第23回公判(2012.2.17) 【被告人質問】
(2)デートクラブで男性からほめ言葉 約6年で30人と関係持つ 企業役員、医師、弁護士…
首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけて男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対するさいたま地裁の裁判員裁判の第23回公判。弁護側の被告人質問が続いている。
清楚な服装に、上品な声の木嶋被告。弁護人の質問によどみなく答えていく。弁護側は平成5年に北海道から上京した後の交際状況について質問を続けている。
弁護人「(当時交際していた)●●さん(法廷では実名)といずれ結婚すると思っていましたか」
被告「いつかはすると思っていました」
●●さんは当時28歳で木嶋被告よりも10歳年上。建設会社に勤務し、神奈川県在住で、木嶋被告はほぼ毎日どちらかの自宅に泊まる生活を続けていた。
弁護人「●●さんの両親と会ったことは?」
被告「あります」
弁護人「(木嶋被告の)家族に会ったことも?」
被告「はい。初めてのときは、(東京都)渋谷で出張中の父と3人で食事をしました。妹と弟が上京したときにも会いました。その後、実家にも連れて行きました。両親同士はお歳暮やお中元を贈っていました」
弁護人「平成6年1月、家庭裁判所で窃盗をしたとして、審判を受けていますね」
被告「はい」
弁護人「保護観察処分ですね」
被告「はい」
弁護人「高校2年のときの事件ですね」
被告「はい」
弁護人「交際相手に指示され、知人宅から通帳と印鑑を持ち出した?」
被告「はい」
弁護人「現金は引き出された?」
被告「はい」
弁護人「お金は受け取りましたか?」
被告「いいえ」
弁護人「(窃盗を)指示した人が持って行った?」
被告「はい」
弁護人「被害額は?」
被告「700〜800万円です」
弁護人「弁償は?」
被告「父が全額支払いました」
過去を尋ねる弁護側。木嶋被告にマイナスな点を赤裸々に語らせることで、裁判員らに対して誠実な証言をしていると印象づける狙いだろうか。
弁護人「平成6年ごろ、渋谷で知らない人に声をかけられましたか」
被告「はい。(東京都渋谷区)道玄坂の楽器店の向かいにある喫茶店です。音楽教室で使う楽譜を買ったので広げて見ていました」
弁護人「いくつぐらいの男性でした?」
被告「40歳前後だと思います。上質なスーツを着ていました」
弁護人「紳士的だった」
被告「はい。銀行員のようなまじめな雰囲気に見えました」
弁護人「何と声をかけてきましたか」
被告「お一人ですか、と。私の向かい側でちょっとお時間よろしいですか、あなたのような人が好きな男性がいるので紹介したい。スカウトをしている、と」
弁護人「どのような男性を紹介すると言っていましたか」
被告「身元が確かで、一流企業の役員など社会的地位の高い人ということでした」
弁護人「どのように持ちかけられましたか」
被告「会ってデートする、と。見せられた書面には項目が並んでいました。デートの内容として食事や旅行などがありました」
弁護人「性的交渉も?」
被告「ありました。ホテルでエッチするという項目も。突然なので驚きました」
弁護人「聞いているうちにやってみようと?」
被告「はい。(声をかけてきた)その男性が安心感を持たせてくれた。それに興味もあったのでやってみようと」
弁護人「その男性とはまた会いましたか」
被告「(東京・千代田区の)帝国ホテルのロビーラウンジで会いました。身分証明書の原本とコピーを持ってきてほしいとのことでした」
「パスポートと保険証、住民票も持って行きました」
弁護人「セックスはやってもいいと?」
被告「ノーマルなセックスなら可能だと」
木嶋被告は契約後、男性に連れられた婦人科で健康診断を受けたという。さらにスタジオでプロのヘアメイクを受けて、カメラマンによる写真撮影があったと説明した。
弁護人「男性は紹介されましたか」
被告「はい。化粧品や衣料品を輸入する会社を複数経営しているという●▲さん(法廷では実名)という方でした」
弁護人「初めて会ったときは?」
被告「(東京都港区)赤坂のシティホテルでフレンチレストランで食事をしました」
弁護人「部屋には?」
被告「初回は行っていません」
弁護人「肉体関係は?」
被告「ありません」
弁護人「お金は?」
被告「交通費として5万円を受け取りました」
弁護人「2度目は?」
被告「(東京都品川区)高輪のシティホテルでした。洋服を買ってもらい、食事をしました。その後、部屋に行きました」
弁護人「肉体関係は?」
被告「ありました」
弁護人「お金は?」
被告「10万円でした」
木嶋被告は、愛人契約を仲介するスカウトの男性から、「肉体関係を結べば最低10万円もらえる」と説明を受けていたという。
弁護人「●▲さんはどんな感想を述べていました?」
被告「今まで(セックス)したなかで、あなたほどすごい女性はいない、と」
弁護人「ほめられた」
被告「はい」
愛人男性との関係はホテルから男性所有のマンションに場所を移し、その後も月2、3回のペース継続。金額も回数を重ねるごとに上がったが、2、3年後、男性が拠点を海外に移したことで関係は終わったという。
弁護人「(関係を終えるとき)●▲さんはどうしましたか」
被告「信頼できる男性ということで、他の男性を紹介してもらいました」
木嶋被告は、スカウトの男性から別の男性も紹介を受けたという。
被告「互いに接点がないということで並行して会える、と」
木嶋被告は上京した妹と暮らすようになった平成13年ごろに、愛人関係を清算。「リセットしようと断った」と説明した。
弁護人「平成6年から13年までの間に関係を持った人数は?」
被告「20人弱です。企業の役員や会社経営者、学者、医師、弁護士など社会的地位の高い人です」
弁護人「愛人関係とは別にデートクラブには行きましたか?」
被告「はい。池袋にありました」
弁護人「紹介を受けてセックスは?」
被告「したこともあります」
弁護人「お金は?」
被告「もらいました。1度で3〜5万円もらっていました」
弁護人「愛人契約を複数続けながらデートクラブにも?」
被告「はい」
弁護人「どうして?」
被告「うーん。(愛人関係の男性は)私をほめてくれたので、一般ではどうかな、と。素朴な疑問を持っていたので試してみました」
「10万円以上もらう(愛人関係の)場合、準備が大変。気軽なのがいいかな、と」
弁護人「デートクラブでは1回きり、それとも継続して」
被告「長く交際できる人をリクエストしました。1回では分からない。お金だけでなく、気持ちのつながりも希望していました」
弁護人「デートクラブも13年で辞めましたね。関係は何人くらい?」
被告「そこでは10人くらい」
弁護人「セックスしてほめられました?」
突然、発した弁護士の質問に法廷は静まりかえった。検察官も質問の意図を計りかねているようだ。
被告「はい」
弁護人「具体的には?」
被告「うーん。具体的には、具体的には…。テクニックよりも本来持っている機能が高い、と」
木嶋被告は言葉を選びながら説明した。
弁護人「平成6年以降、愛人関係やデートクラブで収入はいくらくらいになりましたか」
被告「家計簿をつけていましたので覚えています。月平均150万円です。貯金をしたことは一度もありません」
「生活用品を高級なものでそろえ、競馬をしていました。(東京都)目黒に住んでいたときには(東京都港区)表参道の紀ノ国屋で買い物していました」
木嶋被告は、当時交際していた男性と競馬していたといい、この男性とは結婚する意思もあったと改めて質問に答えた。
弁護人「他の男性とセックスして裏切りになるとは?」
被告「私はそういう価値観を持っていません」
弁護人「(そのような考えが)社会的に一般には受け入れられないということは?」
被告「今は分かります」
弁護人「(当時交際していた)●●さんとはいつ別れました?」
被告「平成10年ごろです。ほかに好きな人ができました」
この男性とは木嶋被告が設立した愛犬サークル「カインド」で知り合ったという。
弁護側は「ここで切りがよいので」と休憩を求め、大熊一之裁判長も了承。10分間の休廷に入った。木嶋被告は淡々とした様子で証言台の席を立った。