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(1)「法廷はお前の舞台か」「息子のかたきを」祐輔さん母、怒りの手記

午後3時26分、東京地裁104号法廷に入ってきた三橋歌織被告(33)は、ピンクのVネックの薄手のセーターに白いズボン姿。いつものように傍聴席には目をやらず、無表情だ。

長期にわたる拘置所生活での苦労を感じさせない、きっちりと手入れされているように見える長い髪を今回も肩の下までまっすぐに下ろしている。髪の毛の下の方は、少し茶色がかっている。

公判は今日で13回目。検察側の論告求刑と弁護側の最終弁論、歌織被告の最終意見陳述が行われ、昨年12月の初公判から約3カ月半にわたった公判が結審する予定だ。精神鑑定で歌織被告は犯行時、刑事責任を問われない「心神喪失状態だった」と指摘されており、最大の争点は責任能力となっている。苦しい状況の中で、検察側はそれでも「完全責任能力」があったと主張するのか。注目を集める。

同27分、「少し早いですが開廷してよろしいですか」と河本雅也裁判長が告げた。検察側の背後には、初公判や鑑定人尋問のときと同様に、プロジェクターで分かりやすく主張を解説するための白いスクリーンが張られている。裁判員制度を意識した取り組みだ。公判ではまず、検察側が殺害された三橋祐輔さんの母の手記を、意見陳述として読み上げるよう希望。弁護側に了承を得て裁判長が手に取った。

裁判長「…突然の行方不明の知らせから、辛く悲しい人生の最終章が始まりました」

「見たこともない『事件の世界』に入り、体の弱い私たちを真っ逆さまに落とした被告を許すことはできません」

「亡くなった息子のかたきをどうしても取りたい。なぜ謝りに来なかったのか。人の命を奪って平気な被告に怒りを感じます」

「裁判ではまた以前の状態に戻り、傷に塩をぬられている心境。私たちは自分の命しか失うものはない。この苦しみ、悲しみ、怒りは夫婦にしか分かりません」

「被告は法廷で言いたい放題。法廷を自分の舞台と考えているかのようだ。本当のことを言わず、正当化して罪を逃れようとしている。命をもって償うのが謝罪だと思います」

「今でもどこかで生き続けていると信じて、電話を待ち続けています」

無念さと歌織被告に対する怒りがほとばしった手記だが、歌織被告は無表情のままだった。いよいよ論告読み上げが始まり、女性検察官が立ち上がる。法廷内にはスクリーンがかけられ、個条書きにした主張のポイントが映し出されている。来年5月から始まる裁判員制度をにらんだ措置だ。

検察官「この裁判では、数々の証拠を取り調べました。公訴事実が十分証明されたと確信しています」

検察官は事件の概要を簡単に説明した後、責任能力に関する主張に移った。一貫してゆっくりで、はっきりとした口調だ。

検察官「鑑定結果は全く信用できません。動機は十分に『了解可能』で、犯行前後の行動も合理的です。責任能力への影響は一切見られません」

検察官が言う『了解可能』とは、だれにも分かりやすい、理解が可能だという意味である。要は、『合理的な動機』だということを言わんとしているわけで、普通の精神状態だったということを強調している。

検察官が読み上げる論告は『です・ます調』だ。日本の刑事裁判の論告は長い間『である調』で読まれるのが普通だったが、これも一般国民が参加する裁判員制度をにらみ、「わかりやすいように」との意図で『です・ます調』が用いられた。この裁判では冒頭陳述も『です・ます調』で朗読されている。

「鑑定結果は、信用性の全くない(歌織被告の)供述に基づいています」

「犯行動機の了解可能性、行動の合理性、隠滅の存在などを考慮して判定すれば、完全責任能力があったことは明らかです」

検察側は精神鑑定に対する疑問、不満をストレートに表現し、「完全責任能力」を主張した。検察官は続いて「鑑定が不当であることを明らかにしたい」と述べ、鑑定が信用できない理由を指摘していく。

検察官「被告は祐輔さんとけんかが絶えず、離婚を決意し、経済的に有利な条件で離婚しようと考えていましたが、祐輔さんは話し合いに応じず、理不尽さと怒りを感じ、暴力への怒りを抑えきれなくなり、憎しみを爆発させて犯行を決意しました。精神障害を疑わせる異常は全く見当たらず、動機は十分に理解が可能です」

歌織被告はまっすぐに検察官を見据えている。続けて検察官は、歌織被告がボーナスを手に入れてから離婚することを考え、浮気の決定的証拠をつかもうと、ボイスレコーダーを自宅に仕掛け、祐輔さんと交際相手との会話を録音したことなど、事件直前の経緯を振り返った。

検察官「経緯を考えると、動機は憎しみを爆発させたことであるのは明らかです。祐輔さんに言いようのない理不尽さと怒りを抱いたことが推認できます」

⇒(2)「DVなくなっていた」「弁解はウソ」 検察官がバッサリ