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(4)豪憲君殺害は「部分、部分が画像としてあるだけ」犯行の記憶、より曖昧に

鈴香被告の公判は午後1時15分に再開。午前中の最後に見られた手の震えは止まったようだ。

弁護側は、午前中に引き続き、彩香ちゃんが橋から転落した後の記憶をたどらせ、家に帰ってから彩香ちゃんを探すために、誰の家に行き、何を聞いたかについて詳細に聞いていく。そして話は彩香ちゃんの遺体発見に。

弁護人「翌日、彩香ちゃんの遺体が見つかったが?」

鈴香被告「やっぱりと思いました」

弁護人「やっぱりとは?」

鈴香被告「前日、弟が何回か電話してきたけど、そのとき道路の温度掲示板がマイナス2度を指していたと話していました。家でもストーブ焚いてジャンパー着ていても寒かったから、もし外にいるなら耐えられないだろうと」

弁護人「遺体が発見されたとき、お母さんは?」

鈴香被告「半狂乱でした」

弁護人「それで?」

鈴香被告「自分まで取り乱しては収拾がつかなくなると思い、口を閉ざし、奥歯をかみしめようとしました」

弁護人「それはなぜ?」

鈴香被告「何か話そうとすると涙が出てきそうで」

1審の証人は、鈴香被告が彩香ちゃんの遺体発見後、涙を見せることはなかったと証言していた。それに対する鈴香被告の反論のようだ。

次に弁護人は、彩香ちゃんの水死を捜査してほしいと要求しにいった経緯について説明する。当時、鈴香被告は、彩香ちゃんの傷を見せること、服を返して欲しいこと、最後の写真を欲しいこと、の3点を要求したが、能代署では、服を返してもらっただけに終わったという。

弁護人「どう思った?」

鈴香被告「諦めきれなくて壁を蹴りました」

弁護人「それで?」

鈴香被告「5、6人の男の人が出てきました」

弁護人「あなたは何か言ったのか?」

鈴香被告「『自分の子供がそうなった場合、規則で納得できるのか』と言ったら、『当然だ』と鼻で笑われました。頭に血が上り、『窓を壊したら私のことを調べるのか』というようなことを聞いたけど、相手にしてもらえませんでした」

弁護人「なんで窓を割ろうとしたの?」

鈴香被告「警察にそのままいられると思って。何か情報を教えてくれるかと思って…」

さらに彩香ちゃん事件後の鈴香被告の行動についての質問が続いた。マスコミを利用して彩香ちゃんへの注目を集めようとしたことや、他人に罪を押し付けようとしたことが鈴香被告の1審同様に語られた後、質問は、豪憲君殺害時の心境に入った。

弁護人「彩香ちゃんが亡くなって、豪憲君事件までの間、他の子供たちへの気持ちは?」

鈴香被告「(子供を)見るのがとても辛かったのでなるべく目に入らないようにしていました」

弁護人「なぜ辛かったのですか?」

鈴香被告「彩香と同年代や年下の子供をみると『彩香はこのころ、こうだった』とか思い出して」

弁護人「いつからそう思うようになった?」

鈴香被告「葬儀が終わって間もなく」

しかし、他人の子供を見れないほどのショックを受けながら鈴香被告は彩香ちゃんの葬儀の日忘れていた。

弁護人「葬儀はいつ?」

鈴香被告「…。13日か16日か」

続けて、鈴香被告が遺品を分けようとした彩香ちゃんの友達への分けようとした話へ。言葉が“不適切”だったと認めた。

弁護人「(友達に遺品を分けようとした際に)何といったのですか?」

鈴香被告「『藤里でもおばあちゃん(鈴香被告の母親)の家でもいいから取りに来てほしい』と。○○(友達の名前)ちゃんは『分かった』と答えました。それから(遺品の)数が少なかったので『誰にも言わないで』といいました」

弁護人「『誰にも言うな』の意味は?」

鈴香被告、少し言いよどみながら答える。

鈴香被告「他の子にはあげる物がなかったので…。うーん」

弁護人「いま振り返って自分の言葉をどう思う?」

鈴香被告「言葉が適切でなかったと思います」

弁護人「どこが?」

鈴香被告「『誰にも』じゃなく『他の子』にはというべきでした」

さらに、警察に彩香ちゃんの捜査を促すための子供の誘拐を考えた回数も訂正された。

弁護人「誘拐を考えたのは何回?」

鈴香被告「前回(1審)では2回といったが1回か2回かは分からない」

弁護人「少なくても1回はいつか?」

鈴香被告「5月16日」

弁護側、いよいよ豪憲君殺害時の心境を問い始める。弁護側は徐々に詰問口調となる。

⇒(5)判決後の土下座「一番分かってもらえると思ったから」