(1)愛人と最後の関係は「大阪旅行で」
7日午前9時59分、東京地裁の104号法廷に入った歌織被告は、肩の下まで髪をおろしている。服装はいつもの水色やピンク色の上着ではなく、白いハイネックの上に紺色の上着、白いパンツ姿だ。
午前10時、河本雅也裁判長が開廷を告げた。裁判長はまず、被告人質問が始まる今回の6回目公判から、裁判所が選任した2人の鑑定人が公判に立ち会うことになったことを説明。鑑定人らは検察側の後ろに座っている。
さらに裁判長は、今月1日に東京高裁が捜査段階での供述内容や取り調べ状況を記した警察官の備忘録やメモを開示するよう決定を出したことについて、検察側が警察に照会したところ、『該当するものは存在しない』と回答があったとする経過があったことを報告した。いよいよ被告人質問が始まり、弁護側が緊張気味に髪をかきあげている歌織被告に話しかける。
弁護人「(被害者で歌織被告の夫の)祐輔さんとの出会いから順を追って聞いていく」
審理のために歌織被告が口を開くのは昨年12月の初公判以来。罪状認否では、「(起訴状について言いたいことは)ありません」と答えている。これまで出廷した13人の証人に対しては、時にはにらみつけたり、証言に涙を流すなど無言で感情を表してきたが、自らにはどんな言い分があるのか。傍聴人の注目が集まる。
弁護人「祐輔さんと出会ったのは?」
歌織被告「平成14年11月上旬ぐらい」
弁護人「きっかけは?」
歌織被告「知人に誘われた会合で。(祐輔さんは)当時つきあっていた女性と12月に結婚すると聞いた」
弁護人「結婚すると言っていたその女性を知ってる?」
歌織被告「はい。○○さん(実名)」
弁護人「祐輔さんが自宅に来るまでA男さんと交際していた?」
歌織被告「はい」
弁護人「祐輔さんが来てからは?」
歌織被告「時々電話で話すようになった」
弁護人「それ以降肉体関係は?」
歌織被告「ない」
弁護人「最後の肉体関係は?」
歌織被告「14年12月末の大阪旅行で」
『A男さん』とは証人としても出廷した歌織被告の元愛人。歌織被告が結婚した15年3月以降も関係を続けていたとする検察側の主張を、真っ向から否定していることになる。
弁護人「祐輔さんとの友人関係はどうなった?」
歌織被告「12月21日に彼から『一緒に住んでいた人が帰るので、年末3日だけ泊めてほしい』とお願いされた。『年末は親が来る』などと言ったが、3日だけというので結局泊めた」
弁護人「その後は?」
歌織被告「『友人が戻ってこない』とか言ってなかなか出て行かなかった」
弁護人「家族のことを話していた?」
歌織被告「勘当されたと」
弁護人「どんな生活だった?」
歌織被告「最初は普通。そのうちお金の使い方などで口論になった。一番の口論の原因は約束通り出て行かなかったこと」
弁護人「祐輔さんは何と?」
歌織被告「法知識が私にないことを逆手に取り、ずるずる出て行かない状態が続いた」
弁護人「結婚しようという話はいつから?」
歌織被告「当初結婚すると言っていた女性のことがだめになってから」
2人は15年3月29日に入籍。祐輔さんは不動産会社に就職する。
弁護人「2人で住む物件は見た?」
歌織被告「はい」
弁護人「引っ越しはできた?」
歌織被告「通勤が遠くて大変だから引っ越したくないと…」
弁護人「あなたはどう思った?」
歌織被告「当時のマンションはA男さんが払っていたので、何とか引っ越したいという気持ちだった」
弁護人「彼は何と?」
歌織被告「『お前の親は何で家賃を出してくれないのか』と」
弁護側はこのように結婚前後の経緯を確認した後、『それまでの出来事を聞きます』と宣言する。いよいよ家庭内のDV(配偶者間暴力)に切り込む。
弁護人「入籍後、暴力を受けたことは?」
歌織被告「あった」
弁護人「どれぐらいから?」
歌織被告「入籍1週間後ぐらいから。4月上旬ぐらい」
弁護人「原因は?」
歌織被告「自宅の電話で学生時代の友人と話していた」
弁護人「どんな暴行だった?」
歌織被告「いきなり電話を取り上げてたたきつけ、壁に穴があいた。その瞬間ぐらいに顔をいきなり殴ってきた」
弁護人「その後は?」
歌織被告「すぐ私に『申し訳ない』と謝罪していたが、かなりの口論が続いた」