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(5)「婚約者3カ月後に来日予定だった」リンゼイさん母、涙

英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第5回公判は、休憩を挟み再開した。リンゼイさんの母、ジュリアさんに対する裁判官、裁判員の証人尋問が始まる。

市橋被告は両腕を激しく震わせた状態で入廷。リンゼイさんの両親に一礼し、着席した後も体の震えは止まらなかった。

堀田真哉裁判長が再開を宣言し、裁判員に質問を促すと、右から2番目の男性裁判員が挙手した。

裁判員「もしこの場に被告の両親がいたら、何か言いたいこと、聞いてみたいことはありますか」

多くの公判では、被告の肉親が情状証人として出廷する。しかし、市橋被告の両親は弁護側の要請に対し、出廷を拒否。捜査段階での調書の読み上げも行われず、息子の犯行を受けた両親の心情は、明らかにされないままだ。

ジュリアさんは少し考えた後、やや戸惑った様子で語り始めた。

証人「質問に答えるのが難しいです。実は、考えたことがありませんでした。私は親の立場で話しています。親の立場からすれば、イチハシの両親の気持ちが推し量られます」

ジュリアさんは複雑な胸中を明かした上で、大学卒業後も仕送りで息子を生活させていた両親に対する厳しい心情ものぞかせた。

証人「付け加えて言うと、事件当時イチハシは28歳で、仕事に就いていませんでした。リンゼイは22歳でしたが、(イギリスから)地球を半周もした場所で仕事を持ち、親から自立していました。私たちはリンゼイを自立した大人として扱っていました」

市橋被告は下を向いたまま、ジュリアさんの言葉に耳を傾けている。続いて、左陪席の女性裁判官が質問した。

裁判官「リンゼイさんには婚約者がいました。2人にどんな家庭を築いてほしかったですか」

証人「リンゼイと(婚約者の)□□(法廷では実名)は、大学に入学して1週間で出会い、その後恋愛関係になり、深く思い合うようになりました。リンゼイが日本に留学することになり、□□は本当に悲しがりました」

「この年(平成19年)の1月にも1度来日し、(事件の3カ月後の)2007年6月からは日本で(英語を)教える計画を立てていました。教鞭(きょうべん)をとった後に2人は日本を旅行し、帰国する予定だったんです。2人は子供を4人ほしいと、いつも言っていました」

ジュリアさんは涙交じりで、まな娘の将来に思いをはせた。

ここで証人尋問は終了。証拠調べについての確認を終えた後、堀田真哉裁判長は休廷を告げた。午後の審理は1時15分から再開される。

⇒(6)「誰でも逃げる! 誰でも逃げる!」被告が逃走したわけ