(9)「ピンクのひもだと分かっちゃう」
弁護側の質問が終わり、検察側が立ち上がって質問を始める。
検察官「絵里子さんの車に傷を付けたのはいつ?」
咲被告「(昨年)4月ごろ、8月ごろ」
検察官「同居と別居を始めたころだね」
咲被告「はい」
検察官「殺害を考えていたのは平成19年10月終わりごろでいいのか?」
咲被告「はい」
検察側の質問が事件の核心に近づいてゆき、咲被告は証言台で体を小刻みに揺らす。
検察官「殺害を計画し、○○(ホームセンター)に凶器を探しに行ったか?」
咲被告「はい」
検察官「軍手をなぜ買ったのか?」
咲被告「滑らないように。指紋がつかないように…」
検察官「もうちょっと大きな声で。黒い軍手を購入しているが、黒をなぜ選んだのか?」
咲被告「血が付いても分からないようにするために」
検察官「首を絞めようと考え、職場のひもを使ったが、当初は家にあったひもを使おうと思ったのでは?」
咲被告は沈黙し、体の揺れがやや激しくなる。検察側は、質問をたたみかけ、追及の手を緩めない。犯行の計画性をあぶり出そうとしているようだ。
検察官「捜査段階ではそのような話をしているが?」
咲被告「はい」
検察官「(家のひもを使うことを)考えたけどやめた?」
咲被告「はい」
検察官「なぜやめた?」
咲被告「ひもの色がピンクで…、珍しいひもだったのでやめた」
検察官「どうして珍しいから止めたのか? 困ると思ったのか?」
咲被告「(10秒近い沈黙の後)すぐに(自分が)犯人だと分かってしまうから」
検察側はさらに計画性を立証するために、咲被告が犯行前、証拠隠滅に関する計画を練っていたことを指摘する。
検察官「殺害した後の行動について考えていたよね?」
咲被告「はい。主人の母の携帯にメールして…(聞き取れず)」
検察官「被害者の携帯から被害者の母親の携帯にメールして、友達の家に行っていることにしようとした?」
咲被告「はい。自分が犯人じゃないと思ってもらえると考えた」
検察官「友達が怪しいと思われるようにしたのか?」
咲被告「はい」
検察官「証拠隠滅を計画したメモを作ったか?」
咲被告「はい」
検察側は証言台に座る咲被告のもとにメモを持って行き、示しながら質問を続ける。
検察官「星のマークがあるが、被害者を意味するのか?」
咲被告「はい」
検察官「被害者を殺害した後、車の助手席に乗せると書いてある。さらに『母にメール。友達のところに泊まる』とあり…」
検察側はさらに質問を続けようとするが、予定時間が終了。裁判長は3月4日午後1時から第2回公判を行うことを告げ、閉廷した。