした」

裁判官「手足を縛ったり目隠しをしたりしていますが、これはいつ外すつもりでしたか」

星島被告「分かりません。縛ることも目隠しすることも、その場で思いついたので…」

裁判官「被害者を刺すとき、ためらう気持ちはありましたか」

星島被告「なかったと思います。自分が助かるために、バラバラにして殺そうと思いました」

裁判官「遺体を解体するときにためらう気持ちはありましたか」

星島被告「全くないとは言えませんが…。自分が逃げたいという気持ちの方が強かったです」

裁判官「(東城さん宅の)916号室の電気メーターはいつごろからチェックしていましたか」

星島被告「1週間くらい前からです」

裁判官「他の部屋のメーターも見ていたのですか」

星島被告「はい。入居した人がいるかいないか…」

裁判官は、星島被告の私生活についても尋ねた。

裁判官「今のソフトウエアプログラマーの仕事には、やりがいを感じていたのですか」

数秒の沈黙の後、星島被告は「ないと思います」と答えた。

裁判官「ではなぜ、その仕事を続けていたのですか」

星島被告「給与の関係だと思います」

裁判官「他に日々の生活で、充実感を感じていたことはありますか」

星島被告「ありませんでした」

裁判官「弟さんや妹さんには、どのような感情を持っていますか」

星島被告「特にありません」

最後に、裁判長が質問に立った。争点の一つでもある計画性についてだ。

裁判長「本件に限らず、女性を連れ去って性奴隷にしようと考えたのは、いつごろからですか」

星島被告「分かりません。どこかでそういう征服欲があったのかもしれませんが、具体的に計画をしたのは1週間前です。仕事のストレス、孤独感から…」

語尾がよく聞き取れない。

裁判長「性奴隷とか、セックスで調教するというのはどこから思いついたのですか」

星島被告「分かりませんが…。自分なりのきっかけというか覚えているのは映画で、竹中直人出演の『飼育』という映画が記憶に残っています」

俳優・竹中直人さんの出演作「完全なる飼育」のことを指すのだろうか。この作品は実在の事件をモチーフにしたシリーズ映画で、監禁シーンなども登場する。

裁判長「それはいつごろ見たのですか」

星島被告「きちんと見ていません。あらすじだけ、映画紹介のテレビで見ました」

裁判長「本件の直前というわけではないのですか」

星島被告「はい」

裁判長「今回の計画で、916号室以外の女性に対して考えたことはあるのですか」

星島被告「分かりません」

裁判長「分からないとはどういうことですか」

星島被告「現実に考えたか、空想上で考えたか…。その両方が含まれるのか…」

裁判長「現実に実行に移そうとしたことはない、ということですか」

星島被告「もちろん」

「もちろん」という言葉の真意は計りかねるが、星島被告はきっぱりと言い切った。

裁判長「『金曜日に拉致すれば、月曜日までに女性を性奴隷にすることができる』ということを考えたのはいつからですか」

星島被告「1週間前です」

裁判長「どうやって脅すつもりだったのですか」

星島被告「しっかりとは考えていませんでした」

裁判長「しかし、脅すという行為は(犯行の)最初に来るものですよね」

星島被告「大きな声で脅すとか、その程度しか考えていませんでした」

ここで裁判長は、話題を家族のことに変えた。

裁判長「両親への憎しみは今もありますか」

星島被告「消してはいないと思います。どうしても、わだかまりが残ってしまいます」

裁判長「逮捕されて変わったことはありますか」

星島被告「…はい。やけどに対する恨みはなくなったと思います。10年以上音信不通だった両親との関係は…。もう少しなんとかできたのではないかと…。そう思えます」

うつむきがちに質問に答える星島被告の横顔は無表情なままだが、後悔の言葉のようにも聞こえた。

⇒(12)「自分は特別」…生活や体面を失うこと恐れた