第36回公判(2012.4.13) 【判決公判】
(1)主文後回しで厳しい刑予想 冷静装うが…足組んだり、足踏みする被告
首都圏の連続殺人事件で、3件の殺人罪などに問われた木嶋佳苗被告(37)に対する、裁判員裁判の判決公判(大熊一之裁判長)が13日、さいたま地裁で開かれる。
いずれの事件も物証に乏しく、直接証拠がない中で、検察側は状況証拠を積み重ね、木嶋被告以外に犯行をなし得なかったと主張し、「死刑」を求めた。
これに対し、弁護側は「疑わしきは罰せず」とする刑事裁判の鉄則を強調。「疑わしい事件が3つあるから有罪とするのは許されない」と訴えた。
起訴状によると、木嶋被告は、
(1)平成21年8月、埼玉県富士見市の駐車場で駐車中のレンタカーの車内で練炭を燃やし、薬物で眠らせた交際相手の東京都千代田区、会社員、大出嘉之さん=当時(41)=を一酸化炭素(CO)中毒で殺害。
(2)21年1月、東京都青梅市のマンション室内で、コンロ6つに入れた練炭を燃やし交際相手の会社員、寺田隆夫さん=当時(53)=を殺害した。
(3)21年5月には、千葉県野田市の無職、安藤建三さん=当時(80)に睡眠導入剤を飲ませて眠らせた上でコンロを使って練炭に火をつけて殺害したとされる。
さらに、この3つの殺人事件に加え、詐欺、詐欺未遂、窃盗など計10の罪に問われている。
検察側が主張する事件の構図は、こうだ。木嶋被告は、ぜいたくな暮らしを維持したいとして、インターネットの婚活サイトを利用し、だます相手を物色していたとする。言葉巧みに男性を手玉に取り現金を詐取。時には肉体関係をちらつかせるメールを送信するなど、相手をコントロールしていたとする。
そして、詐欺が発覚して、男性から詰め寄られるなどすると、練炭自殺に見せかけて殺害していたと検察側は主張した。
木嶋被告の犯行の根拠として、検察側が注目するのが、練炭とコンロだ。いずれの現場にもあった練炭とコンロは、木嶋被告が直前に購入していたメーカーと一致するという。
また、3人が死の直前に会っていたのは木嶋被告だったとし、犯行を印象づけた。これに対し、弁護側は、コンロは大量生産されており、木嶋被告が購入したものと同一とはいえないなどと反論。いずれの事件も、自殺や事故死の可能性がぬぐえないとした。
検察側と弁護側双方の主張が真っ向から対立。さらに、1月5日の裁判員選任手続きから、この日の判決までは、ちょうど100日。精神的にも、肉体的にも、裁判員に大きな負担を強いた。
その裁判員が導く結論とは…。いよいよ判決公判が始まる。
裁判長「それでは開廷します」
木嶋被告は弁護側の横の席に腰掛けている。初公判では午前と午後に服装を替えたりするなど、公判では木嶋被告のファッションにも注目が集まった。
判決の日の木嶋被告は青のシャツにグレーのカーディガン、柄入りのスカートに黒のストッキングを履いている。
裁判長が木嶋被告に証言台の前に立つように指示する。
木嶋被告は、ゆっくりした足取りで歩を進め、裁判長の前へと向かう。
刑事裁判の場合、通常は、判決の冒頭に刑の言い渡しの主文が読み上げられる。だが、極刑の場合は主文が後に回されるのが一般的だ。
裁判長「それでは席に着いてください。裁判所が認定する事実は以下の通りです」
主文は後に回されたようだ。厳しい刑が予想される。木嶋被告は、じっと前を向き冷静を装っているように見えるが…。机の下では、黒のストッキングを履いた足を組んだり、軽く足踏みを繰り返していた。