第35回公判(2012.3.13) 【最終弁論】

 

(11)「学んだことかみしめ生き直す。ただし、殺害していません。以上です」 涙声で最後に語った木嶋被告

木嶋被告

 首都圏の連続不審死事件で殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判(大熊一之裁判長)は、弁護側による最終弁論が続けられている。弁護側は、裁判員に対し、協議に当たっての考え方を訴えている。

 睡眠薬を使った似た手口の殺人事件。前日の検察側による論告求刑では、いずれの事件も関係づけて考えることができる「特殊なケース」だと説明された。

弁護人「3件も似た事件があって、不自然と感じるのは一般的な感覚です。しかし、有罪か無罪かについては、一つ一つの事件ごと、事件ごとに判断されなければならない」

 弁護側は傷害事件を例に挙げ、訴えかける。

弁護人「過去に傷害事件を起こした人物がいて、また事件を起こしたとされた場合、『またやったのか』という感覚を持つのは当然です」

「しかし、過去にやったからといって、今回の事件についても有罪、無罪の判断をする材料にはならない。わが国の裁判所が積み重ねてきた考え方として、そういうことを考えないのがルールなのです。それに例外があるというのが、昨日の検察官の主張です」

 弁護側は、「例外」となるケースとして、平成10年の和歌山のカレー毒殺事件を例に挙げ、説明する。

弁護人「あの事件ではヒ素という極めて特殊で一般的に入手が難しい毒物が使用されたことが決め手となり、特殊なケースと判断された」

「しかし、今回のように睡眠薬は年間5億錠くらい販売されている。一般的に入手が困難とは言えない。例外的なケースとは言えない」

 弁護人は「最後に」として、裁判員にこう語りかけた。

弁護人「被告人を犯人だとするとさまざまな事柄が説明できるというだけで、犯人とはできない。木嶋さんは3つの殺人について無罪です」

 長い最終弁論を締めくくった。最後に、木嶋被告が法廷で事件を語る。

 大熊裁判長が木嶋被告を証言台へ向かうように促した。

裁判長「長い期間に渡った審理も本日で終了します。最後に何か述べておきたいことはありますか」

 数秒間の沈黙が流れる。傍聴席は固唾をのんで見守っている。

被告「今回の裁判にあたり…。今までの人生を振り返って…。自分の価値観が間違っていたものと気づかされました」

「男性との関係のあり方であったり、数多くの嘘をついてきたことに関して…。大変深く反省しています」

 木嶋被告は言葉を詰まらせながら、涙声で訴えを続ける。

被告「弁護士さんとお話ししていく中で、自分の生き方や考え方が間違っていることを気づかされました。本当に弁護活動を続けてくださって…。私の至らなさでご面倒ばかりおかけしました。今日まで支え続け、守り続けてくださったこと、大変ありがたく思っています」

 弁護士への感謝の言葉をるる述べた。

被告「今回学んだことをかみしめ、生き直したいと思っています。ただし、寺田さん、安藤さん、大出さんを殺害していません。以上です」

 木嶋被告は席に戻るとハンカチで目元を抑えていた。判決は、4月13日午前10時から言い渡される。

⇒第36回公判