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第3回公判(2010.11.29)

 

(7)「被告の妄想性障害は動機に大きな影響」と鑑定医証言

献花台

 中央大学理工学部教授の高窪統(はじめ)さん=当時(45)=を刺殺したとして殺人罪に問われている卒業生で元家庭用品販売店従業員、山本竜太被告(29)の被告人質問が終わり、起訴前に精神鑑定を行った証人尋問に移った。証人尋問に先立ち、男性検察官が鑑定内容の説明を始めた。

検察官「難しい用語が出てきますが、鑑定人が後で分かりやすく説明してくれます。鑑定事項は犯行当時の精神障害の有無、犯行にどう影響を与えたのか、などです。結論は被告が妄想性障害を罹患(りかん)していて、犯行に影響を与えていたということです」

 中学校時代のイジメをきっかけに疑り深い性格が形成され、大学入学後は授業についていけないなどの理由で孤立。高窪教授の研究室に入った後は周囲から不審な目で見られていると思いこみ、大学事務室に、不審な目で見ないように教授に伝えるよう依頼していた。

 その後、高窪教授がほかの学生に『ナーバスですね』というのを聞き、自分への当てこすりではないかと思いこんだという。

検察官「忘年会で寂しさ、疎外感を強めました。食中毒になり、(翌日に行われた研究会の集合写真の)撮影に参加できなかったことが最大の決定打になりました」

「妄想性障害が善悪の判断に与えた影響は限られていました。犯行の準備をしているときに『殺すのは良くない。止めよう』と迷っており、妄想により意志は支配されていなかったとしています。何が良くて何が悪いか理解して、自分の行為が殺人に該当することも理解していました」

「被告は自分の判断に沿って行動を制御できる状態でした。自ら生計を立て、社会生活を送っていたことも、このことを示唆しています」

 検察側による鑑定内容の読み上げが終わった。今崎幸彦裁判長に呼ばれ、女性鑑定医が法廷に姿を見せる。黒の上着、黒のスカート姿で、左手にハンカチを握りしめながら、ゆっくりとした足取りで証言台の前に立った。

 鑑定医の宣誓の後、男性検察官が「まずは先生の方から説明をしてもらいます」と話した。鑑定医は手元の端末を操作して、大型モニターに「精神鑑定とは」などと書かれた映像を映し出した。

鑑定医「まず精神鑑定について説明します。精神鑑定にはいくつか種類があります」

 鑑定医は起訴前の段階では簡易鑑定、本鑑定があり、これらの鑑定結果が起訴か不起訴かを決める上で参考になると説明した。さらに起訴後には裁判所の依頼で公判前鑑定と公判鑑定があり、これらが被告の責任能力の有無を判断する上で参考になると続けた。

鑑定医「私が行ったのは起訴前本鑑定です」

 鑑定医は平成21年6月8日から同年9月25日まで鑑定を実施し、3時間程度の面接を18回行ったという。この間に医学検査、両親との面接も行ったといい、鑑定医は「通常の2〜3倍の時間、回数で鑑定を実施しました」と説明した。

鑑定医「被告は事件当時、妄想性障害にかかっていました。妄想性障害とは、妄想が長く続く精神障害のことです。妄想が長く続くものには統合失調症がありますので、その特徴から区別していきます」

 大型モニターには個条書きで説明された統合失調症と妄想性障害の違いが映し出される。

鑑定医「統合失調症は妄想の内容がとっぴであり、妄想性障害はとっぴでありません」

「統合失調症は幻聴などの幻覚症状がありますが、妄想性障害は幻覚症状はありません。あったとしても、妄想に関連したものに限られます」

「統合失調症には意欲の低下、引きこもり、感情の表出の喪失などがありますが、妄想性障害にはこれらの異常はありません。統合失調症は日常生活に支障をきたしますが、妄想性障害は妄想に関連したもの以外、生活に支障はありません」

 専門的な話が続き、裁判員たちは真剣な表情でモニターを見つめる。

鑑定医「(統合失調症の特徴である)妄想のとっぴな内容とは何かを説明します。例えば、『外国の大統領に命を狙われている』『宇宙人に手術されている』などです。(妄想性障害の特徴である)とっぴではない妄想とは『自分が嫌がらせを受けている』『夫に浮気されている』『重い病気にかかっている』など、起こりうる出来事です。その背景に説明できる実際の出来事があります」

 鑑定医は妄想性障害の特徴を述べた上で、山本被告の鑑定結果について説明を始めた。

鑑定医「被告の場合、実際の出来事から妄想に発展していきました。とっぴな妄想ではありませんでした。幻覚の症状もありません。就職活動を繰り返しており、意欲の低下もありませんでした。総合すると、被告の症状は妄想性障害の特徴と一致しています。知能は正常であり、脳に器質的な異常も認められませんでした」

 続いて鑑定医は、妄想性障害が今回の事件にどのような影響を与えていたのかを述べていく。

鑑定医「被告の妄想性障害は動機に大きな影響を与えていました。犯行の動機、行動に影響を与えていたと判断します。被告は妄想を持ちやすいパーソナリティー(人格)がありました。医学的には妄想性パーソナリティー障害と言います」

 鑑定医は山本被告が成長しながら、妄想性パーソナリティーを形成していった過程を解説する。

鑑定医「被告は小学校のころ、学校を転校したり、7つの習い事をしたりしました。髪形をからかわれたりもしましたが、被告は『からかわれても気にならなかった』としました」

「中学校になると、自宅が窃盗被害にあったとき、イジメをしている生徒がやったと思うようになりました。2年生のとには護身用にナイフを持つようになりました。自分がピアノ、バイオリンを演奏でき、私立高校を受験することに同級生がねたんでいると考えるようになりました」

 被告人席でうつむきながら、しきりに瞬きを繰り返す山本被告。鑑定医による鑑定結果の説明はさらに続く。

⇒(8)教授への被害妄想「好きな子のちょっとした仕草で不安になるのと同じ」