(3)新宿で見つかった上半身「祐輔さんじゃないか」
法律事務所の元同僚によって明かされた、三橋歌織被告と祐輔さんの壮絶な夫婦げんか。歌織被告の攻撃性があらわになる展開に歌織被告はイラ立ちを隠せず、証人をにらみつけながらみけんにしわをよせ、長い髪をかき上げた。
検察側の質問に、証人は祐輔さんがマンションから追い出された後、歌織被告から離婚の相談をされたことを証言する。
検察官「(ケンカの後は)どうなったのか?」
証人「祐輔さんに『行くところがあるのか』と聞いたら、『大丈夫』と言われた。どこに行ったかは分からない」
検察官「歌織被告から離婚したいと相談されたことは?」
証人「ある。平成18年4月ごろ。『殴られたときの証拠写真があるので預かってほしい。弁護士を紹介してほしい』と言われ、居酒屋で会った」
検察官「預かった写真を見たか?」
証人「はい」
検察官「証拠写真はどれくらいあった?」
証人「写真は紙袋にかなりの量が入っていたが、そのうち殴られたときの写真はそんなになかった」
検察官「どのような写真だったのか?」
証人「体に青や、赤黒いアザがあった。殴られて、血が出ているようなものはなかった」
検察官「なぜケンカが絶えないか聞いた?」
証人「聞いたが、『分からない』と言っていた。『愛人にお金を借りたのは悪いが、生活が苦しかった』と話していた」
検察官「このときの被告の様子は?」
証人「弁護士を紹介してほしいと言われたが、いつ紹介するとか、弁護士の名前や電話番号は聞かれなかった。『どうしようもない人だが、私が何とかしてあげたい』と言っていた」
検察官「弁護士紹介の話が具体的にならなかった?」
証人「はい」
歌織被告が祐輔さんに未練があったとも受け取れる証言。歌織被告はほおをふくらまし後、深くため息をついた。
検察官「その後、メールで被告に写真を返してほしいと頼まれた?」
証人「はい。友人の家に送ってほしいと言われたので、もらった住所に送った。(送り先の)住所、名前は覚えていないが、女性の名前だった」
検察官「メールはいつごろ?」
証人「18年5月ごろ」
検察側は、祐輔さんの遺体が発見されたとき、証人が感じたことを質問していく。
検察官「祐輔さんが行方不明になったのはいつ知った?」
証人「18年12月16日に知った」
検察官「どのような経緯で知ったのか?」
証人「法律事務所の元同僚から聞いた」
検察官「その日は新宿で上半身が見つかったが、知っていたか?」
証人「元同僚に言われて知った」
検察官「元同僚の間で『祐輔さんじゃないか』という話は出ていたのか?」
証人「はい。歌織さんとも連絡つかなかったので、2人に何かあったのかと思った。身長も近かったし、左腕がなかったから。左腕に根性焼きの痕があり、それを隠すためかもしれないと」
検察官「根性焼きのことは知っていたのか」
証人「見たことないが、同僚でよく飲んだときに話題になっていた。その場に祐輔さんもいた」
検察側の質問が終了し、弁護側の反対尋問が始まる。弁護側は2人の夫婦げんかに立ち会ったときの様子について質問を始める。
弁護人「歌織さんが祐輔さんに平手打ちをしたと話していたが、歌織被告が『妊娠し、おろして体調が悪い』と言っていたか?」
証人「はい。おろしたことによって体調がすぐれないと聞いた」