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第8回公判(2010.9.17)

 

(3)「すぐいる?」は体ではなくMDMA…根拠は「すぐに性交を始めていない」

押尾被告

 合成麻薬MDMAを飲んで容体が急変した飲食店従業員、田中香織さん=当時(30)=を放置し死亡させたとして、保護責任者遺棄致死など4つの罪に問われた元俳優、押尾学被告(32)への判決公判で、山口裕之裁判長の判決理由の読み上げが続く。

 山口裁判長は事件当日の平成21年8月2日、押尾被告が田中さんにMDMAを譲渡した麻薬取締法違反罪について言及している。

裁判長「被告は午後2時14分、被害者に『来たらすぐいる?』とのメールを送信して、午後2時17分、被害者が『いるっ』とのメールを返信した。これは被告が(事件現場となった東京都港区の六本木ヒルズの)23××号室(法廷では実際の部屋番号)を訪問して性交する被害者に対して、すぐにMDMAが欲しいのかを尋ね、被害者が欲しい旨を答えたやり取りと認めるのが相当である」

 判決は押尾被告が英語を交えながら展開した「おれの体が欲しいのか、つまり性交したいのかを聞いた」という主張を退けた。

裁判長「被告はメールのやり取りに対して、『すぐ性交するのか』という意味だと弁解する。しかし性交を意味するものとして『体が要るか』という表現自体、日本語として非常に不自然である。現に被告と被害者は部屋を訪問してすぐに性交を始めていない」

 山口裁判長は田中さんが部屋を訪問した時間が午後2時半すぎで、性交を開始した時間は室内のブルーレイディスクの電源が落とされた午後3時56分以降と認められると指摘する。

裁判長「この状況は被告の弁解とそぐわない。被告の弁解は虚偽である」

 一刀両断された押尾被告は特に動きを見せないまま、山口裁判長の言葉を聞き続ける。

裁判長「被告が被害者に泉田(勇介受刑者=麻薬取締法違反罪で有罪確定=)から入手したMDMAを譲り渡し、それを被害者が服用したことが相当強く推認される」

「被告は被害者が当日(MDMAを)持ってきたと弁解する。さらに(『来たらすぐいる?』という)メールの後の被害者からの電話で『新作の上物がある』との話があったという」

「確かに関係証拠によれば、被害者は暴力団員と付き合いがあったことは認められ、コカインを使用していたことはうかがわれるのであって、被害者が独自にMDMAを入手できた可能性がなかったとまでは言い切れないものがある。しかし、被害者からの(『いるっ』という)返信メールは、被害者がMDMAを自ら持ってきて飲んだという被告の弁解とそぐわない」

 押尾被告の主張をことごとく否定する言葉が続く。向かって一番左側に座る女性裁判員はややあごを上げ、厳しい視線を押尾被告に注ぐ。

裁判長「被告の弁解は到底信用できない。判示第2の事実(田中さんにMDMAを譲り渡した麻薬取締法違反罪)は優に認められる」

 続いて山口裁判長は事件の核心だった保護責任者遺棄致死罪について読み上げ始める。判決はすでに保護責任者遺棄致死罪は認めず、同遺棄罪だけの成立を認めている。

裁判長「MDMA服用後の被害者の容体の推移について、被告の捜査段階の供述調書がある。弁護人は調書の任意性を争うが、弁護人が毎日のように接見していたことなどから、任意性に疑いがないことは明らかである。迫真生、具体性を備えていることが指摘できる」 

 山口裁判長はその上で、MDMA服用後の田中さんの容体の変化について、押尾被告の捜査段階での供述に基づき、(1)ベッドの上であぐらをかく(2)みけんにしわを寄せてハングルのような言葉で誰かに文句を言うようにブツブツ言う(3)激しく怒り出して歯を食いしばり、両手を何度か上下する−などと説明。さらにこれらの容体の変化が午後5時50分ごろから午後6時20分ごろまでに起きたと指摘する。

裁判長「被告は公判で『被害者が突然ベッドの上で上体を起こし、あぐらをかいて、ひとりでぶつぶつ何かを言い出した。怒ったり、笑ったり何かをにらみつける表情もあった。そのような状態が10分くらい続いて、突然あおむけに倒れた。脈を測っても動いてなかった』などと、突然心肺停止状態になったかのような供述をする」

「被告は被害者の容体の推移について、捜査段階では公判と異なる供述をしており、公判の供述は到底信用できない」

 男性裁判員の1人は両手を胸の前に組みながら、押尾被告を見つめる。

裁判長「被害者の容体の推移の時間的経過であるが、(異変が)始まった時刻について午後5時50分ごろとする被告の捜査段階の供述がある。もっとも、この時刻は時計を見て確認したといった裏付けのあるものではなく、被告の感覚によるものである」

「被告は被害者との性交の時間は通常、1時間ぐらいである。この日は午後5時10分から12分にかけて当時の妻とメールのやり取りをして、その後2度目の性交を開始したが、『今度はいつもの半分くらいだった』という根拠である」

 事件当時の動きを時系列に整理する山口裁判長。これから異変後の押尾被告の対応について言及していくとみられ、傍聴席に座る田中さんの両親は厳しい表情で見守った。

⇒(4)「自己保身」「反省なし」と厳しく批判するも「救命確実とまでは言えない」