第8回公判(2010.9.17)

 

2 「時間切れというより心の問題。これ以上答えられない」

押尾被告

 保護責任者遺棄致死罪などに問われ、東京地裁で懲役2年6月の判決を言い渡された元俳優、押尾学被告(32)の裁判員裁判を担当した裁判員6人と補充裁判員3人に対する記者からの質問が続いている。場所は、東京・霞が関の司法記者クラブだ。

 裁判員6人の内訳は、40代の男性会社員(裁判員1番)、50代の自営業男性(裁判員2番)、女性会社員(裁判員3番)、30代の自営業男性(裁判員4番)、30代の男性会社員(裁判員5番)、主婦(裁判員6番)。補充裁判員は、40代の男性(補充裁判員1番)、50代の男性会社員(補充裁判員2番)、50代の自営業男性(補充裁判員3番)。テーブルを前に並び、順番に記者からの質問に答えている。会見では時おり笑い声も漏れ、和やかな雰囲気で進んだ。

記者「裁判に入る前にも大量の報道がなされていたが、先入観があって、それが審理に影響を与えることがあったか、なかったかについてお願いします」

裁判員1番「(裁判員になるまでは)事件のこと、押尾被告が何をしたか忘れていました。前もっての影響はゼロで、最後まで影響することはなかったと思います」

裁判員2番「全然なかったです」

裁判員3番「事件から1年経っていたので、ほとんどまっさらだったと思う。影響はありませんでした」

裁判員4番「願わくば、あんまり騒がずにいてほしかったというのが率直な感想です。皆さん仕事なので仕方がないのだとは思いますが…。公正な事実のみを報道するのが望ましかった。このあとも必要以上に騒ぐことは望まないです」

 男性裁判員は報道のあり方に注文をつけた。

記者「なぜ騒がずにいてほしいと思うのでしょうか」

裁判員4番「私たちにとってはひとつの出来事に過ぎませんし…。憶測ではなく、あったことだけでいいかと思います」

裁判員5番「先入観はあったと思います。(押尾被告に)いいイメージはないのは事実。記憶を消すこともできないので、客観的にできるかわからないところもありました。でも証人の証言や証拠を見ているうちに、押尾被告を芸能人として意識しなくなり、行為に対し、どういう刑罰が適当なのかだけ考えるようになりました」

裁判員6番「事件のことは知っていたが、それはそれで。そんなこともあったね、程度でした。彼(押尾被告)も私たちと同じ普通の人。変な先入観ではなく、自分の目で、事実をもとに判断したつもりです」

 裁判員たちは、率直な気持ちを口にした。

補充裁判員1番「興味がある事件ではなかったし、積極的に知ろうとしたこともなかった。芸能人と意識するシチュエーションでもない。客観的に判断したと思います」

補充裁判員2番「情報が出回っている中で(補充)裁判員になったが、リセットして、法廷で示されたもので判断しました」

補充裁判員3番「押尾被告のことは知っていたが、押尾被告というより、1人の人間としてずっとやっていました」

 ここで規定の30分を過ぎ、会見は打ち切られた。記者からは、引き続き質問に答えてくれるよう要望が出たが、多くの裁判員は拒否。裁判員からは「時間の問題というより、心の問題」「これ以上のことは答えられない」などの声があがっていた。

⇒その後