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(12)「普通の家族になりたい…」 願った矢先に両親が離婚話

東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた加藤智大(ともひろ)被告(27)。男性弁護人は、加藤被告が青森市の運送会社に勤務していたときの様子を質問していく。

花見で場所取りをして先輩にほめられたといい、居場所を見つけたかのような加藤被告だったが…。

弁護人「同僚とトラブルはありましたか」

加藤被告「ある同僚から私が人の見ていないところで休んでいるんじゃないか、さぼっているんじゃないかと言われたことがありました」

「それぞれ配達する場所が違うから、私のように遠いところに配達する人は早くに出ます。会社に決められた時間通りに行動していただけでした」

弁護人「それで、どうしましたか」

加藤被告「そう言われるのがイヤだったので、全員の積み込みが終わった後に出発するようにしました」

弁護人「配達は間に合ったのですか」

加藤被告「普通では間に合わないので、有料道路を自腹で使って間に合わせました」

弁護人「その同僚とはどうなったのですか」

加藤被告「有料道路の領収書を集めて、さぼっていると言った同僚のトラックに置いておくことを繰り返しました」

仕事ぶりをアピールした加藤被告だったが、同僚は領収書が置かれた意味に気づくことはなかったという。弁護人が続きを促した。

加藤被告「後日、私がその先輩の胸ぐらをつかむということがありました。さぼっていたと言われたことに対するアピールでした」

加藤被告は今公判で、口では伝えられず、行動に出てしまうことを『アピール』と表現する。

加藤被告「相手としてはカネを払えばいいのかというので、そういう問題じゃないと。間に(別の)先輩が仲介に入ってくれました」

弁護人「有料道路のレシートをトラックに置いたのは、さぼっていると言われたことへの不満を表したのですか」

加藤被告「(それで)通じるはずだと思っていました。直接言うという考えはありませんでした」

ほかにも、同僚との間では貸したトラックの洗車をめぐり、トラブルになったという。弁護人は質問を変え、実家の家族との関係を尋ねる。

弁護人「実家に帰ってきて、母親との関係は変化しましたか」

加藤被告「私の方で大人の対応といいますか、家族のやり直しといいますか、母親と会話する努力を始めました」

弁護人「努力しようとしたのはなぜですか」

加藤被告「私自身大人になったんだろうと」

弁護人「どんな努力をしたのですか」

加藤被告「仕事から帰ってくると母親が用意しくれた夕食を食べ、なんでもないようなことや、その日あったことを談笑しようと思いました」

弁護人「それまで母親と自分から話すことはありましたか」

加藤被告「ありませんでした」

落ち着いた様子で、母親との関係を話す加藤被告。父親との関係も結び直そうと努力したという。

弁護人「父親との間では、どんな努力をしましたか」

加藤被告「(父親は)単身赴任で仙台にいたのですが、週末に帰ってきたとき、父親を駅まで送ったときに、『バカでごめん』と言いました」

弁護人「自分をバカと言ったのはどうしてですか」

加藤被告「いろいろあるんですけれど、行ける大学に行かなかったりとか、(自動車整備士の)資格を取らなかったりとか、そういったこともろもろです」

弁護人「(そのとき)父親からは何か言われましたか」

加藤被告「父親からは『ずっと家にいればいい』と言われました」

加藤被告の声がほんの少しだけ震えた。

弁護人「家族をどうしたかったのですか」

加藤被告「せめて話のできる普通の家族になりたいと思いました」

家族をやり直したいと思った加藤被告。しかし、その願いがかなうことはなかった。

父親は単身赴任から戻ってきたものの、離婚が決まったのだ。

加藤被告「ある時、私が寝ているところを父親にたたき起こされて、突然『離婚する』と言われました」

弁護人「予想していましたか」

加藤被告「いえ、予想していませんでした」

弁護人「どう思いましたか」

加藤被告「悲しかった覚えがあります。家族をやり直ししようと思っていたところだったので」

両親に、離婚をやめてくれるよう頼むこともできず、母親に言われるがままに、再び家を出た加藤被告は青森市内で一人暮らしを始めた。

弁護人は、質問を変え、加藤被告が利用していたインターネットの掲示板について詳しく質問していく。

加藤被告は、青森に戻ってきた後、今まで使っていた掲示板の記録を消してしまったことから、アクセスできなくなり、新しい掲示板を利用し始めたという。

弁護人は、掲示板の使い方について説明を求めていった。

弁護人「2ちゃんねるとあなたが使っていた掲示板はどう違いますか」

加藤被告「距離感です。私が使っていたのは特定少数の人のですが、2ちゃんねるは、不特定多数のコミュニティーです」

弁護人「具体的に言うと」

加藤被告「私が使っていたのは高校のクラスのようなもので、2ちゃんねるは大学のようなものです」

弁護人「もう少し説明してください」

加藤被告「高校のクラスだとお互いの顔を知っていますが、大学だと知っている人は少ないし、ほとんどが他人です。それをたとえました」

掲示板に対する質問を、加藤被告はすらすらと説明していく。

弁護人「あなたの使っている掲示板では、どんなことが話題になっていましたか」

加藤被告「何でもあり、です。オタク的な話題だったり、関係ないような話題だったりしました」

弁護人「被告自身はどんなことを書き込んでいましたか」

加藤被告「自分のスレッドを作って、落ち込んでいるというような感じのことを、ことさら大げさに書き込んでいました」

弁護人「どんなレス(返信)がつきましたか」

加藤被告「真剣に心配してくれるような書き込みがありました。嬉しく思ったけれど、申し訳なくも思いました」

弁護人「それはなぜですか」

加藤被告「実際の事実よりも落ち込んだような書き込みをしたからです。だましているようで申し訳なかった」

望んでいた家族とのやり直しをできなかった加藤被告。大げさに書き込みを続けて、掲示板のレスに、慰めを求めるようになっていった。

⇒(13)「不細工で彼女いない」 自虐ネタ書き込みウケ狙う