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(12)「1つ1つ理由付けしなければいけないのですか」 検察官の質問にキレ気味の被告

東京・秋葉原の耳かき店店員、江尻美保さん=当時(21)=ら2人を殺害したとして殺人などの罪に問われた元会社員、林貢二被告(42)の第3回公判は、検察官の被告人質問が続いている。検察官は、林被告が江尻さんと過ごしていた際にどのような気持ちだったか質問した。

検察官「あなたが行かないと(江尻さんを)ほかの客に取られてしまうので、行きたくないのに新宿東口店に行っていたということですか」

被告「そういう気持ちはなかったです」

検察官「美保さんから、強引に行かないといけないようなことを言われましたか」

被告「いえ」

検察官「美保さんと一緒に過ごす時間は楽しかったですか」

林被告は少し間を空けてから答えた。

被告「…はい」

検察官「恋愛感情じゃないのなら、その時間はどういう時間だったのですか」

被告「…楽しかった」

検察官「あなたは捜査段階の供述調書で美保さんとの時間は『心の安まる時間』としていますが、表現は合っていますか」

被告「合っています」

検察官「店内で泣いたことはありますか」

被告「ありません」

検察官「1度も?」

被告「はい」

検察官「同僚や店長はよく泣いていたと言っていましたよね」

被告「それはオーバーな表現だと思います」

検察官「どうオーバーですか」

被告「がっかりした様子を大げさに表現したのではないでしょうか」

若園敦雄裁判長が林被告にもっと大きな声で話すよう促す。

検察官「捜査段階の供述調書では、あなたが美保さんにお菓子を買っていったのに、美保さんはほかの客からのお菓子を食べていてあなたのお菓子を食べてくれなかったことがありましたよね」

被告「はい」

検察官「そのとき文句を言って涙ぐんだのでは?」

被告「違うと思います。『何それ』とは言いましたが。文句と言えば文句です」

検察官「文句を言っただけ?」

黙り込む林被告。

検察官「あなたね、捜査段階で調書を確認しているでしょう?」

被告「見たと思いますが、そのときは必ずしも正確に言えていない部分があります。間違っている部分を訂正できていないのも事実です」

検察官は捜査段階の林被告の供述調書をもとに質問するが、林被告はその内容について「分からない」「覚えていない」などと回答。検察官は調書にサインをしているというが、林被告は「事件のショックで注意力や冷静力を欠いていた」との主張を繰り返す。

検察官は調書の中で、取り調べを担当した検察官の質問について、林被告が否定をしている部分や調書の訂正を行っている部分があるため、冷静な判断ができていたのではないかと指摘するが、林被告は「刑事に『お前の言っていることは違うだろ』と言われた」などと主張する。

検察官は質問を変え、林被告が美保さんに手をつないでほしいと頼んだときの気持ちについて質問する。

検察官「どうして手をつないでほしいと希望したのですか」

被告「そうしてほしかったからです」

検察官「なぜですか」

被告「1つ1つ理由付けをしないといけないんでしょうか」

検察官の質問に対し、時折しどろもどろになりながらも、いらだちつつ逆質問をするなど、弁護人からの被告人質問とは違う態度を見せる林被告。

検察官「必要だと思って聞いています。話したくないのですか」

被告「話したくない理由はありません」

検察官「なら話してください」

被告「その方が嬉しかったからです」

検察官「美保さんが好きだったからですか」

被告「広い意味で言えば好きでした」

検察官「恋愛対象だったんじゃないですか」

被告「それは違います」

検察官「違うのでしたら、なぜそういう(手をつないでほしいという)気持ちになったのですか」

被告「そういう対象じゃなくてもしたいと思います」

検察官「拒否されましたね」

被告「拒否はされていません」

検察官「拒否されてせがんだこともありましたね」

被告「私は何もしていません」

林被告の答えが想定外だったのか、検察官は再び、捜査段階での供述調書の内容について尋ねる。林被告は検察官に問いつめられ「私の言ったことがほぼ(調書に)のっていると思います」と答えた。

林被告は自分の希望時間の午後3、4時から閉店までにほかの客の指名を入れた江尻さんに文句を言ったことを認めた上で、用事があって店に行けなかった際に江尻さんから「来ると思って予定しているんだよ」と言われたため、その時間帯は2人の中で「暗黙の了解」になっていたと主張する。

検察官「美保さんに(林被告を)優先されて当然と思いましたか」

被告「いえ」

検察官「文句を言いましたか」

被告「毎回は言っていません」

検察官「時期はいつごろですか。平成20年ですか? 年明け?」

被告「平成20年だったかな。はっきり言えないです」

検察官「あなたは弁護人の質問に対して、美保さんがあなたのために時間を空けているとブログで書いていたので責任感に駆られて行ったと言っていましたが、行きたかったのか責任感なのかどちらですか」

被告「行きたくて行っていました」

検察官から厳しい質問をされ、林被告は少し、不機嫌そうな態度で答えた。

検察官「4月3日から5日にかけて連続で行きましたよね。3日に食事に行こうと切り出しましたか」

被告「3日は切り出していません」

検察官「4日に美保さんから誘われたと?」

被告「そういう話になったときですから。突然ではありません」

検察官「あなたの方から『外での姿も見てみたい』と言ったんじゃないですか」

被告「私も言いました」

検察官「どちらが先に切り出したんですか」

被告「分かりません」

検察官「美保さんは(外での食事に)否定的なことを言いませんでしたか?『ここ(耳かき店内)でもいいよね。ここでも楽しいんじゃない』と言ってませんか」

被告「言っていないと思います」

林被告は弁護人からの被告人質問とはまったく逆の内容を検察官に問われ、いらだった様子で答えた。

⇒(13)「言ったとおりに調書に書くとかぎらない」 検察と真っ向からぶつかる被告