第36回公判(2012.4.13) 【判決公判】
(4)木嶋被告、巻いた髪微動だにせず裁判長見据える
首都圏の連続殺人事件で3件の殺人罪などに問われた木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判の判決公判は、大熊一之裁判長による判決理由の読み上げが続けられている。3人の殺害事件のうち東京都青梅市の会社員、寺田隆夫さん=当時(53)=について、大熊裁判長は丁寧に木嶋被告の犯人性などを論じた。
続いて、千葉県野田市の無職、安藤建三さん=当時(80)=殺害事件の言及に移る。起訴状によると、安藤さんは平成21年5月、睡眠導入剤を飲ませて眠らされた上で、コンロを使って練炭に火をつけて殺害したとされる。判決の冒頭では、この事件についても木嶋被告の殺人罪を認めた。大熊裁判長は、その理由について細かく説明を始めた。
大熊裁判長は、コンロや睡眠薬について、これまでの法廷で明らかにされた証言や燃焼実験を引き合いに出して続ける。
裁判長「安藤さんは一酸化炭素中毒を起こし、その後、高温の空気を吸い込んで気道熱傷を起こし、死亡したと推定される」
そして、安藤さんの遺体からは睡眠薬の成分が検出されたものの、病院から睡眠薬を処方されていなかったことや、インターネット経由で入手した形跡もなかったことに触れた上で断じた。
裁判長「何者かに睡眠薬を飲まされ、殺害された可能性が高い」
さらに、大熊裁判長は、木嶋被告以外の第三者による他殺説についても言及する。
木嶋被告は、出火の2時間半前に、安藤さん方を出たと主張。火事はその後に起きたもので、関係はないとしている。
裁判長「わずか2時間半の間に恨みのある別の者が殺害したとは考えにくい」
「これらのことは被告人と犯人を強く結びつける」
弁護側は、コンロや練炭について、木嶋被告が用意したものとは断定できないとの論を展開してきた。だが、大熊裁判長は安藤さんが死亡したとされる時期に近い時点で、木嶋被告が注文し、受け取っていることを挙げて続ける。
裁判長「単なる偶然とは考えられない」
睡眠薬の成分にも言及して、木嶋被告の犯行説の根拠を積み上げる。
裁判長「被告人は睡眠薬も所持していた。服用させる機会もあった」
動機にも言及する。検察側は、木嶋被告が安藤さんのクレジットカードやキャッシュカードを無断で使用し、追及されたことに恐れを感じて安藤さんを殺害したとみている。
裁判長「これ(無断使用)が発覚し、返済や被害届提出を逃れるために殺害しようと考えても不思議ではない」
大熊裁判長は、次々と弁護側の主張を退け、検察側の主張を認めていく。そして結論を導き出した。
裁判長「殺害したのは被告人以外にあり得ない。よって、殺人罪が成立する」
すそを少し巻いた髪が動くことがないほど、木嶋被告は、じっと裁判長を見据え続けている。
続いて、3つのうちの最後となる、東京都千代田区の会社員、大出嘉之さん=当時(41)=殺害事件についての判断に進む。