第16回公判(2012.2.6)
(3)婚活サイトには嘘のプロフィル 187万円が入った日に事件発生
首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけるなどして男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判の第16回公判(大熊一之裁判長)はさいたま地裁で続いている。
約10分間の休憩を挟んで検察側の冒頭陳述が再び始まった。検察官は千葉県野田市の安藤建三さん=当時(80)=や他の男性との交際経過、木嶋被告の金の入手などについて時系列で説明を始める。
安藤さんは昭和4年生まれ。事件当時は独身で、平成10年に妻を病気で亡くし、息子との2人暮らしだった。自宅で、年金生活を送っており、健康状態に特に問題はなかったという。
検察官「安藤さんは平成20年1月に結婚紹介サイトに登録し、その後、木嶋被告と出会った。一方、木嶋被告は恋人の男性と15年から交際。また19年8月にパトロンの男性が死亡。この男性から14年から19年までの間に計7380万円も受け取っていました」
「その後、木嶋被告は安藤さんと出会い、現金をだまし取るなどして殺害しました」
検察官は木嶋被告が他の男性と交際する傍ら、安藤さんと結婚紹介サイトを通じて知り合ったことを改めて裁判員らに説明。その上で、結婚紹介サイトに大学院生であるなど嘘のプロフィルを書き込んでいたことを明らかにした。
検察官「木嶋被告は20年6月上旬ごろ、安藤さんと知り合ったが、同じころに東京都青梅市、会社員、寺田隆夫さん=当時(53)=とも知り合いました」
「そして6月17日に安藤さんから大学院の学費名目で50万円を入手し、6月30日に安藤さんとホテルに宿泊。7月11日に30万円を入手しました」
検察側は、安藤さんが木嶋被告に金を振り込むに当たって、金融機関から借金までして金を調達していたことを説明。この間、木嶋被告は検察官の方を見たり、手元の書類に目を通したりしてじっと耳を傾ける。
弁護側は安藤さんからの振り込みが「贈与」で、木嶋被告自身が安藤さんに金を貸していたと主張している。
検察官「安藤さんは20年10月27日に浦安市内のホテルに宿泊し、1回目の意識喪失になりました。この後、安藤さんの自宅から絵画を持ち出した」
弁護側は6日の冒頭陳述で『絵は安藤さんがくれたもの』と主張。一方で、検察側は安藤さんが周囲に対し「家に空き巣に入られ、絵画を盗まれた」と説明、木嶋被告は絵画を寺田さんに“売却”したとした。
検察側によると、木嶋被告が安藤さんのカードを無断使用し、これを安藤さんが追及していた。
安藤さんは21年4月と5月に年金の還付で計約300万円を受け取っていたという。木嶋被告は、安藤さんが年金187万円について口座入金された当日に殺害したとされる。
検察官「被告はカードの無断使用などが発覚すると、安藤さんに対して仕事や勉強が忙しいのでなかなか会えないなどとするメールを送信していた」
検察側は木嶋被告が睡眠薬を使って安藤さんを意識喪失させた後の行動を詳細に説明。一方で、寺田さんから21年1月25日から30日までの間に約1100万円をだまし取っていたことも明らかにした。裁判員に木嶋被告が「結婚詐欺」→「現金入手」→「殺人」という一連の“死の方程式”を重ねていったことを印象付けていく。
検察官「被告は安藤さんとのメールのやりとりの中で、京都に親戚(しんせき)がいることやヘルパーの研修を受けているなどとしているが、いずれも事実と異なる」
検察側はこの後、ホテルの領収書や木嶋被告のパスモの利用状況、復元したメール内容などをモニターに映し出しながら、安藤さんとホテルに宿泊した日付の特定や木嶋被告が安藤さんのカードを使って現金を引き出していたことなどを指摘する。
安藤さんが意識喪失になったときのホテルの支配人の証言などから、木嶋被告が言葉巧みに安藤さんをだまし、睡眠薬で眠らせた上で犯行に及んだと指摘した。
ここで午前中の審理が終了し、午後には安藤さんの長男の証人尋問が行われる予定だ。