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論告要旨(3)咲被告「申し訳ない気持ち100%ではない」

 4 遺族の処罰感情は峻烈である

 被害者の実母は本件時までに、夫や長男を病気や事故で亡くしていたところ、それに落胆する自分を励ましてくれていた被害者のことを深く愛し、被害者との生活を生きがいにしていたものである。

 ところが実母は本件犯行日、帰宅した際、血まみれで、あまりに無惨な被害者の遺体を発見しているのであり、その際に受けたショックや悲しみ、被害者を失ったことでの落胆は計り知れない。

 実母は

「亡くなった絵里子は、私にとっては生きがいそのものでした。絵里子と過ごす時間が私には本当に幸せだったのです」

 「身近な人の死を経験してきた私にとって、家族は本当に大切な存在であり、特に私の傍らにいてくれた絵里子は、私にとってはかけがいのない存在だったのです」

 「絵里子の遺体を見たときのショックの大きさは表現しようがありません。絵里子は見るに堪えない、あまりに無惨な姿になっていました。本当にかわいそうな姿でした」

 「絵里子は福祉の仕事をすることに張り切っていて、資格をとるために頑張っていました。24歳という若さでしたので、これからが人生の楽しい時期だったと思います」

 「事件から1カ月ほど経ちましたが、いまだに絵里子が死んでしまったことでのショックや悲しみから立ち直ることができません。事件後、1人で車を運転している際に、涙があふれてきて、運転ができなくなってしまうことがよくあります」

 「私は絵里子という生きがいを完全に失ってしまい、事件後、生きているのが嫌になって、自殺しようと何度も真剣に考えたこともあります。それでも私が死ねば、孫の世話をする者がいなくなってしまうという気持ちが、自殺することを思いとどまらせています」

 などと述べ、被害者を失った悲痛な心境を吐露している。

 被害者の実母が、現時点でも、被害者を失ったことで深く悲しみ、その状況から立ち直れないでいることは、公判廷で意見陳述した際の実母の態度やその内容からも明らかである。

 そして被害者の実母は、愛する娘の命を奪った被告人に対して、「人をあれだけ無惨な姿になるまで傷つけ、しかもその後何事もなかったように平然とした態度をとっていた咲には、人の心が一切感じられません。咲にいちばん言いたいことは、『咲を返して』ということです。正直な気持ちを言えば、絵里子の命を奪ってあれほど無惨な姿にした咲を、同じように殺してやりたいです。本当に咲のことが憎いです」と述べ、被告人に対するできる限りの厳罰を強く望んでいる。

 このように、被害者の実母は、被害者を殺害されたことにより、多大な精神的苦痛を受けているが、被告人はかつて親族関係にあったとはいえ、いまだ慰謝の措置を講ずることを一切しておらず、遺族の処罰感情が現時点でも峻烈であるのはむしろ当然であり、この遺族の処罰感情は量刑上当然に重視されるべきである。

 5 犯行後に罪障隠滅工作に及んでおり、その点も犯情悪質である

 被告人は本件犯行後、被害者の返り血が付いた着衣や凶器の金づち等を廃棄して証拠隠滅したうえ、被害者の実母や夫、友人らに、自分が本件犯行とは無関係であるかのように装っていたもので、さらに上記のとおり、警察からの呼び出し時においても、自己の犯行を否認し、アリバイの主張などをしていたものであり、それらの行為からすれば、被告人から被害者殺害についての後悔の情を感じ取ることはできないのであって、その点からしても、犯情極めて悪質である。

 6 被告人からは被害者及び遺族に対する真摯な謝罪意思がうかがえない

 被告人は公判廷において、被害者や遺族に対する反省の弁を述べているが、上記のとおり、本件犯行後、自分が犯行とは無関係であるかのように装っていたうえ、捜査段階においては「被害者に申し訳ないという気持ちが100パーセントあるわけではなく、殺したことでほっとしている自分もいる」等と述べており、また被害者の実母に対してもいまだに慰謝の措置を講じていない。

 被告人の謝罪意思の程度を計ることは容易ではないが、謝罪というのは何よりも、被害者や遺族がどのように思うかということに配慮し、可能な限り誠心誠意、謝罪の心を伝えようという気持ちが大事なのであり、現時点において被告人は、遺族に対して十分な謝罪意思を伝えているとは言い難い。

 7 結語

 これまで述べてきたとおり、本件においては、被告人について、被害者を殺害するという最悪の手段以外に、他に方法はとり得たと考えられるうえ、被害者には殺害されるような落ち度は認められず、被告人が短絡的に、何よりも大切な人命を奪うという取り返しのつかない重大な結果を引き起こしていること、犯行が計画的であるうえ、その態様は執拗で、冷酷かつ残虐きわまりないこと、遺族の処罰感情が厳しく、遺族に対する真摯な慰謝の措置がないこと、犯行後も罪障隠滅工作を行うなど犯情が悪質であること等の事情にかんがみれば、被告人に対しては、自己が侵した行為について真摯に反省・悔悟させて、人命の大切さを十分に理解させ、その凶行に見合った刑事責任をとらせることが絶対に必要である。

 そのため被告人に対しては、長期間、矯正施設に収容して、矯正教育を施すことが絶対に必要である。

第3 (略)

⇒最終弁論(1)「迫害は真実。邪推でない」