(6)「だらしのない女と思った」
5人目の証人は、畠山鈴香被告の長女、彩香ちゃんが通っていた藤里小学校の通学路脇に住む男性。検察側は、毎朝庭いじりをしながら児童たちが登校する姿を見ていた証人に、彩香ちゃんの登校風景を尋問した。集団で登校する児童とは別に、毎朝遅れて1人で登校していたことや、時には泣きながら「お母ちゃんが寝坊した」と言いながら走って登校していたことを証言した。
検察官「彩香ちゃんという名前は事件の後で知ったということだが、顔は前から知っていたのか」
証人「いつも児童たちが固まって学校に行く中、その女の子だけ1人ぼっちだったので覚えている」
検察官「泣きながら学校に走っていくこともあったのか」
証人「月に2、3回あった。どうしたのと聞いたこともあった」
検察官「なんと答えたか」
証人「『お母ちゃん(鈴香被告)が寝坊して、遅れる』と泣きながら答えていた」
検察官「ほかに何か聞かなかったか」
証人「朝ご飯食べたか、と聞いたら『食べてない』と答えた」
証人は、彩香ちゃんがいつも着ていた青いジャンパーが、冬の間にみるみる汚れて、黒ずんでいった様子も説明。母親である鈴香被告の印象を「だらしない女なんだなと思った」と証言した。
証人「女の子(彩香ちゃん)がいつも着ていたブルーのジャンパーが、最初はきれいだったのに、日がたつにつれて黒く汚れていった。1月ごろにかなり汚れていたのが、3月にはドブにでも落ちたように真っ黒だった。ジャンパーに付いているフードの毛も、最初は白かったのに、黒くなっていった。ほかの季節に着ていた服も、あまりきれいとはいえなかった」
その後、鈴香被告の車などが置かれ、留守の様子はないのに、家の前に座って教科書を読む彩香ちゃんに「寒い中どうしたの」と聞く証人に対し、「鍵が開かないから入れない」と答える彩香ちゃんの様子などを証言し、検察側尋問は終了。
引き続き行われた弁護側の尋問では、証人が彩香ちゃんの姿をどれだけ見ていたのかや、高齢の証人の視力について内容が及んだ。
弁護人「彩香ちゃんを毎日見ていたのか」
証人「かならずというわけではないが、庭にいるときは見ていた」
弁護人「週に何回ぐらい見ていたのか」
証人「3、4回は見ていた」
弁護人「庭いじりをしながら、子供たちの様子が分かったのか」
証人「じっくり注視はしていないが、自然に目に入ってくるほどそばなので見えた」
弁護人「ところで、宣誓書を(証人が)読むとき、見づらそうだったが、あなたの視力は悪いのか」
証人「測ったことがないので分からないが、老眼なので近くのものが見えない。遠くのものならはっきり見える」
弁護人「どのくらい先なら見えるのか」
証人「5、6メートル先なら見える」
弁護人「子供たちが通るところまでは、どのぐらい離れているのか」
証人「3メートルぐらいしか離れてない」