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第4回公判(2010.9.9)

 

(6)「スムーズでないときとの差は2分」救急搬送に要する時間 隊員証言

押尾被告

 事件現場となった東京・六本木ヒルズのマンション(レジデンス)に最も近い麻布消防署の救急隊員に対する男性検察官の質問が続く。保護責任者遺棄致死罪などに問われた元俳優、押尾学被告(32)は手元の資料に目を落としながら、やり取りに耳を傾けている。男性検察官は六本木ヒルズのレジデンスから、最も近い救命救急センターである日赤医療センターへの救急車のたどったルートについて質問していく。

検察官「あなたの経験則から、日曜日の六本木ヒルズのレジデンスから日赤医療センターまでの道路状況はどうですか」

証人「車両は平日より少ないので、スムーズに走行できます」

 男性検察官は立ち上がり、救急車の走行実験の経路図を法廷内の大型モニターに映し出した。麻布消防署、六本木ヒルズのレジデンス、日赤医療センターと、救急車がたどったルートを地図上で指さしながら、証人に確認していった。裁判員も手元の小型モニターをじっと見つめている。

 続いて男性弁護人が質問を始めた。

弁護人「救急車の速度は40キロ以下でいいのですか」

証人「はい」

弁護人「赤信号や交通量が多いときは減速するのですね?」

証人「その通りです」

弁護人「あなたの経験からすると、道路の状況によっては速度が40キロ以下に下がることもあるのですか」

証人「そうです」

弁護人「土日の六本木周辺の道路状況では、午後6時ごろと午後9時ごろを比べると、車はどちらが多いですか」

証人「経験からいえば9時ごろのほうが少ないです」

 男性弁護人は、証人である救急隊員の平成21年6月12日の出動事例を法廷内の大型モニターに映し出した。麻布消防署から六本木ヒルズのレジデンスに出動した事案のようだ。資料には、消防の覚知時間や救急車の現場到着時間などが記されている。

弁護人「どこの病院に搬送したかは覚えていませんか」

証人「記憶にないです」

弁護人「日赤医療センターではないですか」

証人「覚えていないです」

 ここで男性検察官が立ち上がり、21年6月12日の出動事例の資料を再びモニターに映し出し、追加の質問を始めた。

検察官「これは金曜日の夜中の0時ですよね。平日の六本木の道路状況はどうですか」

証人「平日は日曜日に比べれば多いです」

検察官「以上で結構です」

 ここで山口裕之裁判長が裁判員に質問を促すと、左端から3番目の男性裁判員が質問した。

裁判員「救急車の走行がスムーズではない状況というのはどういうものですか」

証人「信号が赤で前の車両が止まっていたり、反対車線に車がいて追い越しづらかったりするときなどです」

裁判員「時間にすると、スムーズにいくときと、そうでないときと、どれぐらい時間のロスがあるのですか」

証人「(走行実験を行った)ここは信号が3つしかないですから、2、3分…2分ぐらいのロスだと思います」

 山口裁判長は他の裁判員にも質問がないかを尋ねると、別の男性裁判員が質問を始めた。

裁判員「六本木ヒルズの(レジデンス)B棟に出動した際、車を止める場所は決まっているのですか」

証人「だいたい決まっています。一番近い通りに警備員が案内してくれるので」

裁判員「走行の検証のときと実際の出動のときと、救急車が停車した位置は違うのですか」

証人「たぶん一緒だろうと思います」

 裁判員が質問を終えると、山口裁判長は「終わりました。ご苦労さまでした」と証人に告げた。

 予定時間より早く終了したことについて山口裁判長は、「もともと皆さん(検察側、弁護側)がおっしゃっていた(尋問)時間が多めだったんですかね。気をつけていただきたいですね」と言及したが、緊迫した様子ではなく、むしろ和やかな雰囲気だ。

 山口裁判長が席から身を乗り出し、検察側と弁護側に声をかけた。午前の審理が予定よりも早く終わり、裁判の進行について双方の意見を聴取しているようだ。弁護人は「午後の証人については時間がかかると思います」と話した。

 裁判が中断するなか、押尾被告は弁護人と小声で話し込み、しきりにうなずく。

裁判長「それでは午前の法廷はここで終わります。午後は1時15分から再開することにします」

 一斉に席から立ち上がる傍聴人。

裁判長「傍聴人は速やかに退出してください」

 押尾被告も起立し、山口裁判長に向かって深々と頭を下げ、法廷を後にした。

⇒(7)「到着時、女性は『社会死状態』」 現場に臨場の救急隊長が証言