(2)トラブル続きの亜澄さんも「反抗挑戦性障害」
引き続き裁判長が、東京女子大の牛島定信教授による精神鑑定結果の要旨の告知を読み上げる。
裁判長「続いて被害者の亜澄さんの人格について。亜澄さんも勇貴被告と同じく発達障害の可能性があった。(亜澄さんは)幼児期からトラブルを起こし、周囲を巻き込んでいた。反抗挑戦性障害と考えられる」
亜澄さんは歯科医の家庭に生まれたが、勇貴被告を含む家族と違って奔放な生活をしていたことから、家庭内でトラブルを起こしていたことが事件当初から指摘されていた。こうした行動も障害によるものだった可能性があるという指摘だ。
鑑定結果に関する要旨の告知はここで終了。続いて牛島鑑定人が証人として出廷。弁護側からの質問が始まった。
弁護人「勇貴被告は生来的にアスペルガー障害で中学生のころから強迫性障害、犯行時には解離性障害であったということでいいか?」
鑑定医「はい」
弁護人「アスペルガー障害についてだが、責任能力に影響を与えるのか?」
鑑定医「程度によって。与えることもあれば与えないこともある」
弁護人「特異な事件の加害者がアスペルガー障害だったという事件が続いているというくだりがあるが?」
鑑定医「被告の場合はアスペルガー障害が原因と考えるのは無理だ」
弁護人「一般的には(アスペルガー障害が原因となることは)あり得るのか?」
鑑定医「かつて『人を殺してみたかった』といって殺人を犯した少年がいた。(アスペルガー障害を持った人は)空想をそのまま実行に移すと指摘されている。心の理論の欠如とも言われる」
弁護人「心の理論の欠如というのは、何がよくて何が悪いといった善悪が分からないということか?」
鑑定医「ある程度はあり得ると思うが、それぞれのケースによる」
弁護人「判断に影響を与えることは? 実行すればどうなるかとか」
鑑定医「それも程度によって」
弁護人「被告は社会感覚が欠け、自分が置かれている状況の欠如があったが、これは心の理論の欠如にあたるのか?」
鑑定医「ある程度あると思う」
弁護人「アスペルガー障害の人は視野狭窄(きょうさく)になってしまうこともあるのか?」
鑑定医「そういう側面もあるが、すぐに社会性が欠落したり視野狭窄となるとは結びつかない」