(5)判決後の土下座「一番分かってもらえると思ったから」

これまで比較的淡々と答えてきた鈴香被告。しかし、話が豪憲君の両親について及ぶようになると、とたんに口が重くなった。
弁護人「(豪憲君殺害について)米山さんはどう思うと考えた?」
鈴香被告「分かりません」
弁護人「(事件後)米山さんに行ったことは?」
鈴香被告「手紙を書きました」
弁護人「どんな内容?」
鈴香被告「『子供をなくしたもの同士、一緒に頑張りましょう』と書いて花と一緒に」
弁護人「なぜそんなことを?」
鈴香被告「…」
弁護人「(手紙を)どう思われると考えたのですか?」
鈴香被告「言葉(文面)通りに受け止めるだろうと思いました」
弁護人「なぜ加害者であるあなたが被害者である米山さんにそういった手紙を送ったのですか?」
鈴香被告「分からないし…説明できません」
弁護人「まったく説明できませんか?」
鈴香被告「…」
弁護人「どういう気持ちで送りました?」
鈴香被告「…」
沈黙は約30秒間続き、そして、一言絞り出した。
鈴香被告「…その時の感情」
弁護人「どういう感情?」
鈴香被告「自分も子供を亡くしたという…」
弁護人「自分と米山さんが同じだと思って?」
弁護人は強い口調でそういうと、質問の方向を変えた。
弁護人「米山さんに何を伝えたかったの?」
鈴香被告「一緒に頑張っていこうという…子供がいなくても頑張っていこうという…」
弁護人「それで手紙を書いた、と。豪憲君を手にかけたことは記憶に?」
鈴香被告「ありました」
弁護人「手をかけた自分が米山さんに手紙を送ることは問題だと感じなかった?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「良いことだと思った? 悪いことだと思った」
鈴香被告「考えていませんでした…良いことだとも、悪いことだとも考えてませんでした」
弁護人「米山さんがどう受け取ると考えていました?」
鈴香被告「いいえ、考えていませんでした」
自分が手をかけた子供の親に、平気で「一緒に頑張ろう」と手紙を出す。弁護側は、それを悪意ではなく“何も考えていなかったこと”としたいようだ。
弁護人「話を戻すと、あなたが手をかけたことを知った米山さんはどう思ったと思う?」
鈴香被告「自分で手をかけておきながらなんでこういう手紙を寄こしたのか…怒り…」
弁護人「どういう?」
鈴香被告「私に対する怒り…侮辱…」
弁護人「誰の誰に対する侮辱?」
鈴香被告「私が米山さんに対し、そういう手紙を送ったことが米山さんにとって侮辱だったのかなあ、と」
弁護人「いつごろからそう思い始めた?」
鈴香被告「はっきり言って最近です」
弁護人「具体的には?」
鈴香被告「前の裁判が終わって、弁護士の先生が替わって、今のことを聞かれたりして、自分の考え方が不自然ということを、いろいろ話をしているうちに、少しずつ気づいてきました」
短い質問をポンポンと投げかける弁護人。1審判決後、反省の態度が明確になったということを強調しようとする。
弁護人「判決後の反省について聞きます。命日に手紙を書いていますが、どういう気持ちで書いていますか?」
鈴香被告「その時々の気持ち」
弁護人「具体的には?」
鈴香被告「成長した姿とか…家族を失って、心も体もこわしている自分とか」
弁護人「成長とは?」
鈴香被告「豪憲君の…」
弁護人「どういうことを心がけている?」
鈴香被告「言葉を選んで、これ以上(米山さん夫婦を)傷つけないように」
弁護人「なぜ言葉を選ぶの?」
鈴香被告「私は思ったことをそのまま行動に移したりして、その結果みんなに迷惑をかけることがあるので…」
次に、弁護人は判決終了後に鈴香被告が豪憲君の両親に向かって行った“ある行動”の真意を問い始める。
弁護人「判決が出た後、あなたは何をしましたか?」
鈴香被告「米山さんに土下座しました」
弁護人「どうして?」
鈴香被告「他に謝る機会がないと思ったから」
弁護人「なぜ?」
鈴香被告「本当はマスコミのいないところで直接、私と米山さん夫妻の3人になれるところで謝りたかった。直接米山さんの声も聞きたかった…」
弁護人「なぜ、あのタイミングで?」
鈴香被告「もしかしたら米山さんの顔を見るのは、これが最後と思って」
弁護人「なぜ土下座を?」
鈴香被告「自分としては、それが一番分かってもらえると思ったからです」
そう言いながらも、判決直後に控訴を決めた鈴香被告。控訴審での公判の出廷を考えれば、話は矛盾しているが…。