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(17)「どうして家を出なかった?」裁判長は疑問を口に

右陪席の裁判官は、バラバラにした遺体の捨て方の違いに関する疑問をぶつける。

裁判官「頭部は(発見されたときの)衝撃を勘案して埋めたというのに、なぜ上半身と下半身は埋めなかった?」

歌織被告「とにかく大きいし、一刻も早く目の前から、申し訳ないけど、どこでもいいから出したかった。具体的にどうしようとか決めないまま、下半身を台車に乗せてマンションから出た感じ。上半身も、キャリーケースに入れてタクシーに乗ったが、行く場所すら決めていなかったので、運転手に指示も出せなくて…」

裁判官「祐輔さんの口座はあなたが管理していた?」

歌織被告「はい」

裁判官「祐輔さんの小遣いはあなたから渡す?」

歌織被告「基本的には」

裁判官「祐輔さんは繰り返し(カードなどを)探していたというが?」

歌織被告「基本的には彼の通帳や口座のカード、印鑑は家の決められた場所にあったので彼も引き出せる」

裁判官「今の話からは、口座の管理でけんかをしたということが理解できない」

歌織被告「管理でけんかしたわけではなく、サラリーマンなので、1カ月に使えるお金が決まっている。やり繰りのことで、これぐらいの金額でやってもらわないとできないということで口論になった」

裁判官「18年に入り、あなたからの平手打ちなどの暴力は何回あった?」

歌織被告「覚えているのは、□□さん(祐輔さんの元同僚の女性)が来たとき」

裁判官「ほかには?」

歌織被告「彼が私の上に乗ってきて、払いのけたことはある」

左右陪席の裁判官の質問が終わった。最後は河本雅也裁判長だ。

裁判長「(事件後約1カ月たった)19年1月10日、祐輔さんの会社にボーナスが振り込まれるかを確認した?」

歌織被告「はい」

裁判長「ボーナスはリフォーム代以上と言っていたね?」

歌織被告「はい」

裁判長「リフォーム代はいくらだった?」

歌織被告「全部で…30万円以上はかかったと思う」

裁判長「祐輔さんのボーナスはいくら出ると想像していた?」

歌織被告「彼の話では、『前年のボーナスの倍ぐらいはもらえる』と」

金額を言いたくないのか、歌織被告はなぜか遠まわしに答える。

裁判長「具体的には?」

歌織被告「前の年は税金とか引かれ140万円ぐらい。その倍とみても200万円以上」

裁判長「250万から300万円と予測できた?」

歌織被告「はい」

裁判長「遺体を切断し、捨てた理由は『目の前から消したかった』と言ったが、あなたから家を出ることは考えなかったのか?」

歌織被告「どこに、というのが思い浮かばなかったし…」

裁判長「数日ホテルに行くとか、友人とか」

歌織被告「犬がいるので考えなかった」

裁判長「遺体をバラバラにするぐらいなら、去ったほうがいいと思うのが普通では?」

歌織被告「申し訳ないと…」

明確な返答ができない歌織被告に、裁判長は穏やかな口調ながらも矢継ぎ早にたたみかける。

裁判長「どうして出ようとしなかった?」

歌織被告「…」

裁判長「思いつかない?」

歌織被告「…」

裁判長「事件当日のことを聞く。祐輔さんは午前4時に帰ってきて寝てしまった。殴るまで時間があるが、どんなことを考えていた?」

検察側の冒頭陳述では犯行時間は午前6時ごろとなっている。

歌織被告「…考えるというより、今までの生活が自然に自分の中で浮かんできてしまった」

裁判長「どんなこと?」

歌織被告は泣き出した。何度もハンカチで目をぬぐう。

歌織被告「思い出したくないことばかり。今まで自分で無意識に思い出さないようにしてきたことが、いろいろ出てくるというか…」

裁判長「暴行や暴言か?」

歌織被告「はい。そういうこと」

裁判長「ワインボトルを振り下ろしたときの感情は重要だと思う。出廷した○○証人(実名、歌織被告の友人女性)は犯行直前、あなたが怒っているように見えたらしい。帰ってくるまで長時間待ち、帰ってからも待った。どんな感情で過ごしたのか?」

法廷全体の視線が、一層激しく泣いている歌織被告に向く。

歌織被告「とにかく怖くて…部屋から真っ暗な代々木公園を見ていて、本当にこの世界に自分しかいないんじゃないかと。怖くて仕方なくて…」

裁判長「怖くて仕方ない気持ちが、ワインボトル(殺害)につながっていない。なぜそうなった?」

歌織被告「つながっていないかも知れないが、生活を終わらせたい、逃げたいと…」

最後に、と前置きした上で、裁判長が再び歌織被告に犯行時の心境を尋ねる。

裁判長「この生活を終わらせたいのなら自分が家から出ればいい。どうしてその選択肢を取れなかったの? 実際にアルバイト探しや家探しをしていたんでしょ?」

裁判長の質問には、事件後でなく、事件を起こす前にやり直せたというニュアンスが含まれている。歌織被告は小さく首を左右に振り、左手で鼻をぬぐった。

裁判長「あなたには、裁判の最後で、もう一度話す機会がある。そのときまでに心境を思い出しておいてください」

歌織被告に声をかけた後、裁判長は事実関係を2、3点確認する。

裁判長「犯行前に、最後に暴行を受けたのはいつ?」

歌織被告「(平成18年)12月7日か8日」

裁判長「犯行前に祐輔さんから離婚を切り出されたことはあったか?」

歌織被告「口論になると彼はいつも言う」

裁判長「まじめに離婚を切り出されたことは?」

歌織被告「口論とかでなければない」

裁判長は弁護側、検察側の双方を見て、「いいですね」と声をかけ、午後4時3分、被告人質問が終わった。証言台を立って被告人席に戻った歌織被告の顔は真っ赤だ。席に座るとハンカチで口元を覆い、傍聴席とは逆の右斜め前に顔を向けて目を伏せた。

検察側は、次回の第8回公判で取り調べ時の任意性について証言する予定だった警察官の証人申請を撤回。このため、18日の公判期日は取り消しとなった。次回は20日午後1時半から、鑑定人2人が犯行時の歌織被告の精神状態などについて証言する予定だ。

⇒第8回公判