第2回公判(2008.3.6)
(6)死んだら全財産を渡すという遺書…
公判は検察官の質問に移った。
検察官「渡辺二郎被告と知り合ったのは、10年くらい前か」
羽賀被告「細かいことはわからないが、古い関係」
検察官「渡辺被告が刑務所に入っていたのは知ってるか」
羽賀被告「はい。ある程度は」
検察官「ヤクザ関係だと思っていたか」
羽賀被告「そうとは思っていない」
検察官「でも、渡辺被告の事件の内容は、拳銃を売って、その銃で殺人が行われたというものですよね」
羽賀被告「はい」
検察官「それでもヤクザ関係とは思わなかったの」
羽賀被告「はい。思っていなかった」
検察官「(被害者とされる)男性はマルチをやっていたと思っていたのか」
羽賀被告「はい。本人からそういう話を聞いたので」
検察官「男性からお金を借りて、金利が6%だったけど、高いと思ったか」
羽賀被告「高いとは思った」
検察官「金を借りるときに知人を保証人にしたり、その後8000万円の時は遺言書を作らされたね」
羽賀被告「はい。遺言は男性が書いたものを、書くように言われて、僕が自筆で書いた」
検察官「中身は『あなたが死んだら全財産を男性に渡す』というものか」
羽賀被告「はい」
検察官「その遺言を書かないと金を貸さないと」
羽賀被告「そうです」
検察官「金銭面に関して、男性をどんな人と思ったか」
羽賀被告「時々によって変わる。時には大風呂敷だったり、急に細かくなったり、また雑になったり、幅があった」
検察官「医療関連会社の株についてだけど、株を欲しいと思ったのか」
羽賀被告「思った」
検察官「何度か社長に依頼して売ってもらったということか」
羽賀被告「はい」
検察官「男性から『損させるな』とか『損失出したら補填しろ』と言われたことはなかったか」
羽賀被告「言葉というより、資料を見せられて。男性が書き足したりとか…」
『はい』『いいえ』ではっきり答えようとしない羽賀被告の言葉に、検察官もいらだったような表情を浮かべ、途中で遮って『私が聞いているのは、言われたことがありましたかということです』と羽賀被告を強くにらみつけた。
羽賀被告「言葉としてはなかったと思う」
検察官「契約条項には、損失補填に関する内容があるが、経緯は」
羽賀被告「資料ができた時に入っていたから、細かいチェックはしていない。男性を信じ切っていたから」
検察官「でもあなた、過去にも保証人になって痛い目にあってますよね」
羽賀被告「はい」
検察官「でも中身を確認しなかったのか」
羽賀被告「不審な気持ちはなかったし、株に自信があったし、後から考えればよくこんなことを書いているなとは思うが…」
検察官「当時、読み飛ばしたのか。それとも理解をしたが、株が上がるだろうからとこだわらなかったのか」
羽賀被告「自信があったから」
検察官「男性とも株価の上昇を前提に話が進んでいたのか」
羽賀被告「男性もそう信じて買いたいと思っていたんじゃないか」
検察官「その一方で、医療関連会社の社長から5000万円の融資を依頼されたのか」
羽賀被告「はい。商社から何十億円のお金が入ったら返済するということかと思った」
検察官「その後、医療関連会社は民事再生法を申し立てましたね。どう思ったか」
羽賀被告「ピンとこなかった。ただ、懸念する言い方は会社側からなかった」
検察官「民事再生法について人に相談したか」
羽賀被告「してないと思う」
検察官「会社が破産宣告を受けた後、男性から金の請求が来るまでの間、男性とは大阪で会ったか」
羽賀被告「はい。大阪で会った。男性は怒ってはいたが、後でメールが来たような感じの態度ではなかった」
検察官「あなたが紹介した会社が倒産したことについて、男性は何か言わなかったか」
羽賀被告「特に言われなかった」
検察官「ところが突然メールが来たと」
羽賀被告「はい」
検察官「なぜいきなりだったと思うか」
羽賀被告「僕も本人に聞いた。男性は『金を貸している人たちの取り立てを頼んでいる人間にしてやられた。温泉地のホテルの経営が芳しくない。持ち金が少ない。ケンちゃん頼むよ』と言われた。『紹介されて株買ったんだから、少しぐらい責任感じてよ』と」
検察官「男性にお金を支払うべきという気持ちがあったのか」
羽賀被告「払うべきというか、僕の中に恐怖があった。記者会見するとか、ぶちこわすとか言われて恐怖があったので。相手方の弁護士に話をして、ちゃんとした形で終わるなら構わないと思った」