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論告要旨(2)逃げまどう義妹に執ように攻撃

 第2 情状関係

 1 犯行動機は短絡的なものであり、犯行に至る経緯を考慮しても、被告人に有利に酌量すべき事情とはいえない。

 本件は、被告人が夫の妹である被害者と同居し、また、同じ職場で働く中で、被害者との間で生じたいさかい、被害者の私物が紛失したことについて被告人がその犯人であるかのような言動をされたことや、被害者が自己の娘に暴力を振るったと思いこんだことなどにより、怒りや憎しみの感情を募らせ、その感情から殺害を計画して、犯行日に被害者方に行き、持っていた金づちで頭部などを殴打した上、包丁でその頭部を刺すなどして殺害したという事案である。

 本件の経緯につき、弁護人は冒頭陳述で、被害者の私物が紛失したことが自作自演であったかのような主張や、被害者が被告人の娘に暴力を振るったように主張し、被告人が本件を敢行した動機について、被害者にも落ち度があり、被告人に斟酌(しんしゃく)すべき事情があると主張するが、被告人自身、公判廷で述べているとおり、被告人が上記の出来事が被害者によるものと考えた根拠については、直接の客観証拠はなく、被告人の想像に過ぎないものであって、上記の事情を被告人に有利に酌量することは認められない。

 被告人が「同年7月、被害者から『お前の一番大切な物を奪ってやる』などの言葉を言われた」と供述していることについても、被害者が亡くなっているため、本当にそのような文言を言われたかは被告人供述以外に客観証拠が存在しない上、仮に被害者がそのような文言を言ったことがあったとしても、同時期に被害者と被告人が別居して以降、被害者が被告人やその娘に対して何らかの接触を図ってきたということは全くないのであるから、この点についても、被告人に有利に斟酌する事情とはならない。

 むしろ、被告人は、被害者と同居していた平成19年4月の時点で、被害者に対する嫌がらせの気持ちから、現に、被害者の車両に傷を付ける行為をしている。その後、同年4月下旬から5月に起きた職場での被害者の私物紛失について、仮に、被害者が被告人をその犯人と疑うような言動をしていたとしても、そのことで被害者が非難されるべきことではない。

 そして、被告人は友人へ送っているメールなどの内容から明らかなとおり、友人に自己のことを心配してほしいとの気持ちから、被害者とのいさかいについて事実よりも大げさな内容や虚偽を伝えるなどしているのであり、また、被告人自身、被害者の車両を2度傷つける行為をしながら、自己の行為とは認めず、起訴直前まで、それを被害者の自作自演であるように供述していたのであるから、被告人が供述する、被害者からされたという他の「嫌がらせ」についても、そのままそれを信用することはできない。

 確かに、被告人が、義妹と不仲であって、被告人がそのことにストレスを感じていたこと自体は理解できるが、義理の姉妹らとの間で不仲というものは、世間一般にあることであって、被害者側に、被告人によって殺害されなければならないような落ち度というものはまったく認められず、また、被告人の方に、被害者殺害という最悪な結果を避けるために、被害者との関係についての問題の解決や改善のために何らかの努力をした事実は一切認められない。

 被告人は、被害者との関係についての問題の解決や改善のために努力などをすることなく、被害者に対する憎しみの感情から、短絡的にも、絶対に許されるべきでない最悪の選択をして、何よりも尊い人命を奪ったものであり、本件犯行動機や犯行に至る経緯などについて、被告人を有利に酌量することは妥当ではない。

 2 本件は計画的犯行である上、その犯行態様は執ようかつ残虐極まりないものであり、被告人が強固な確定的殺意に基づいて犯行に及んでいることは明らかである。

 被告人は、19年10月下旬ころに被害者の殺害を計画するようになってから、被害者殺害のための凶器として金づちを購入し、その金づちで被害者を殺害しきれない場合に備えて首を絞めるためのひもまで準備しており、また、自己の犯行と発覚しないようにするため、犯行後の行動を書いたメモを作成したり、犯行現場に指紋が付くのを防ぐため軍手を購入するなどし、さらに、犯行時には、自分にアリバイがあるとの主張をするため、あらかじめ犯行現場から離れた場所にあるスーパーで買い物をした上、犯行直後に、夫に対して同店に買い物をして帰る内容のメールを送り、帰宅時に、夫に同店のポリ袋を示すなどの偽装工作を行っており、極めて計画的に犯行を遂行している。

 犯行時には、あらかじめ準備していた、重量約392グラムの金属製の金づちで被害者の頭部を20回以上にわたって強打し、その上、床上に引き倒した被害者の頭部をひもで強く絞め、さらにとどめを刺すため、台所にあった包丁を取り出し、その包丁で被害者の頭部を7回ほど繰り返し刺して、絶命させるに至っており、被告人が極めて強固な確定的殺意に基づいて犯行に及んだことは明らかである。

 犯行の際、被害者は何とか生き延びようとして、被告人の攻撃を避けるために逃げまどい、それでも執ように攻撃してくる被告人によって繰り返し殴打、刺されているのであり、その状況が極めて凄惨(せいさん)だったことは、犯行現場である被害者方玄関から居間入り口の廊下までの、さらに廊下と接している居間や風呂場などに飛散している血痕の状況、被害者の遺体の損傷状況からも明らかであるが、その間、被告人は、自己の犯行発覚を防ぐために、玄関ドアの内鍵を閉めたり、包丁の柄に指紋が付かないようにするため、包丁の柄に布を巻くなどの行為に及び、極めて冷静に犯行を遂行しているのであって、そこには人としての情の片鱗(へんりん)も感じることができない。

 このように、本件は計画的犯行である上、その犯行態様は、極めて冷酷、執よう、かつ残虐というほかなく、悪質極まりない。

 3 被害者の貴重な生命を奪ったものであり、被害結果が極めて重大であることは当然のことである。

 被害者は24歳という若年であり、老人介護施設でのデイケアサービスを受けに訪れる高齢者の食事や入浴の介助などをする仕事を担当していたものだが、その働きぶりは非常に熱心で、施設を利用する高齢者にも喜ばれていた。また、ヘルパー2級の資格をとるために講習に参加するなど、日々勉強していたもので、好きな介護の仕事をしていこうと、将来に大きな希望を抱いていた。

 被害者は家庭においても、愛する実母と同居して、日々朝食や夕食をとともにし、休日には一緒に旅行に行くなどして、充実した生活を送っていた。被害者は、そのような充実した生活を送る中、まったく予期することができなかった被告人の凶行により、わずか24年間しか生きることができず、突如、その命が奪われたものである。

 被害者の遺体のあまりに無残な状況や犯行現場のおびただしい血痕の状況などからすれば、本件時に被害者が受けた苦痛や、多量の出血を自覚し、逃げ場もなく、ただひたすらに被告人から逃げまどっていた被害者の恐怖心が想像を絶する甚大なものであったことは明らかであり、愛する実母や輝かしい将来を持ちながら、この世を去らなければならなかった被害者の無念の思いは察するに余りある。

⇒論告要旨(3)咲被告「申し訳ない気持ち100%ではない」