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(1)歌織被告「勝手に子供をおろした」

3回目の公判を迎え、東京地裁の104号法廷に入る三橋歌織被告は、前回と同様の水色のトレーナーに白いパンツ。この日も茶色がかった長い髪を肩の下まで下ろしており、傍聴席の方には目をやらなかった。

午前10時、河本雅也裁判長が開廷を告げると、被害者の三橋祐輔さんが以前に勤めていた、法律事務所時代の同僚だった女性が証人として証言台に立った。17日は夕方までに、検察側の計5人の証人尋問が予定されている。

検察官「祐輔さんとはどんな付き合いだった?」

証人「仕事帰りに食事したりお酒を飲んだりした。よき同僚だった」

検察官「歌織被告をいつ紹介された?」

証人「平成14年の暮れごろ」

検察官「最初に2人のマンションに行ったのはいつ?」

証人「15年3月7日」

15年3月は歌織被告と祐輔さんが結婚した月だ。

検察官「歌織被告からどういう印象を受けた?」

証人「ズバズバ物を言う人」

検察官「なぜ?」

証人「祐輔さんに、『安月給』とか『弁護士を目指していたからといって、物言いが偉そうだ』などと言っていた」

検察官「(そういう物言いに)祐輔さんは何と?」

証人「歌織さんが酒を飲む人が嫌いで、祐輔さんが酒を飲んで帰るのは非常に嫌だと言っていたと」

検察官「理由は?」

証人「(歌織被告が)父から酒を飲んで暴力を振るわれたことがあると聞いた」

長いすに腰掛けている歌織被告は、前に置かれたテーブルを使ってメモを取っている。

検察官「出産のことで(祐輔さんから)何か頼まれたことがある?」

証人「はい。『子供ができたがおろすと言って聞かない。説得してくれないか』と」

検察官「どういう意味?」

証人「祐輔さんは子供が欲しいので、産むように言ってくれないかと」

検察官「どうした?」

証人「やんわりと『産まないのか、産んでみてはどうか』と歌織さんに提案した」

検察官「おろす理由は何と言ってた?」

証人「給料が安くてやっていけないと」

検察官「祐輔さんは?」

証人「何とかなるから産んでくれと言っていた」

歌織被告は後ろを振り向き、メモを弁護士に手渡した。

検察官「どうなった?」

証人「祐輔さんから電話があり『勝手におろした』と」

検察官「祐輔さんの様子は?」

証人「泣きじゃくっている感じだった」

法廷に余韻を残しつつ、検察側は歌織被告の愛人のことに話題を変えた。

検察官「歌織被告の愛人のことは聞いていた?」

証人「はい。歌織被告のマンションは、愛人に住まわせてもらっていると」

2人が結婚当初に住んでいた世田谷区野沢のマンションは、歌織被告の愛人が家賃を負担していた。

検察官「祐輔さんは何と言っていた?」

証人「『ベッド、家具も愛人が買ったと思うと、気持ち悪くていられない』と」

検察官「『(歌織被告が)離婚するというので、機嫌を取ってほしい』と祐輔さんから頼まれたことがある?」

証人「15年の冬ごろ、『歌織が50万円ぐらい愛人から金を借り、怒って殴ってしまった』と」

検察官「金に困っていたのか?」

証人「(15年8月に引っ越した)武蔵小山のマンションにいたころ、家賃が12万円で、祐輔さんの手取りは15万円ぐらいだった」

検察官「歌織被告は何と話していた?」

証人「『この人あり得ない、この人あり得ない』とずっと言っていた。馬乗りで首を絞められたと」

検察官「歌織被告に傷はあった?」

証人「一見して分かるあざや傷はなかった。最後は仲良くなっていた」

⇒(2)夫を引きずって追い出した歌織被告