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(12)ナイフ6本購入 「シンプルでバランスのとれたもの選んだ」

加藤智大(ともひろ)被告(27)が働いていた関東自動車工業東富士工場で、作業着「つなぎ」が見つからなかったため、加藤被告が激怒した平成20年6月5日の出来事と、その3日後に17人を死傷させた大事件がどう結びついたのかが明らかにされていく。

弁護人「6月5日につなぎが見つからなかったことの以前に、つなぎがなかったことはありましたか」

加藤被告「前にも1度ありましたが、そのときは気にしませんでした」

弁護人「そのときはなくなったつなぎはどうなりましたか」

加藤被告「いつの間にか戻ってきました」

弁護人「そのときはキレたりはしませんでしたか」

加藤被告「それはなかったです」

弁護人「加藤君以外にも見つからないとかはよくありましたか」

加藤被告「上司の話だとよくあるらしいです」

弁護人「それはなぜですか」

加藤被告「おそらく洗濯した後に返却する人が間違えたりするせいだと思います」

弁護人は、6月5日に加藤被告が激怒した理由などを質問していく。

弁護人「6月5日のことですが、見つからなくてどうしましたか」

加藤被告「洗濯カゴを探したり、ロッカーのつなぎを確認しましたが見つかりませんでした」

弁護人「それでどうしましたか」

加藤被告「そこで激高してしまい、ハンガーにかけてあったつなぎを全部引きはがし、帰り支度を始めました」

弁護人「つなぎはどうなったと思ったんですか」

加藤被告「誰かが悪意を持って隠したんだと思いました」

弁護人「それ以前につなぎがなくなるのは知っていたのに、なぜ激高したのですか」

加藤被告「派遣の契約終了とかの話や、掲示板上でなりすましや荒らしなどの嫌がらせをされていて、精神的にゆとりがなかったからだと思います」

弁護人「『つなぎ事件』があった5日になりすましがあって、掲示板の管理人になりすましの書き込みを禁止するようにメールしましたか」

加藤被告「はい、しました」

弁護人「なりすましがない状態で、つなぎがなくなっていたら?」

加藤被告「おそらく前回なくなったときと同様に普段使うのとは別のつなぎを着て、同僚をおもしろがらせようとしていたと思います」

弁護人「ということはつなぎ事件が今回の事件の動機ですか」

加藤被告「いえそれはありません」

弁護人「あるいは関東自動車工業へのうらみが動機ですか」

加藤被告「それもありません」

“派遣切り”や掲示板での嫌がらせが「つなぎ事件」につながったことは認めた加藤被告だが、それが直接今回の事件の動機になったことは否定した。事件の直接の動機はまだ語られない。

弁護人「激怒して工場から出たときに先輩とすれ違いましたよね。そのときのやりとりは覚えていますか」

加藤被告「すれちがいざまにどうしたんだと聞かれたので、『ちょっと忘れ物を』と言った後すぐに気が変わって『いや帰るんです』と言って帰りました。出入り口のドアを蹴飛ばして工場を後にして、普段ならバスで帰るところを最寄りの駅まで歩いて帰りました」

弁護人「連絡はありませんでしたか」

加藤被告「知っている人や知らない人から電話があり、友人からはメールも来ました」

弁護人「『つなぎがあったよ』というメールが来たんですか」

加藤被告「はい、そういうことです」

弁護人「そう言われてどういう気持ちでしたか」

加藤被告「あるはずがないものがあると言われておかしな気分でした」

弁護人「会社を飛び出したのは会社を辞めようと思ったのですか」

加藤被告「いえ、そういうつもりではなくて、つなぎを隠した人へのアピールのつもりで飛び出しました」

弁護人「家に帰った後どういう気持ちでしたか」

加藤被告「『またやってしまった』という気持ちでした。言いたいことを口で言えず、態度で示して失敗してきたのに、また同じ失敗をしたという気持ちです」

弁護人「またやってしまったと思ったなら会社に帰ろうとは思いませんでしたか」

加藤被告「そのときは『誰がやったんだ?』ということで頭がいっぱいだったので…」

続いて弁護人は、「つなぎ事件」と連続殺傷の関連性を突っ込んで質問していく。

弁護人「6月5日にそういうことがあって、秋葉原の事件のことを考えましたか」

加藤被告「いえ、特に考えませんでした」

弁護人「6月5日の掲示板の書き込みを見れば、何を考えていたか思い出せますか」

加藤被告「思い出せはしないかもしれませんが、説明はできます」

掲示板の書き込みの記録が大型モニターに映し出された。弁護人は加藤被告の書き込みの意図について説明を求めていく。

弁護人「『スローイングナイフ(投げナイフ)を通販してみる。殺人ドールですよ』とありますがこれはどういう意味ですか」

加藤被告「この時点では、ミリタリーショップの広告のページを見てそこに書いてあるスローイングナイフを発見して、あるゲームに出てくる道具に似ていたので、それを通販しようと思いました」

弁護人「何を考えていたんですか」

加藤被告「ナイフを買うということを示すことで荒らしに警告をしようと思っていました」

弁護人「スローイングナイフを事件に使おうとは思っていませんでしたか」

加藤被告「この時点ではないです」

弁護人「『明日、福井に行ってくる』とありますが、これはどういう意味ですか」

加藤被告「福井にあるミリタリーショップに行ってナイフを買ってくるという意味ですが、直接、買いに行くと書き込んでいるのは、6月8日は日曜で秋葉原が歩行者天国なので、それに合わせて直接買ってこようと考えていたんだろうと推察できます」

他人事のような口調が続く。

弁護人「なぜ6月8日を意識していたのですか」

加藤被告「自分でも分かりませんが、6月8日の日曜日を考えて固執したんだと思います」

弁護人「(書き込みにある)『東京の道路って面倒くさい』の意味は?」

加藤被告「車で東京に行く、秋葉原に行くっていうのを考えてこんなことを書いたんだろうと思います」

弁護人「『トラックで行くのは無謀かもしれない』と書いてあるのは?」

加藤被告「1つ前の書き込みの続きとして、この時点では車の車種がトラックになっていたんだと考えられます」

弁護人「秋葉原という場所を決めた記憶はありますか」

加藤被告「ないです」

弁護人「なぜ秋葉原と考えたのですか」

加藤被告「日本のどこに住んでいるか、分からないなりすましや荒らしに、報道を通じて自分が事件を起こしたことを示すためには大事件を起こす必要がある。大事件といえば大都市。近くの大都市といえば、東京。東京で自分が知っているのは秋葉原。という流れだと思います」

弁護人「このときまでにトラックやナイフを使った無差別殺傷を考えていたことになりますか」

加藤被告「はい」

加藤被告はつなぎ事件が事件のきっかけになったこと自体は否定したが、掲示板には事件の場所などを記載して具体的に事件を計画していたことは認めた。しかし、弁護人の質問が事件を実行する気があったのかに及ぶと…。

弁護人「この時点で事件を起こそうという気持ちはありましたか」

加藤被告「まだやらない方向で、むしろ最終的にはやらずに済めばと思っていました。事件を考える一方、やらないことも考えていました」

弁護人「6月5日に『犯罪者予備軍って日本にはたくさんいる気がする』と書いていますが、これはどういう気持ちでしたか」

加藤被告「なりすましや荒らしに、私が事件を起こすのではないかと思わせて、警告したものです」

弁護人「6月5日の『つなぎ事件』のことを具体的に覚えていないのは、事件から2年たったからですか」

加藤被告「そうではなくて、取り調べを受けていたときから覚えていなかったのを覚えています」

弁護人「『やりたいことは殺人。夢はワイドショー独占』と書いていますが、これはどういう気持ちでしたか」

加藤被告「この書き込みは今も覚えていますが、ほかの人が自分の夢を書いているのをみて、なりすましや荒らしに警告という形で、私が事件を起こすのではと思わせました」

弁護人「実際にやりたいことは殺人と、考えていたのですか」

加藤被告「(考えて)ないです」

事件の具体的な計画ともとれる書き込みの意図を説明した加藤被告。しかし、あくまで実行する気はなかったとの主張を続ける。

弁護人「6月6日に福井にナイフを買いに行きましたが、何を買いましたか」

加藤被告「ナイフを6本、特殊警棒を1本とグローブを買いました」

弁護人「スローイングナイフ3本以外に3本買ったのはなぜですか」

加藤被告「そのときの気持ちははっきりしませんがなんとなくです。見た目で選んでゴテゴテした装飾のついたものではなく、シンプルでバランスのとれたものを選びました」

弁護人「証人の警察官が『刃が加工されていて非常に危険なものだった』と説明していましたが、選んだのですか」

加藤被告「そうではないです」

加藤被告は事件を実行する意図に続いて、ナイフの危険性の認識までも否定してみせた。

⇒(13)「八方ふさがり。それ以外方法がない」 事件決意した瞬間