(10)「変な母さん」と思った
この日最後の証人として立った秋田県警能代署の巡査長に対し、弁護側は当時の捜査手法への疑義を容赦なくぶつける。
弁護人「現場の団地に到着し、母親と接触するまでの5分間、何をしていた」
証人「彩香ちゃんの母親が来ないかと立っていた」
弁護人「被告の方から来た」
証人「はい」
弁護人「被告と話し、参考に行きそうな場所を聞いた」
証人「はい」
弁護人「そのほかに聞くべき事があるのでは」
証人「いやぁ…。まず母親と接触して、どこら辺にいくか聞かなければと思っていたし」
弁護人「そんなことを聞くより前に、いなくなったのがどういう子なのか気にならないのか」
証人「そこまで頭が回らなかった」
弁護人「まずはどういう子なのかを聞くのがイロハなのでは」
証人「だって、最初に聞いたところ、河原で石ころを集めるのが好きだって…」
弁護人「その前に、子供の体格や着ていた服を聞くべきでは」
証人「そこまで頭が回らなかった」
弁護人「そういう考えがよぎってもいない」
証人「はい」
弁護人「今になってでもいいが、非効率だったとは思わないか」
証人「思いません」
その後、弁護側質問の内容を理解できない証人と、質問の仕方が「誤導」などとして異議を申し立てる検察側、軌道修正しようとする裁判官とで、法廷は一時、紛糾する。
弁護人「あなたが(彩香ちゃん殺害事件翌日の)4月10日に書いたという捜査報告書。約1ページ半ですね。覚えていますか」
証人「覚えています」
弁護人「10日時点で犯罪という嫌疑があったのか」
証人「10日の時点では、事件か事故かも分からないと…」
弁護人「これは、現場の検分報告ですよね。だが、これを見ると、女児の趣味嗜好について調査した結果があるが、臨場したときの検分を書いていない」
証人「簡単に書いてしまったというのはある。方言でしゃべっていたのに標準語で書いた」
弁護人「そういうことを聞いているのではない」
検察官「異議がございます。そんな勝手なことを言われては…。近所を探す住民らの状況についても報告書には書いてある。女児の趣味嗜好しか書いていないというのは誤導です。いい加減なことは言わないでもらいたい」
弁護人「いい加減ではない」
裁判官「(弁護側は)何を聞きたいの」
その後も、弁護側と証人のやり取りは終始かみ合わないまま続いていく。
弁護人「被告に不可解な点は」
証人「子供がいなくなった割には、変な母さんだと思った」
弁護人「はっきり言いますが、報告書は4月10日に書いたのか」
証人「はい、間違いありません」
弁護人「河原を探すべきだと思わなかったのか」
証人「思った。母親がそういったので」
弁護人「報告書に書いたのか」
証人「書いてません。(入れ替わりで来た)刑事に伝えた」
裁判官「名前や背格好、服装などは聞かなかったのか」
証人「聞けばよかったけど、早く見つけてあげたかったので。鈴香被告に『何して遊ぶのが好きか』を聞いた」
検察官「特徴を聞く時間がなかったということですか」
証人「はい」
尋問は午後5時ジャストに終了し、閉廷。第4回公判は17日午後2時半からで、証人尋問の最終日となる予定。