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(7)解離性状態「きっかけは…引きこもり」

「記憶と思考の区別ができない」「事件当時の記憶がほとんどない」と主張する牛島定信鑑定人。責任能力にかかわってくる証言だけに、検察官は執拗(しつよう)に食い下がる。

検察官「弁護人が(思考と記憶の混同をきちんと整理しないといけないと)指導した後…」

鑑定医「ああ、公判(の供述)についてだね。勇貴被告の返答はより曖昧模糊(あいまいもこ)として、とらえがたいのが実態」

牛島鑑定人は勇貴被告が一貫して記憶と思考が混同していると言いたいのだろうか。

検察官「被告が記憶していることを正確に話そうとしているゆえに、あいまいな記憶の部分については『記憶していない』と言うことは?」

鑑定医「彼にはそういうことはない。それほど強迫性障害は強くない」

検察官「バランスの悪い二重構造は生まれつきか」

鑑定医「ある程度の養育環境で学習していく」

検察官「先生は鑑定の中で、腹立ちや憎しみが生じてもいいのにそういったことを感じていないとする一方、奥深いところにある攻撃性、破壊性を被告は認めようとしないとしている。両面の整合性は?」

鑑定医「文章のあや。(腹立ちや憎しみを)感じていないととってもらってけっこうだ」

検察官「被告は亜澄さんから『バカじゃないの』と言われ、不快に思ったと公判で供述しているが、これは感情の表れではないか」

鑑定医「感情の表れというか…。たとえばお父さんやお母さんが被告本人を無視して、あることを勝手にしたことがあって、被告が口もきかなくなったことがあった。被告は『無言の抗議』と言っていたが、腹が立ったのかと聞くと、そんなことはないと言う。本人の心理状態は微妙。怒りを意識から排除しようとする人格形成は認めざるを得ない。不快という言葉が出てくるが、基本的にはそんなことは感じていないと思う」

検察官は質問を変えつつ、勇貴被告に犯行時の記憶があったことを引き出そうとするが、牛島鑑定人の主張は揺るがない。

検察官「攻撃的側面は隠されていると言うが、普段は一切出てこないのか」

鑑定医「聞き出した範囲では4回エピソードがあった。一つは(先ほど述べた)父母が勝手にしたことに対して口もきかないということ。ほかには亜澄さんに向かって攻撃性が出たが、それを抑えようと手を骨折するぐらい強く壁を殴ったこと。突出して出てくる」

検察官「なぜ突出するのか」

鑑定医「そのタイミングだから」

検察官「やったことは覚えている?」

鑑定医「そのときは感情的なことは分からない。健康な人間と比べて、感じていることを認識するプロセスが薄い」

検察官「殺害行為のときは衝撃性が突出した?」

鑑定医「そうだと思う」

検察官「記憶していることは?」

鑑定医「感じていたか分からない」

検察官「先ほど、責任能力は限定的と言っていたが、(先ほどの)壁を殴ったときも責任能力は減退と言えるのか」

鑑定医「そのときは解離性ではないから、責任能力はあったといえる。殺害時は解離性状態にあった。ただ殴ってけがをしたという状況とは違う」

牛島鑑定人は、犯行時の勇貴被告とそれ以前はまったく別物と言いたいらしい。

検察官「解離性はどのように責任能力に影響するのか」

鑑定医「アメリカでは無罪になったケースが多くある。意識障害があるということを考慮しなければならない」

検察官「平成18年から解離状態と言うが、そのきっかけは?」

鑑定医「引きこもりだ」

検察官「引きこもりはいつから?」

鑑定医「高校から浪人するうち、1年ごとに強くなっていった。何かがきっかけになったというわけではない。受験がきっかけになっていない」

検察官「両親の圧力はきっかけになったか」

鑑定医「ストレスはある程度あるかもしれないが、一般的ではない」

検察官「怒りやストレスは無意識に感じているのでは?」

鑑定医「無意識には2つある。一つは指摘されて気づくこと。もう一つは指摘されても認めないこと。たとえば、『君は同性愛者だ』と言われても認めないこと。勇貴被告の場合、2つ目の無意識かもしれない。深い無意識」

検察官「受験の圧力が意識の変容をもたらしたことは?」

鑑定医「そのこと自体はたいしたストレスではなかった。被告本人はまだ(進学の)可能性があると思って、のんびりしていた」

牛島鑑定人は「解離性状態のきっかけは引きこもり」というが、その背景や勇貴被告の心の動きを把握することは難しいようだ。犯行時、勇貴被告の中で何が起こったのか。検察官の質問は続く。

⇒(8)「妹殺害もストレス障害の原因…」 弁護人がやりとりに笑い声