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(1)再現される事件当時の進行経路… 消されたモニターを見つめる被告

東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の第2回公判が1日午後、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった。今回の公判では、証拠品の取り調べが行われるほか、事件当日、秋葉原にいた目撃者の1人の証人尋問が行われる予定だ。事件の様子を目の当たりにした目撃者の口から、何が語られるのか注目される。

初公判と同じ東京地裁104号法廷。村山裁判長と検察官、弁護人、傍聴人はすでに席に着いている。開廷予定の2分前の午後1時28分、加藤被告が法廷に入ってくる。白いシャツに黒いスーツ姿。弁護人席の前の長いすに座った。表情は硬く、緊張しているように見える。

起訴状によると、加藤被告は平成20年6月8日、東京・秋葉原の交差点にトラックで突っ込み、3人をはねて殺害。さらにダガーナイフで4人を刺殺したほか10人にけがを負わせた、などとされる。

初公判で、加藤被告は事件について謝罪した上で、「事件当時の記憶がないところもありますが、私が事件を起こしたことに間違いはありません」と事実関係を認めた。しかし、その一方で、弁護側は刑事責任能力について争う姿勢を示している。

裁判長「若干早いようですが、開廷します。本日は、まず採用が決まっている証拠調べを行います」

目撃者の証人尋問の前に、まず証拠調べが行われるようだ。検察官が立ち上がった。法廷の大型モニターに「要旨の告知 検察官」と大きく書かれた画像が映し出される。

検察官「証拠に添付した内容を、モニターに映しながら説明します。甲126号証、被告が犯行時に着ていたジャケットです」

しわになった白っぽいジャケットの表と裏が順々に映し出される。

検察官「犯行時に着ていたズボンです」

白っぽいズボンの表と裏が映し出される。表側に赤い血痕のようなシミが見える。加藤被告は、大型モニターを見ている。

検察官「次に示すのは、防犯カメラの画像を解析したものです」

大型モニターに秋葉原周辺の地図が映し出される。当時、歩行者天国となっていた事件現場「外神田3丁目交差点」の部分だけが、緑色に塗られている。

検察官「(1)と表示されているのは、(平成20年)6月8日午前11時38分6秒、被告のトラックが確認されています…」

モニターに、(1)という数字と時間、防犯カメラが撮影したトラックの映像が映し出される。検察側の冒頭陳述などによると、加藤被告は、事件を起こすと決断して、静岡県からトラックを運転して秋葉原まで到着したが、直前にためらって、秋葉原周辺をぐるぐると回っている。検察官は、そのときの進行経路を克明に説明していく。その説明に従って、モニターには(2)、(3)、(4)…と、地図に進行経路が表示され、順々にトラックの映像と時間が映し出されていく。

防犯カメラには、その途中、加藤被告がトラックを降りてパチンコ店のトイレに行く姿まで写っていた。

検察官「(22)、12時30分27秒の位置です」

モニターの地図上では、加藤被告のトラックの位置が、また事件現場の「外神田3丁目交差点」に近づいている。

検察官「この後、(被告のトラックは)外神田3丁目交差点に突入します。大型モニターの画像は差し控えさせていただきます」

大型モニターが消える。残酷なシーンを映し出さないための配慮や被害者のプライバシー保護のためなのだろうか。裁判長らは、じっと手元のモニターをのぞき込んでいる。

検察官「トラックが突入した後です。12時33分7秒でした」

検察官の言葉だけが、法廷に響く。モニターには何も映っていない。加藤被告は、その何も映っていないモニターをじっと見ている。

検察官「次に(事件現場近くの大型家電店)ソフマップの防犯カメラの画像解析図です。大型モニターはオフにさせていただきます…」

検察官は、モニターを切ったまま、現場近くの家電店に設置されたモニターの位置を説明した上で、事件現場の状況や写真説明を始める。

⇒(2)「白っぽい上着の男に注目してください」再現される被告の行動