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(6)「血を流す裸の美人はフィギュアのよう」歌織被告の幻覚が詳細に

歌織被告の犯行後の行動について、金吉晴鑑定人に対する検察官の質問が続く。

検察官「犯行前後のことを聞く。祐輔さんを殺した後の遺体の処理は、歌織被告が何をしたら合理的か判断してやったことではないのか?」

金鑑定人「その通り」

検察官「われわれが社会の中で行動を起こすときには、ルールや規範に縛られるが、歌織被告が(遺体の処理のために)やったことは、善しあしを判断したのでは?」

金鑑定人「そのように思う」

検察官「責任能力は判断能力だけという人もいるが、知っているか?」

金鑑定人「はい。しかし私が説明すると長くなるが」

検察官「私が述べるから、間違っていたら言ってほしい。行為制御能力は…」

ここで弁護人が『一般論についての議論をすべきでない』と異議を申し立てた。裁判長も検察官の質問意図を理解しかねたようで、「責任能力とか、行動制御能力とか、次の質問に本当に関係あるのか」と念押しする。

検察官「特に制御能力は(検察側申請の金鑑定人が診断した)短期精神病性障害と関係がある。これに絡む身体の原因は今のところ見つかっていないのか?」

金鑑定人「はい」

検察官「あなたは完全責任能力と心神耗弱の境界線をどう考える?」

金鑑定人「簡単には言えない。ケース・バイ・ケースだ。これまでそんな議論はしたことがない」

検察官「2月20日に行った鑑定の中身を(弁護側請求の)木村鑑定人に渡した?」

金鑑定人「はい」

ここで金鑑定人に対する検察側の質問は終了、金鑑定人は退廷した。続いて弁護側が申請した木村一優鑑定人が資料を抱えて入廷し、証言台のイスに座った。

検察官「2月20日、金鑑定人と一緒に歌織被告と犯行時の精神状態を聞き出したということだが、(そのときに)大半を聞き出したということでいい?」

木村鑑定人「大半…ですか?」

検察官「では、2月20日以前にあなたが歌織被告と面談したのは19年9月11日、9月28日、10月5日、12月26日、20年1月8日、1月9日、1月29日、2月6日、2月13日の9日でいい?」

木村鑑定人「はい」

検察官「(18年12月に住んでいたマンションの部屋に飾っていた)クリスマスツリーが大きく見えたという幻視以外に、(歌織被告から)何を聞いた?」

木村鑑定人「当初、PTSDを疑っており、これを聞き出そうとしたが、もう1つ、代々木公園の所見が出た」

検察官「公園が不気味に見えた、との?」

木村鑑定人「いや、代々木公園が真っ暗に見えたと言っていた」

検察官「2月20日以前(に聞いた幻視の話)はクリスマスツリーと代々木公園のことぐらいか?」

木村鑑定人「祐輔さんが読んでいて、歌織被告が嫌いだったという男性雑誌」

検察官「そのほかには?」

木村鑑定人「裸の女性の話。フィギュアみたいで、とてもきれいな女性が血を流していた、との」

検察官「そのほかには?」

木村鑑定人「風船の中にいるみたいだとか…」

検察官「それくらい?」

木村鑑定人「今思いつくのは」

検察官「フィギュアみたいというが、裸の女性は小さいのか?」

木村鑑定人「大きさは人間くらい。歌織被告は『スタイルがよくて、きれい過ぎる東洋人か、アジア人の雰囲気』と言っていたが、例えて言えばフィギュアみたいな感じ、ということ」

歌織被告は特に表情を変えずにやりとりを聞いていた。

⇒(7)歌織被告は殺害後「笑っていた」 鑑定人のあいまい証言に裁判長は…