(5)「事件きっかけに道を歩くと前後から襲われそうで…」 トラウマ語る証人

犯行を間近で目撃した男性に対する検察側の証人尋問が続く。法廷内の大型モニターには事件現場の地図が表示されたままだ。検察官は、加藤智大(ともひろ)被告(27)に突き飛ばされるように見えたという(D)さんについての質問を終えると、次に、自分の周囲でほかにどんなことが起きていたか、詳しい状況説明を求めた。
検察官「(D)さんが倒れた以外に、自分の周囲で変わったことはありましたか」
証人「自分の真正面に女性の方がいました」
検察官「どんな状態でしたか」
証人「正座を崩した状態で座っていました」
検察官「道に座り込んでいたということですね?」
証人「はい」
検察官「トラックが通り過ぎる前からですか」
証人「いいえ」
検察官「後で?」
証人「はい」
検察官「女性がいた場所を地図に書き加えてください」
検察官に促され、地図上に(E)と書き込む。証人のすぐ目の前だ。
検察官「ちょうどマクドナルドの前ということですね?」
証人「はい」
検察官「その後どうしましたか」
証人「気分が悪くなったので、友人に『帰ろう』と言って帰りました」
検察官「あなたはすべてを○印の位置から目撃したということですね?」
証人「はい」
検察官「どんな気持ちになりましたか」
証人「今まで気にしてなかったことですが、この事件をきっかけに道を歩いていると、前後から襲われるのではないかと気にするようになりました」
検察官「生活にも影響があったということですね」
証人「はい」
検察官「写真を示します。この写真の中央で倒れているのが(A)さんですが、トラックに巻き込まれた人と同じ人ですか」
証人「同じ人です」
トラックの助手席側で跳ね飛ばされたという(A)さんの写真を示す検察官。事故現場の写真のようだが、被害者に配慮し、大型モニターには映し出されていない。続いて検察官は別の写真をモニターに表示し、そこに映っている被害者を(F)さんとした。
検察官「もう一つ、右上に『12時33分10秒』と書かれている写真を示します。このリュックを背負った男性を(F)さんとしますが、この人は男に突き飛ばされた人と比べてどうですか」
検察官は、地図と写真で(D)とした人物と、今見せた写真で(F)とした人物が、同一人物であるかどうかを尋ねているようだ。
証人「同じ人だと思います」
検察官「なぜそう思いますか」
証人「リュックを背負っていることと、髪形が同じです」
検察官「私からの質問は以上です」
ここで検察官の証人尋問が終了。村山浩昭裁判長が「続いて弁護人の反対尋問どうぞ」と促すと、男性弁護人が立ち上がり、証人への質問を開始する。感情を出さず、淡々とした口調だ。
弁護人「(目撃した)○印まではどのように行きましたか」
証人「東の方から西に歩いてきました」
弁護人「友人と一緒に?」
証人「はい」
弁護人「目撃したとき友人はどこにいましたか」
証人「自分よりもマクドナルド側にいました」
弁護人「『ガシャン』という音を聞いたということですがそのときは何をしていましたか」
証人「友人の方を向いて話をしていました」
弁護人「そして音を聞いて道の方を見たということですね?」
証人「はい」
弁護人「『ガシャン』という音は1回ですか」
証人「はい」
弁護人「跳ねられた人がトラックのどの部分に当たったかは見ましたか」
証人「自分は人が飛んでいるところからしか見てません」
弁護人は、証人の記憶や説明のあいまいな部分を浮き彫りにしたい様子だ。引き続き、証人が説明しきれない細かな部分を追及するような質問が続く。
弁護人「交差点は全体を見渡せる場所ですか」
証人「1台車が止まっていましたが、見渡せます」
弁護人「跳ねられた人が影のように見えたということですが、服装は?」
証人「分かりません」
弁護人「トラックがバウンドしたということですが、何回くらいバウンドしましたか」
証人「1回です」
弁護人「突き飛ばされる人を見たということですが、そのとき交差点の歩行者はどのくらいいましたか」
証人「よく分かりません」
弁護人「トラックから出てきた人の周りでよろめく人とかいましたか」
証人「見ていません」
弁護人「後から事件を知ったと思うのですが、見た時は何が起きていたと思いましたか」
証人「交通事故が起きたと思いました」
弁護人「出てきた人は何をしているようでしたか」
証人「跳ねた人を救いに行っているのかと思いました」
弁護人「私からは以上です」
弁護人が質問を終えると、別の男性弁護人が小さく一礼して尋問を開始する。
弁護人「トラックが止まった場所ですが、ブレーキをかけてすぐ止まりましたか」
証人「はい」
弁護人「止まってからドアが開くまで30秒くらいだったということですね?」
証人「はい」
弁護人「警察には2分と説明していたようですが?」
証人「はい、そのときはあっという間だったので、長く感じました。でも今考えると30秒くらいだと思います」
弁護人「ドアは開いたままでしたか?」
証人「開けっぱなしだった気がします」
弁護人「出てきた人はふらふら走ってきたということですね?」
証人「まっすぐでなく、左右に揺れながら走ってきた気がします」
証人の言葉からも、事件が一瞬のうちに起き、すぐ側にいても、事態が分からないままに進んでいった様子がうかがえる。