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第5回公判(2010.9.10)

 

(7)「病院なら100%、救急隊が駆け付けていれば9割近い」医師は高い救命率を提示

押尾被告

 保護責任者遺棄致死などの罪に問われた元俳優、押尾学被告(32)の裁判員裁判第5回公判は、専門医への証人尋問が続いている。焦点は合成麻薬MDMAを服用して深刻な急性中毒症状を発症した田中香織さん=当時(30)=を救命できた可能性はどれほどあったかという点だ。向かって左から2番目の男性裁判員が質問した。

裁判員「心肺停止の手前で救急隊員が治療を行えば、助かる可能性は高いですか」

証人「心臓がまだかすかでも動いている状況で心臓マッサージなどをすれば、かなり高いです。1分たつと生存の可能性が6〜7%減るとすると、6、7分で生存可能性は半分近くになります」

 2番目の男性裁判員に変わり、左から3番目の男性裁判員が質問する。

裁判員「(MDMAを)服用したことがない人と常習の人で(心停止などの)発症する確率は違いますか」

証人「日常的にお酒を飲み、アルコールを摂取している状況と同じで、何回も服用している人は症状が違います。ただ、常習の人の問題点は複雑で、自立神経症状に影響はあると思うが一概にいえない」

裁判員「耐性が生まれるかという意味において、症状に差がでますか」

証人「(常習の人は)多めの服用が必要という差は出てくると想像します」

 押尾被告はしばらくノートにメモを取っていたが、ペンを置く。

 男性裁判員の質問は、病院の医師と救急隊員の連絡体制などに移った。

裁判員「現場で救急隊員から情報を受ける場合は多いのですか」

証人「ほとんど受けますし、使った薬の殻、いっぱい置いてある薬物について報告を受けますし、それらをかき集めて病院に持っていきます」

裁判員「現場からの情報は救命活動に相当左右する?」

証人「そうです」

 裁判員の質問が終わり、山口裕之裁判長の右隣の男性裁判官が質問をする。

裁判官「MDMAの症状は(急にでなく)プロセスを経て悪化すると説明されましたが、どのような段階があるのでしょうか」

証人「気分の高揚状態や意識水準の深さでさまざまですが、3段階ぐらいをへて、自立神経の症状が深刻となり、心肺停止につながります。一気に行くわけではなく、一定の時間がかかります」

裁判官「5〜10分はかかるということですか」

証人「幻覚やもうろうとした状態が1分で終わるということは、外から静脈注射などをしない限り、人体のメカニズムとしては考えにくい。10〜20分の時間をへて次の段階に行く」

裁判官「心肺停止まで10分程度ではいかない」

証人「そう思います」

裁判官「幻覚症状から心肺停止まで30分ぐらいはかかるということですか」

証人「現状の医学的な見地からいえば、私はそう思います」

 裁判官は症状の経過に伴う救命可能性について質問を続ける。

裁判官「病院に搬送中に心肺停止状態になった場合はどの程度助かるのでしょうか」

証人「病院であった場合は100%に近いといえますが、9割方といえるかもしれません。また、救急隊員が心臓マッサージを現場で行っていれば、8割方助かっていると思います」

 向かって左隣の男性裁判官に尋問者が変わり、症状の変化と時間経過に不自然な点がないか詳細に聞く。

裁判官「救急隊員が現場にいってすでに心肺停止だった場合、どれくらいの時間で救命可能性は変わってくるのですか」

証人「1分間で7%近く生存可能性は下がります。5分だとしたら、35%減るという計算で65%の可能性で助かるだろうと思われます」

裁判官「65%というのは単純な生存可能性ということですね」

証人「そうです」

 押尾被告は片手を机の上においたまま、微動だにせず質問内容を聞いている。

 男性裁判官に代わり、山口裁判長が「もう少しおつきあいお願いします」と、疲れた様子をみせはじめている証人の医師に声をかけ、質問を続けた。

裁判長「(みけんにしわをよせるなど)症状が出てから死ぬまで数十分かかるのが妥当と説明されたが、その『数』というのはいくつですか」

証人「30〜40分ぐらいです」

裁判長「30〜40分というのは心肺停止までの時間と考えてもいい?」

証人「そうです」

 証人の医師からの病状の説明が続く。

裁判長「昏睡(こんすい)に近い状況から心臓に影響が出るまでの時間はどのぐらいですか」

証人「難しい質問です。10〜20分ぐらいが普通と考えます」

裁判長「どのような状態でどのような医療措置が大事になってくるのですか」

証人「救急隊員が現場で患者と接する段階が重要になってきます」

裁判長「どの段階で救急隊員が接触すれば救命の可能性は高いのですか」

証人「昏睡に近い状態だったら、まず間違いなく助けることができます。100人いれば、90人以上助けることができる。医師がいるのとほぼ同じように、救急隊員は動けます」

裁判長「心肺停止に近い状況で救急隊員が接触した場合は?」

証人「行ってすぐ、(心肺停止から)5分ぐらいなら高い確率で生きる可能性はあったと思います」

 裁判長は「ごくろうさまでした」と長時間の証言をねぎらい、午後の証人尋問の時間調整を行った。午後は約1時間の休廷をはさんで田中さんの両親らが証言にたつ予定だ。

 押尾被告は後ろを向き、弁護人と耳打ちするが、証人の医師が一礼するとそれに応じて一礼し、席を立った。

⇒(8)「真綿で首を絞められたような息苦しさ」…医師は症状の深刻さ証言