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(9)「抵抗する美保さんに『声を出すな』『このやろう』と怒鳴った」読み上げられた調書

東京・秋葉原の耳かき店店員、江尻美保さん=当時(21)=ら2人を殺害したとして殺人などの罪に問われた元会社員、林貢二被告(42)の裁判員裁判第4回公判は1時間余りの休廷を挟み、被告人質問が再開した。若園敦雄裁判長が林被告に証言台の前に移動するよう求めた。

裁判長「2つだけ聞かせてください。犯行後、服を脱いだりしましたか」

被告「はい。そうです」

裁判長「防犯ビデオには白いシャツが見えましたが、その下は何を着ていたのですか」

被告「Tシャツです」

裁判長「今回の犯行で果物ナイフとペティナイフを持っていっていますが、家にはほかに包丁などの刃物はありましたか」

被告「2本だけです」

裁判長「ほかのものはありませんか」

被告「ないです」

若園裁判長が被告人質問の終了を告げ、弁護人の隣の席へ戻るよう促した。

続いて検察側が提出した林被告の供述調書について、男性検察官が要旨を読み上げる。弁護側に異議はないようだ。

検察官「交際女性がおらず、会えば会うほどひかれていった。話している時間が楽しくなり、店に通い出して1年ほどがたったころ、(美保さんに)特別な客と思われたいと思うようになった。メールアドレスを教えてもらった」

林被告が美保さんに対し、店員と客を超えた関係を求めるようになった経緯について説明が続く。

検察官「美保さんと出会って時間がたち、『店だけでなく外でも会いたい』と言ったところ『ここでいいじゃない。楽しいよ』と(美保さんに)言われた。しかし外で会いたい、食事をしたいなどと誘った、というようなことが書かれています」

別の調書について読み上げが続く。

検察官「殺意に対する状況です。7月19日に送ったメールが返ってこず、憎しみが増した。8月1日には自分の希望を奪った美保さんを殺してやろうと思った。8月2日、殺してやろうと思う原因は、私を許さない美保さんにあると思った」

「(犯行日の)8月3日の心理状況も書かれてあります。凶器の準備、台所からナイフを出した。工具箱のハンマーも持っていこうとした。殺害状況は、芳江さんの頭をめがけて殴り、首をめがけて刺した。抵抗する美保さんに対しては『声を出すな』『このやろう』と怒鳴った。事件後、1階に降りた後、再び2階に上がったのは美保さんの死亡を確認するためだった。廊下に倒れている美保さんを見て『死んでいる』と思った」

若園裁判長が読み上げた調書を提出するように求めた。

ほかの証拠の採否や取り扱いについて、若園裁判長と弁護人がやりとりを続けた。

次に弁護側が提出し、証拠として認められたDVDが法廷で流されるようだ。

裁判長「弁護側の方で5〜6分間、映し出したいとのことですが、映す個所は特定できますか」

弁護人「はい」

裁判長「では準備してください。大型モニターは使わないです。全体で30数分ですか」

弁護人「はい」

裁判長「では、残りは(裁判員との)評議のときに見ることとします」

裁判員らの前の小型モニターにDVDの映像が映し出されたようだ。傍聴席から映像を確認することはできないが、スピーカーから男性の声が漏れている。泣いているようだ。

裁判長「よろしいですか。では少し遅れましたが鑑定医の尋問に入ります。先生お待たせしました」

傍聴席に待機していた鑑定医が証人として証言台へ進み、若園裁判長から氏名や職歴などを尋ねられた。精神科医として10年以上のキャリアがあり、現在は都内の病院で勤務しているという。

裁判長「精神鑑定のご経験はどのくらいですか」

鑑定医「11件です」

裁判長「5月11日に裁判所から、被告の犯行時の精神障害の有無、犯行への影響について鑑定をお願いしました。どのような検査をされましたか」

鑑定医「10回の面接と5日間の鑑定入院。心理や人格、知能に関する検査を行っております」

裁判長「結果についてお聞かせください」

法廷内の大型スクリーンに鑑定結果をまとめた資料が映し出された。

鑑定医は犯行当時、林被告に抑鬱(よくうつ)反応がみられたと説明。しかし重症度は初等から中等症の範囲であり、犯行に影響はなかったという。

鑑定医「判断能力やコントロール能力は低下していない。鬱病(うつびょう)ではなく抑鬱反応。犯行時に病的な状況ではなかった」

鑑定医は林被告の精神状態に問題は認められなかったと明言した。

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