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(5)「当日は精神障害」 弁護人が語った最後の“ストーリー”は…

検察側が歌織被告に懲役20年を求刑した後、法廷はわずかに騒がしくなった。傍聴席にいた報道関係者が、速報を伝えるために外に出る。

裁判長は続いて、弁護側に最終弁論を行うよう指示した。男性弁護人は法廷中央にある証言台にまで歩を進め、3人の裁判官をまっすぐ見つめるように最終弁論を始めた。手元のメモを読み上げるスタイルではなく、時折、身振りを織り交ぜたプレゼンテーションのようなやり方だ。

弁護人「この事件を理解するためには、ポイントが2つあります」

弁護人は左手の指を2本立て、大きな身振りで話し始めた。

弁護人「1点目として歌織被告はまず、この(祐輔さんからDV=配偶者間暴力の被害を受けていた)生活から逃げたかっただけです。そして2点目としては、事件があった日、歌織被告は病気が発症していたということです」

殺人事件が起きたのは歌織被告が精神障害に陥っていたから。そして、歌織被告が精神障害に陥った原因は祐輔さんの暴力−。弁護人はそのようなストーリーで弁論を行うようだ。弁護人席の前に座った歌織被告は、やや目線を下げている。

弁護人「歌織被告は祐輔さんからDVを受けており、そこからずっと逃げ出したいと思っていました。それは彼女の残した手帳などから裏付けられます」

「歌織被告が(祐輔さんの暴力から逃れるために入った)シェルターから出た後、祐輔さんからの肉体的暴力が少なくなったときもあります。ですが、歌織被告はそのときすでに(それまでの暴力が原因で)PTSD(心的外傷後ストレス障害)に罹患しており、DVの恐怖は以前と同じでした」

弁護人は、歌織被告がDVの恐怖に怯え続けていたと主張する。「切羽詰まった状態にまで追い込まれていた被告」が弁護人が描くストーリーだ。

弁護人「『DVから逃げたかった逃げればいい』と考えるのはDVを理解していない人です」

身ぶり手ぶりで説明する弁護人。一方、歌織被告は時折目をつむり、じっと弁論を聞いている。対照的な光景だ。

弁護人「祐輔さんからのDVは肉体的暴力だけでなく、心理的虐待もありました。歌織被告が働こうとするたびに家に戻されるなど、経済的虐待も受けていました。歌織被告は父親との確執もあり、助けを求める場所がなく、(祐輔さんのもとから)逃げることができませんでした」

歌織被告と父親の関係は複雑だ。経済学部への進学を希望した被告に父親が「男漁りに行くのか」などと怒鳴ったこともあったとされる。被告が父親に嫌悪感を抱いていたことは、公判を通じて明らかになっている。

弁護人「歌織被告は祐輔さんが離婚に応じない限り(この生活から)逃げられないと考えていました。だから(祐輔さんの浮気を記録するための)ICレコーダーを設置し、浮気の証拠をつかもうとしました」

「なぜ逃げられなかったのか」を説明した弁護人。弁論は続いて2点目のポイントに移る。

弁護人「2点目について話します。歌織被告は(ICレコーダーという)浮気の証拠をつかんでいました。事件当日は恐怖から、それを祐輔さんに突きつけられなかったのです」

怒りや憎しみ、恨みではなく、歌織被告を支配していたのは“恐怖”だという。

弁護人「(ICレコーダーという浮気の証拠がある以上)まだ離婚に応じさせる道はありました。ですから、この日このとき(事件当日)に祐輔さんを殺さなければならない理由はありません」

殺害は計画的でもないと主張する弁護人。では事件はなぜ起きたのか。

弁護人「事件を起こしたのは、この日このとき、歌織被告に精神障害が生じていたからです。その内容は2人の鑑定人がこの法廷で明らかにしています」

弁護人の戦術は予想通り、歌織被告を「心神喪失状態」とした鑑定結果を元に進められる。一方、当の被告は表情に乏しく、感情がうかがえない。目の前で熱弁を振るう弁護人を見ているようでもあるが、相変わらず視線はうつろだ。

弁護人「検察官は殴打が(致命傷となる)頭部に集中していたことから歌織被告には精神障害はなかったと主張しますが、それは誤りです。歌織被告は目で見たものを理解する能力に欠けていました。歌織被告は色々な幻覚の一枚として祐輔さんを見ており、(殺害状況は)夢の中の一部だったのです」

「遺体の損壊・遺棄の段階でも、歌織被告は祐輔さんと“対話”しており、精神障害が重度だったことを証明しています」

歌織被告は鑑定人に対し、遺体となった祐輔さんから「それ(遺体)を捨てたら負け」「(頭部を)そこら辺に置きっぱなしにはできない」などと言われた、と証言している。

 

弁護人「検察官は歌織被告が事件後も合理的な行動をしているから責任能力があると主張しています。しかし、鑑定人も述べている通り、精神障害者が社会的な行動をすることもあります」

「一見、合理的な行動でも、全体を通してみたら不自然な行動もあります。歌織被告は遺体を捨てていますが、その場所は発覚を防ぐに適した場所とは言えません。歌織被告が正常だったとは言えません」

歌織被告は祐輔さんの遺体を、人の目にも触れやすい公園などに遺棄している。

弁護人「次に、最も特徴的なことですが、歌織被告には脳の障害が認められます。脳波には異常があったが、検査を受けたのは事件の1年後。逮捕直後に検査を受けていたらより明確に異常が分かったはずです。捜査機関に怠慢があったと言えます」

弁護人は歌織被告を有罪に持ち込もうとする捜査機関の手法にも言及した。

⇒(6)衝撃! 最後の肉声「カオリ」「マミ」…第2、第3の人格出現?