第36回公判(2012.4.13) 【判決公判】
(3)「殺人罪が成立する」 裁判長の言葉に足もとが落ち着かない木嶋被告
首都圏の連続殺人事件で3件の殺人罪などに問われた木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判の判決公判は、大熊一之裁判長による判決理由の読み上げが続けられている。引き続き、東京都青梅市の寺田隆夫さん=当時(53)=の殺害についての検討が行われている。
大熊裁判長が木嶋被告が寺田さんを殺害した動機についても言及する。注目したのは、木嶋被告が寺田さんと交際関係にあり、多額の金銭援助を受けていたことだ。援助目的でついてきたうそが、寺田さんにばれ、返済を迫らせるのを防ぐために殺害したと指摘した。
裁判長「返金を求められると考え、被告が寺田を殺害しようとしても不思議ではない。寺田には自殺する動機もない」
裁判所は、木嶋被告が寺田さんと結婚する意思もないまま結婚を前提に多額の金銭を得ていたと判断した。
大熊裁判長はコップの水をひと口飲んで休みを入れた後、木嶋被告が寺田さんから受け取ったとされる現金約1千万円にも触れた。
弁護側は、寺田さんから譲り受けたと主張していたが…。
裁判長「別れを告げた相手にそのまま渡すとは考えられない」
寺田さんが自殺したとする弁護側の主張にも触れる。
裁判長「自殺の兆候は見られない。犯人は寺田と面識があり、玄関のカギを手にする機会があったものにほぼ絞り込まれる」
「寺田を殺害したのは被告人以外ありえない」
事件直後、木嶋被告が警察に対し「自殺したと思う」などと証言していた点にも言及して、こう締めくくった。
裁判長「被告人が練炭自殺を装って殺害したと認定できる」
論告求刑で訴えた主張がおおむね採用された格好の検察官は、表情を変えずに正面を見ている。
一方、無罪の訴えが退けられた弁護側も、正面を向いているが、その表情には、疲れがにじんでいるように見える。
裁判員らは、両手を合わせてひざの上に置いて聞き入っている木嶋被告の姿をじっと見ている。木嶋被告の背筋はぴんと伸びている。
裁判長「よって、殺人罪が成立する」
大熊裁判長の声が法廷に響く。木嶋被告は、黒いストッキングに包まれた足を組んだり、ほどいたりを繰り返している。