(4)殺害後の歌織被告は「穏やかな感情
検察側が請求した鑑定人、金吉晴氏への尋問が続く。犯行時に起きていた歌織被告の『情動反応』について、検察官が詳しく聞く。まずは情動反応の定義についてだ。
検察官「情動反応というのは?」
金鑑定人「通常ではわかない強い感情が突発的に出てくるもの」
検察官「反応は殺害後にも持続するのか」
金鑑定人「犯行後に多幸感、不安感が…」
検察官「被告は犯行前後にこういう状態が続いたと?」
金鑑定人「(殺害した)あのときは祐輔さんと(結婚生活の間で起きていた)トラブルがあったときにはなかったような…ご遺族の方には大変申し訳ないが、(多幸感に満ちた)穏やかな感情だったと」
検察官「それは祐輔さんが帰宅してから殺害するまでの間続いたのか」
金鑑定人「はい」
検察官は、鑑定人が2月20日に鑑定したときに録音した内容の文書を示し、質問を続ける。
検察官「被告は殺害時の状況について、『(クリスマスの)ツリーがなんで見えるのだろうと思った。(凶器のワインボトルの)瓶がとにかく重くて疲れた。(犯行の瞬間は)ウワーッという感じではなかった』と言っているが、(犯行時は)激しい感情の高ぶりがあったということではないのか?」
金鑑定人「そういう気持ちは、この日はずっと続いていた」
検察官「2月20日と2月27日の鑑定の内容では、そういったくだりは出てこないが?」
金鑑定人「1月の当初の鑑定で聞いたときは、ものすごい感情がこみ上げてきたというだけで、はっきり言ってはいなかった。だが、強い情動があったことはあった」
検察官「(凶器の)ワインボトルの封は開いていなかったと言っていたか?」
金鑑定人「(自分は)覚えていない」
検察官「どのくらいの時間(ワインボトルを)担いでいたと」
金鑑定人「推測として『5分から10分ぐらい』としていたが、『わからない』と言っていた」
検察官「1発目の殴打をして祐輔さんが『なんで』と言い、出血しているのが見えたので恐怖感から2発目を殴ったということだが?」
金鑑定人「概略ではそういうことだと」
検察官「これも情動反応なのか」
金鑑定人「再び強く感じたのだろう」
検察官「情動反応があるのに恐怖感も出るのか?」
金鑑定人「情動と判断は違う。判断できなくなるほどの情動が出る人もいるが、判断できる程度のものもある」
引き続き検察官は、幻視について金鑑定人に尋問する。
検察官「幻視は殴打の最中も見ていたのか」
金鑑定人「概略では」
検察官「被告はツリーと女性の姿が見えた場所について、『場所というか自分の中というか…ただそれが見えた』と言っていたか?」
金鑑定人「おおむね」
検察官「2月20日と2月27日ともに、全く幻視は見えないと話していたのか」
金鑑定人「そうです」
検察官「27日の鑑定の後に幻視が見えたと言い出したのか?」
金鑑定人「血を流している女性が出てくるときには、祐輔さんが見えて女性に覆いかぶさる感じ。次々切り替わる幻視もあった」