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(4)「フラフラでジグザグのように走っていった」 通行人を跳ねて車から降りた被告

「トラックに人がはねられたときの様子を絵にしてもらえませんか」。平成20年6月8日に発生した事件の現場にいた証人。加藤智大(ともひろ)被告(27)が運転していたレンタカーのトラックが暴走し、人を跳ね飛ばしていく場面を描くよう求めた検察官に「はい」と応えた。

証人は加藤被告や傍聴席から遮蔽(しゃへい)された衝立の向こう側で絵を描き始めたようだ。法廷に沈黙が流れる。

加藤被告は、持ち込んだノートに何かを書き込み、後ろを振り返って書いた部分を弁護人に示した。弁護人がうなずいている。証人が絵を描き始めて3分ほどが経ったころ、衝立の向こう側から声がした。

証人「できました」

完成した絵が大型モニターに映し出された。右向きに進むトラックと人物。人は細い線で人形のように描かれている。絵には、それぞれ(A)(B)と記された人が、トラックの両脇に跳ね飛ばされ、(C)と記された人は、右前輪でひかれた後、右後輪の前に転がっていったようだ。絵には、矢印でトラックにひかれていった様子が記されている。

検察官「(C)さんのこの矢印は何を表しているのですか」

証人「(人が)クルクル回転している感じを表しました」

事件の描写をする証人は、思わず声を落とす。関係者と思われる傍聴人が、まゆをひそめ、息をのむ。

検察官「人物は頭まで描かれていますが、頭は見えましたか」

証人「実際には見えていないです」

検察官「その後もトラックを見ていましたか」

証人「はい」

検察官「トラックはどうなりましたか」

証人「自分の前を通過し、陸橋の手前ぐらいで急停止しました」

検察官「トラックが急停止した場所を地図に書き込んでください」

証人「はい」

検察官の指示に応じ、証人は地図にトラックが交差点の先で停止した位置を書き込んだ。

検察官「トラックから誰か降りてきましたか」

証人「はい。男性が降りてきました」

検察官「それは停止してからすぐですか」

証人「停止して30秒くらい後に降りてきたと思います」

証人は検察官の指示で、トラックの運転席脇に男が降りてきた位置を書き込む。この後、検察官は降りてきた男の様子を詳細に証人に確認していく。

検察官「降りてきた男はどんな服装でしたか」

証人「メガネをかけていて、ベージュの色をした服を着ていました」

検察官「年齢は?」

証人「25〜30歳くらいの方だと思います」

検察官「ここで4枚の写真を示します。上着の前と後ろの2枚の写真ですが、あなたが見た人の服と比べてどうですか」

証人「同じだと思います」

大型モニターに、ベージュ色の上着の写真2枚が示される。続いて、同色のズボンの写真が2枚映し出される。

検察官「続いてズボンの前と後ろが写っている写真2枚ですが、こちらは?」

証人「こちらも同じだと思います」

検察官「トラックから降りてきた男はその後どうしましたか」

証人「ふらつきながら、地図の東から西へ走っていきました」

検察官「どんな様子でしたか」

証人「フラフラでジグザグのように走っていきました。自分の正面に来るまでそんな感じで、その後は交差点に向かい全力疾走する感じでした」

検察官「その後、その男はどうしましたか」

証人「自分の前を通過した後、交差点を見ていた男性を突き飛ばしたような感じに見えました」

検察官「あなたから見てどの辺りですか」

証人「自分より斜め前辺りに立っていました」

検察官の求めで、証人は地図の交差点近くに(D)と、突き飛ばされたように見えたという男性の位置を書き込む。

検察官「その男性はどんな服装でしたか」

証人「リュックサックを背負い、ジーパンでした」

検察官「年齢はどのくらいでしたか」

証人「50歳くらいかなと思いました」

検察官「男性を突き飛ばすようにした男は具体的にどんなことをしていましたか」

証人「右手で(D)さんの左肩をつかんで引っ張ったように見えました」

検察官「(D)さんはその後どうなりましたか」

証人「その場に倒れ込むような感じで横になってしまいました」

検察官「男は手に何かを持っていましたか」

検察官は凶器の有無を尋ねているようだ。

証人「よく見えませんでした」

検察官「倒れた後は男はどうしましたか」

証人「交差点の方に走っていき、よく見えなくなってしまいました」

男の(D)さんに対する行為を尋ねる検察官の細かい質問が続く。加藤被告はまっすぐ前を見つめ、動かない。

⇒(5)「事件きっかけに道を歩くと前後から襲われそうで…」 トラウマ語る証人