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(12)「あれは『戦場』そのものだった」…加藤被告は硬い表情のまま

秋葉原無差別殺傷事件の現場を目撃した証人の男性に対する検察官の質問が続く。証人は、被害者を助けるため、救命のAED(自動体外式除細動器)を探したことなどを証言した。

証人「私はAEDを探しましたが、どこにあるのかも分からない。どうすればいいのかも分からなくなってしまいました。それで、現場の状況をそのままにしておけないと思い、5番の方のところへ戻っていきました」

「5番」とは、被害者の1人で、亡くなった松井満さん=当時(33)=とみられる。公判中に示された事件現場地図で、立っていた場所を「5」のマークをつけて説明したため、便宜上、「5番」と呼ばれている。

検察官「誰か倒れていましたか?」

証人「人が…倒れていました。倒れていた方をお店の人が介護して、『がんばれ』と声をかけていました。でも、倒れている人は、声を発しない状態でした」

検察官「あなたが見た光景は、どのようなものでしたか?」

証人「実際に行ったことはありませんし、写真や映像でしか見たことがありませんが、あれは『戦場』そのものでした」

ときおり声を震わせながら証言を続ける証人。加藤被告は表情を変えず、手元に目をやりながら、何か書いている。

検察官「結局、あなたが事件の状況(の全体像)を把握したのはいつのことですか」

証人「この事件が大きかったというのが分かったのは、家族が上野駅でもらってきた新聞の号外をみてからです。5番の方が亡くなったのは、後から聞きました」

検察官「たくさんの方が亡くなったことを知り、どう思いましたか」

証人「周りにあれだけの人がいて、なぜこんなに犠牲者が出たのか…。もう少し勇気を持って、犯人を取り押さえられれば、後の人も助かったかもしれない。ずっとそう思っています」

検察官「犯人がどうこうではなく、被害者を救えなかったあなたが自責にかられたということですか」

証人「正直、それがあって夜も眠れなくなって…。仕事の途中に取り乱したことがありました」

検察官「職場や家族への影響もあったのですか」

証人「結局、1人も助けてあげられなかった。突然思いだして、仕事も手につかず、悔しい気持ちになることもありました」

検察官「事件があった日から、現場に行ったことはありますか」

証人「実は、今日…。事件があったあの時以来、行ってなかったのですが…」

感極まった証人の男性の声が詰まる。

証人「すみません…。今日、現場に行って、おわびをしてきました」

検察官「現場には花が供えられていましたよね。それを見て、どう思いましたか」

証人「どうしてあんなことが、ここで起こらなければならなかったのか。みんなで協力して、1人の人間を取り押さえられなかったのか。犠牲者を救えなかったと思いました」

検察官「あなたは、何度も警察署で事情聴取に応じ、今日も法廷で協力していただきました。それは、どういう思いからなのですか」

証人「もう少し、その場にいた自分が何かできなかったのか。1人でも2人でも救えたんじゃないのか、とずっと思っていました。だから、今日は最後の使命なのかな、と思ってきました」

ここで、検察官は改めて被害者の確認をするため、現場の状況を写した写真を男性に示す。ほぼ同時に、法廷の両側に設置された大型モニターにも一瞬、画像が映し出される。しかし、別の検察官が慌てて「あー!ダメダメ!」と声をあげ、画像はすぐに消えた。被害者がモニターに映し出されるのを避けようとしたのだろうか。

検察官「ここに座り込んでいる男性。この方は、あなたがガードマンと思いこんでいた警察官の方ですね」

証人「はい」

検察官「ここにしゃがみ込んでいる人がいます。これが5番の方ですね。ここには、あなたも写ってますね。背中を向けている」

証人「はい。そうですね…」

背を丸め、写真をのぞき込む証人の男性。被害者の加藤被告は一瞬、男性に目を向けたが、すぐに手元に視線を落とし、メモをみつめていた。

⇒(13)“犯人”と呼ぶ弁護人 閉廷後、遺族に一礼する被告