(12)夫以外の男性と写った写真を友人に預ける
歌織被告の友人に対する証人尋問が続いた。祐輔さんとの離婚を考え始めた歌織被告の心の変遷が、友人の口を通じて明らかにされた。その様子を、歌織被告はずっと前を向いて聞き入った。
検察官「このとき、被告は公正証書の話をしましたか」
証人「聞いたと思います」
検察官「どのような話をしましたか」
証人「(シェルターを)出るときに、(祐輔さんが)どうしてもいっしょに生活をしたいというので、その条件として公正証書を作って、暴力を振るわれたら離婚するという約束をしたと」
検察官「実際に公証役場でのやり取りは知っていますか」
証人「公証人が『こんな条件で作っていいんですか』と祐輔さんに聞いたところ、祐輔さんが『いいです』と言ったと聞いています」
検察官「慰謝料の記述があると聞いていましたか」
証人「はい」
検察官「金額は聞いていましたか」
証人「結構大きい金額だと思いました」
検察官「代々木の店で会ったときに聞いたんですね」
証人「はい」
検察官「(その際)何か被告から預かりましたか」
証人「ブリキ缶です。友達の住所録とか大切な物が入っていて、『持っていると(祐輔さんに)取り上げられたりする』というので預かりました」
検察官「ほかにどんなものが入っていましたか」
証人「そのときはサッとしか見なかったので。写真のようなものが」
検察官「写真は被告と男性が写っているものですか」
証人「はい」
検察官「祐輔さんとは別の男性ですか」
証人「はい」
検察側が法廷中央に行って証人に写真を示す。
検察官「預かった写真ですね」
証人「はい」
検察側は自席に戻る。
検察官「代々木駅の店で会った後、またつきあいが始まったのですか」
証人「はい」
検察官「被告からあるところに電話をしてほしいといわれたことがありましたか」
証人「はい」
検察官「どんな話でしたか」
証人「『電話に男性が出るか女性が出るか確認してほしい』とのことでした」
検察官「結果はどうでしたか」
証人「誰も出ませんでした」
検察官「被告には伝えましたか」
証人「はい」
検察官「被告は何と答えましたか」
証人「『その番号は勘違いなので、かけないでよかった』と」
検察官「何のために(被告が)そういうことをしたと思いましたか」
証人「(電話番号の相手が)祐輔さんが浮気している女性と疑っているのではないかと思いました」
検察官「そういう風に被告に聞いたことがありますか」
証人「あります。やっぱり(祐輔さんを)好きだから、気になるんじゃないのと聞きました」
検察官「それに対して被告は」
証人「『そんなことない』と言いましたが、本心はどうかな、と思いました」
検察官「慰謝料を取る方法についてアドバイスしたことがありますか」
証人「アドバイスというより、思いつくままです」
検察官「どういうことを言いましたか」
証人「浮気の事実があれば、慰謝料を取れるから証拠として持っていたら、離婚するときに有利だと」